第3話 交戦
獲物が真下に到達し、通り過ぎようとしたその瞬間。初めて遭遇する相手に、何度も繰り返してきた動作を仕掛ける。
初動を気取られぬため、岩への擬態もそのままに、星の重力に身を任せた、天井からの自由落下。そして、獲物の後背を
瞬間、爆ぜる様に飛び散る血飛沫!!――ではなく、文字通り火花が洞窟に舞う。必殺の一撃を
「やはり、化け物の幼生が巣喰っていたか……。しかし、随分と大きい」
続いて脇腹から伝わる、鈍い痛み。どうやら
驚くべき技量だ。けれども、それより一層驚くべきは、こんな
仮面の下の表情は、良く見えない。入口から
もっとも、そんな感傷に浸っている余裕は無さそうだ。先方は、盾を前面に押し出し、重心を低く腰溜めに構え、斬り込む機会を窺っている。――さて、どうしたものだろう?
脇腹の傷は浅い。いや、実際のところかなり深く
それは、僕の初撃を受け止めた盾も同じだ。元は、美しい文様でも彫られていたのかも知れない。けれども、触手を止めた木製の部分は、まるで焼け焦げたかの様に
初撃を受け止め、反撃に転じたところまでは見事だった。けれども、僕と彼女との間には、工夫や努力、駆け引きあるいは
じっと様子を窺っていると、やがて、仮面で素顔を隠した
この不定形の体に、斬撃で傷を負わせることは出来ない。そんな事をしても、
何のことはない、既に勝負は付いていた。あとは、僕はただ立っていれば良い。それだけで、目の前の獲物は勝手に弱り、やがて動かなくなる。――いつもと、何も変わらない。羊や山羊を相手にした時と、まったく同じ。
彼女が
――けれども、しかし。
かつての同族を喰らうと言うのは、なかなか複雑な心境だ。一度試してみた時は、何とも言えぬ後味の悪い思いを味わった。たとい先に
だから、これは、ほんの気まぐれ。こんな言葉を掛けたのは、本当に、何の特別な理由も考えも無い、
「……君は、毒を浴びた。……だから、もうすぐ死ぬ。……しかし、僕には君を助けられる。……まだ、生きたいかい?」
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