第67話 グリフォンの羽

前回、剣牙の兵団を訪問してから10日間は経っていた。

随分と長い間、迷っていたようだ。


サラと並んで2等街区へ歩いていると、今日は随分と機嫌が良さそうにみえる、と言われた。

つまり、それだけ長期間、不機嫌に見えていたということだ。


久しぶりに、天気もいい。


2等街区にある剣牙の兵団の事務所は、前回見た時より更に小奇麗になっていた。

要所に、どこで摘んだのか花まで飾ってある。


「へー、思ったより綺麗なところだね。もっとおっかない顔した人達がいるところかと思ってた」


と、サラが言う。

まあ、少し前はそういうところだったんだよ。


事務所では2、3人の街娘風の若い女性が掃除したり、お茶をいれつつ剣牙の兵団の団員と談笑をしている。


「・・・お前ら、規律が緩んでないか?」


俺は談笑しているスイベリーに向かって話しかける。


「まあ、そう言うな。昨日、依頼を果たして帰ってきたばかりなんだ。

 最近は、本当に団員の士気も高くてな。何事もなく終わったよ。

 そうだ!あの靴は幾らなら売ってくれるんだ?銀貨2枚でどうだ?」


「まさに、その話をしにきたのさ。団長に会わせてくれ」


スイベリーの案内で団長室で団長(ジルボア)と向かい合う。


「どうだい?覚悟は決まったかい?」


「ああ。俺もいろいろ甘かった。だから、まずはこちらの覚悟と誠意を見せたい」


「ほう?覚悟はわかるが、誠意か」


「製造した靴の最初の100足を、剣牙の兵団に納めよう。1足、大銅貨3枚だ」


え?と隣でサラも目を見開いている。大銅貨1枚で作る、と話していたからな。


「悪くない話だ。だが価格の根拠は?」


「靴は2サイズ用意する。全員の足型を取って合わせよう。

 多少のサイズ違いはインソールという下に敷く絨毯を調節する。

 つま先の革を特別に硬い爬虫類(リザード)系にしよう。

 戦闘中の負傷がぐんと減る筈だ。

 色を統一して、剣牙の兵団の色に染める。

 意匠はできているか?全ての靴に剣牙の兵団の意匠をいれよう。

 これで剣牙の兵団だけの専用靴だ。

 もし靴が破れたら、こちらで銅貨5枚で引き取ろう」


なるほど、とジルボアは指で軽く机を叩きながら呟いた。


「悪くないな。団の専用靴か。ケンジ、いい商売を考えたな」


「団長の靴には有翼獣(グリフォン)の羽をつけたっていいぜ」


と軽口をたたく。


「いや、あれは兜につけた方がいい。靴だと傷むからな」


と素で返された。


実際に持ってんのかよ!これだから一流クランは!


「しかし、あっさり要求を飲むんだな。景気がいいのか?」


と聞くと


「ああ。最近は街の商人からの寄付も多いんだ。」


とのこと。


実力があって人気も出てきた。お近づきになりたい連中も多いんだろう。


とりあえず、口の堅い革細工職人の紹介はしてもらうことになった。

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