討伐者ごっこ2

「討伐者ごっこぉ?」

「なんですか、それ」

次に佳那が向かったのは、昼休みの隣のクラスだった。

佳那は颯天を誘うことを早々にあきらめ、誘おうと決めていたうちの残りの3人に会うことにした。

弁当を食べ終わった後、いつもなら颯天に絡むのだが、あまり気が進まないので早いうちに自分の教室を出てきたのだ。

「そう! 面白そうじゃん、一緒にやらない!?」

佳那は目を輝かせる。

けれど、いま目の前にいる2人の反応はそこまでよくなかった。

「面白そうも何も、なにやるのよ、それ」

腕組をするのは、卯月美喜子うづきみきこだ。

彼女も颯天と同じく佳那の友人であるが、颯天よりは優しく、そして何より何でもできるお姉さんな感じがする。佳那は、美喜子を同い年でありながら時々「お姉ちゃん」と呼んでいた。

「何するかって、それはー……。いまさ、結構悪質な事件起きてんじゃん。その犯人を僕らで捕まえちゃおーってわけだよ! だから討伐者!」

つたない言葉で佳那は説明する。

怪しそうに美喜子は佳那をにらむ。

その隣で、もう一人の「誘う予定」の少女がいう。

「それ、危険じゃないかな……。ゆきはあんまりお勧めしないな…」

「い、言うと思った……」

佳那は苦笑いしながらその少女を見る。

その少女の名前は許斐幸このみゆきという。その愛らしい容姿と、小さな背丈で男女問わず人気のある生徒だ。

性格も年頃の女の子とは思えないほど可愛げがあり、そこも人気のポイントとなっている。

はあんまり無茶させないからさっ、ね?」

「それどういう意味よ、幸にはって」

眉をひそめて美喜子は声をとがらせる。

「や、や、あのさ、そう、幸はか弱い女の子だからぁ…」

「何よそれ! まるで私がか弱くないみたいじゃないのさ!」

佳那の言葉によって美喜子はどんどん機嫌を悪くしていく。

それを幸は「まぁまぁ」と二人の間に割って入る。

美喜子はため息を一回つき、頭を掻いた。

「…佳那さ、もしかして颯天に言って颯天が聞かなかったから、私たちを誘ってんの?」

美喜子は鋭かった。

一瞬肩をすくめ、佳奈は手をたたく。

「そうだよ! 大正解!」

「だと思ったわ。あんた、颯天がこんな話乗るとでも思ってたの? 颯天はあんたと違って古臭い考えを捨てない慎重派だから、こんな説得力じゃ聞くもんも聞かないわよ」

と、美喜子は説教じみた声で言う。

周りに颯天がいないか確認し、佳那は美喜子に対して反論し始めた。

「そ、それは、颯天が悪いんじゃん。慎重すぎるんだよ、昔の武士みたいな考えでさ。だから、現代には僕のような奴が先陣切っていかないと……」

「ええい、言い訳がましいわよっ!」

佳奈のだらだらとした話にしびれを切らし、美喜子が叫んだ。

隣にいた幸は10センチほど飛び跳ねるが、それでも美喜子は続けた。

「私は別に構わないけど、あんた何も考えなさすぎ! 大体、こういう私だってあまり佳那の話を信用してないわよ! だから幸だって不安げな顔してるんじゃない!」

「だ、だって、僕、これ以外に説得方法がわかんないし……」

「それはあんたが10割悪い! とにかく、出直してらっしゃい、幸や颯天が納得する説明と説得力をひっさげて!」

そういうと美喜子は、幸の手を引いて教室の中に入り、ぴしゃりとそのドアを閉めた。

中から「いいの、美喜子……」という声がする。

一気に締め出されたような気分になった佳那は、顔をゆがめてドアに向かって舌を出した。

「もうっ、美喜子も頭が固いんだから! いいよ、まだ誘う人いるんだからねっ!」

佳那は乱暴に吐き出すと、足を右側に向けてまた歩き出した。

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