れんたい

 "くるくる"は同族を集め続けた。7度目の暖週を迎える頃には、彼らは10頭あまりから成る雌雄混合の大所帯になっていたのである。彼女は自分より優秀な者を勧誘しないように細心の注意を払っていたので、集団は平穏を保っていた。食料の確保は全て彼らによって賄われ、"くるくる"は狩りに出ることすらなくなった。するとますます勧誘のための時間が増えるのだった。

 もっとも、彼女は新たな退屈を見出していた。新しいことをしたい、誰もしたことのないようなことを。こんなに同族を集めた者は過去いなかったはずだから、きっと何かとんでもないことが出来るに違いないわ。暖週のある日、怠惰に蠢く10の肉塊を見て、アイデアはついに具体化した。

 "くるくる"が地面を震わせ合図すると、肉塊たちは緩慢に振り向き、次の言葉を待った。忠実な反応は、計画の成功を確信させた。近場にいた"よわのろ"に触れ、声を掛ける。

「私に触れたまま、隣にいる相手に触れなさい。そして言った言葉を全部もう一度言うの」

 "よわのろ"が言われた通りにすると、やがて集団全員が触腕でつながった。この連帯は間違いのない成果であった。全員に声が届くことで、どの構成員にも、集団の統率者が誰であるのかがはっきりしたのである。"くるくる"は次いで、今のうちに主従を確立し、自らの地盤を不動のものとするためにこう言った。

「これから寒週が終わるたびに同じことをするわ。それから、今後はあんた達がそれぞれ仲間を連れてくること。この洞穴が狭くなってきたら、近くの洞穴に移ってもいいけど、必ず週の終わりには肉か何かを持って会いに来ること。いいかしら!」

 逆順にめぐってきた彼らの返事は、"くるくる"を大いに満足させた。


「これで今までよりずっと気分よく生きていけるわ。もう外へ出るのはあいつらだけでいいんだもん」

「僕は?」

「あんたは……どうせ狩りの役には立たないでしょ。私と一緒にいて、運ばれてきた肉を受け取るだけでいいわ。わかった?」

「わからない」


 原始の女王が生まれ、朝貢が始まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る