第5話

「おいおいおい! なんでだよ! お前らさんざん文句ブー垂れてたじゃんか!!」


結果を見てミツヒロが吠えた。ゴブリンの面々はバツが悪そうに言い訳していく。


「だって可愛いし……」


「パツキンだし……」


「女子だし……」


「一応協力的だし良い機会だったんじゃね? 遅かれ早かれ現地人と接触しなきゃいけなかったし」


「まぁ最近は村にも余裕出来てきたし一人くらい増えたって大丈夫っしょ」


「何より女の子だし」


「しかも可愛いし」


「おっぱい……」


最期に小さくそして切実な呟きがあった。


「あ~はいはいお前らの頭の中にちゃんとした理性がちょっとでもあると期待した俺が馬鹿だったよ。

 ていうか謝れよお前ら。俺に対する罵詈雑言の数々に対する謝罪を要求する」


 ミツヒロがそう言うとゴブリン達は白けた空気が漂った。不満げなゴブリン達は口々に文句を言う。


「おいおい、ミツヒロがまた変な事言いだしたよ」


「なんだよ、今更こんなので謝るんならこの先何万回謝ることになるんだよ」


「全く……まるで自分が馬鹿じゃないみたいに言いやがってよ」


「ほんとだよ、この間もパンツ牛乳とか言いだして盛り上がってたクセによぉ」


「変態度じゃ他の追随を許さない癖に女子の前だからってイイ恰好しやがって」


「このパンツ牛乳が!」


「正直あんまり知りたくないけど、すごい気になるから聞くね? パンツ牛乳って何?」


黙っていたが聞きかねていたミアーナが恐る恐る疑問を投げかねた。


「マジすいませんでした!!! 俺が全部悪かったです!!! 皆さん程の紳士なら女子に優しいのは当たり前でしたね!! だから紳士の皆さん!! あんまり変な事言わないでくれないかなぁ!!!」


ミツヒロが光の速さで土下座しながら大声で嘆願した。その土下座はおでこで地面を掘っているような深い悲しい土下座だった。その土下座を見下ろしミアーナは呆れた様に言った。


「まぁいいけど。あんたが変態だってのは前から分かってたし……」


ミアーナの横に奴隷の如く控えていたクニヒロがすかさず口をはさんだ。


「ミアーナさん。ミツヒロは普通の変態じゃありませんぜ。技巧派の変態です」


「あんたは黙ってて」


こうしてゴブリンの集会は有耶無耶にグダグダに幕を閉じた。


因みにクニヒロは肉体派の変態である。



「なーミツヒロ。ミアーナさんまた勝手にチョコレート食いつくしちゃってよーマジ何とかなんねーか? 全員分用意出来ねーから皆から不満めっちゃでてよー前のカロリーメイトもどきも食いつくしてたしよー」


「あーごめん。取り敢えず出席番号奇数の奴に配って次の材料来たら偶数の奴に配るって形じゃダメ?」


「おい、ミツヒロ。ミアーナさんに言われた浴場だが要望通りに作るとスペースの関係でミアーナさんの女湯と俺達の男湯が8:2くらいの比率になるんだがどうすればいい?」


「俺達はシャワーだけでいいだろ。その代わり文句が出ないようにサウナも作ろう。サウナの存在はミアーナさんには黙っとけよ?」



「ミツヒロー。クニヒロの馬鹿がミアーナさんに人を駄目にするソファーを教えやがってよー。作らなきゃいけなくなったけどどうしよう?流石におれのスキルの錬金でもマイクロビーズは作れんよ?」


「ウォーターベット的な奴で誤魔化そう。デカい水が入った袋作って布かぶせりゃそれっぽいの出来るだろ」


ミアーナがゴブリンの村にやって来て数日。ミツヒロ達防衛班は森の入り口の監視任務を解かれミアーナさんの世話係になってしまっている。いつもはリーダーのダイソンが使っている家でミツヒロは様々な相談を受けていた。


「ごめんなーミツヒロ。流石に俺じゃあミアーナさん関連は無理だ」


ダイソンが申し訳なさそうに言った。ミツヒロ達防衛班は様々な理由があって村を離れて森の入り口の監視任務に就いているのだが、現在ミアーナに妙になつかれているヨッシー、絶対服従の奴隷として機嫌をとっているクニヒロ、ミアーナがいることで起こる様々な問題を解決するミツヒロの3人がいなければどうにもならないと皆に泣きつかれたのだ。


「いいよ、そもそも俺達が連れて来たんだし」


「でも皆で決めた事だしな~ミアーナさんも防衛班も。ミツヒロ達への負担が大きい気がするんだよね」


「それも気にするなよこっちはこっちで良い感じにサボるから。それよりミアーナさん帰ったらこの拠点移動するんだからその準備は頼むわ」


「うん分かった。でもここもな~……大分愛着が沸いてるからね。皆移動の準備にやる気が無いんだよね」


「俺だってここにずっと居れたら良いと思うよ。でもこの世界の人間がゴブリンを討伐するモンスターとしか思ってないって分かった時点で森のもっと奥に移る方針はあっただろ?」


「そうなんだけど……それもごめんな。防衛班好きでなった訳じゃないのに」


「いやいや自分で志願したじゃん俺。……もういいや。なんかキリがないからミアーナさんにいつ帰るのか聞いてくるわ」


謝り続けるダイソンを振り払うようにミツヒロはダイソンの家を出てミアーナの元に向かった。

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