第2話 未知との遭遇
岩肌を伝って、コトリ、コトリという振動が聞こえる。
洞窟の外に広がるのは、無人の荒野だ。乾季には動くモノとて何もない、荒涼とした世界。けれども、そんな不毛な大地ですら、探せば何かしらの生物が見つかるのだから不思議なものだ。――まあ、自分もその一匹なのだけど。
そこまで出掛けてようやく、飛び地の様に広がる色
僕にはとても、そんな気力は無い。腹が減ったら、寝ていれば良い。無理に動き回って余計に腹を空かすのは、愚か者のすることだ。眠りながら、雨季が来るのを待てば良い。あるいは、何も知らない哀れな獲物が、罠に掛かるのを待てば良い。
幸か不幸か、僕が住まう
彼らを、待ち伏せて捕食する。暗闇の中に身を
コトリ、コトリという音が、先程よりもずっと近くで聞こえる。どうも、想像していた以上に大きな生物の様だ。獲物は羊か野山羊、場合によっては牡鹿ほどのサイズかも知れない。
それにしても、妙だ。近付いて来る足音は、まるで振り子かなにかの様に、
――ひょっとして、逃げるべきだろうか?
いや、相手の姿も見えない内から、弱気になるのはダメだ。第一、狭い洞窟の中だ。逃げ場なんてどこにも無い。隠れてやり過ごせる――とは、思わない方が良いだろう。慎重な相手に対して、不確かな幸運を期待するべきじゃない。
もし、万が一発見されたら――すぐに、戦おう。この世界に生まれてからこの方、自分以上の強者に出会ったことはない。近付いて来るモノがいったい何なのかは知らないが、たとい戦うことになったとしても、負ける気はしない。
それに、もし――。負けて自分が喰われたとしても、もう一度、最初からやり直しになるだけのこと。
要するに、負けて失うものがない。なら、覚悟を決めて戦うことにしよう。この体で過ごすのも、これが最後になるかも知れない。だから、精々この戦いを楽しもう。
――そんな決心が固まるのと、足音の
けれども、釣り合いが取れぬその異形を
侵入者は、
胸が高鳴る。――勝てる。この勝負、確実に僕が先手を取れる。そして、初手さえ決めてしまえば、勝敗は決したも同然だ。
あと七歩。まだ、この距離ではギリギリ触手が届かない。あと五歩。まだまだ、我慢の
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