第5話 洞窟の外へ、そして……
ぐったりとして動かなくなった女性の
意識を取り戻した後のことを考えれば、また七面倒な想像ばかりが頭を
少女が里に戻れば、必ず、
――まあ、愚痴を言っても始まらないか。ひとまず、当面の食い糧と、それから早いところ、次の
洞窟の外に這い出ると、丁度太陽が真上に差し掛かるころだった。久方の光の
乾季は、まだあと四十日は続く。乾きと飢えを
しかし、今回はもう少し楽が出来るかも知れない。以前の旅人然とした軽装の若者ならともかく、鎧を着た少女まで
人が住む場所には、当然、水も食べ物もあるだろう。それも、必要以上の分量が、これでもかと
残念ながら、僕の目はあまり良くない。いや、というより、前後左右上下、あらゆる方位の視覚情報を一度に処理しなければならない都合上、
まあ、直接見ることは出来なくても、人間が巣喰う場所くらい、おおよその見当は付く。恐らくは、この
そうと決まれば、善は急げ。早速、触手を硬化して節足動物モドキの足を作る。動き難い吸盤を収納し、荒野を駆け下る。下半身に力を籠めると、背中にグンという加速を感じ、
相変わらず、どこを見渡しても土色しかない殺風景な場所だ。けれども、今日はそんな景色にすら心が躍る。久しぶりに美味いものが食べられるのではないかという期待に、胸を膨らませる。
別に、塩味や香辛料の風味が好きだという訳では無い。けれども、たといおぼろげな記憶しかなくとも、人間だった頃の僕の好物に、再び
――もっとも、首尾よく
街に侵入するのは簡単だ。門から入れなくても、夜に城壁をよじ登れば良い。侵入した後も、まあ、何とかなるだろう。普段は形態変化で
水は、すぐに入手出来るだろう。谷筋にある街なら、乾季の間は地下水に頼り、広場かどこかの井戸を水源としているはずだ。問題は、やはり食料の方だろう。
金品は持っていない。だから、市場で何かを買うのは難しい。もし、欲しいものがあれば、まっとうな手段んで手に入れることは難しいかも知れない。――
近くに畑があるのなら、ちょいと収穫物を拝借するのも
遠方からでも分かる。街があるだろうと予測した辺りに、
硬化を解いて人に化けると、
立ち昇る
分厚い甲冑を着た騎士、盾ではなく長い槍を持った歩兵、彼らを掩護する長弓兵と、指揮官のための
けれども一際目を引いたのは、攻城陣形のほぼ中央に位置する、
一団の中央に立つ老人が、手に持つ杖を指揮棒の様に
その燃える石が、ゆっくりと、まるでスローモーションの様に、街へ向けて落下していく。狙いは城壁では無い。角度からして街の中央、市街地を越えた所にある、一際大きな建物のあたりを狙っている。
迎撃のためだろうか、街からも、投石や弓矢に加えて、幾本かの光の渦が飛ぶ。けれどもそれらは、火球の理不尽な質量に捻じ伏せられて、
城壁の上で守備に就いていた者たちが、絶望の表情を浮かべる。煙と硫黄を撒き散らしながら、
この日、一つの街が滅びた。
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