第6話 鋼の絆

 颯太が、鋼鉄の迷惑と暮らすようになって数日が経ったころのことだった。颯太が近所のスーパーに行くのに鋼鉄の迷惑もついて行った。もちろん、自力で宙に浮かんで。

 その光景を目にした3人の男たち。

「ん?」

「何ぃ?」

「馬鹿な!」

反応は違えど、驚きは同じ。

「は、鋼の塊が浮いて動いているぞ」

「生きているのか?」

「作りもんじゃないよな」

ここから先は、考え方が分かれるのだが、そのためにも、色々説明した方が良いだろう。


 彼ら3人は、超弱小新興宗教団体「鋼の絆」の教祖「天(てん)」と聴者「地(ち)」と信者長「人(じん)」である。もちろん本名ではない。教祖については説明は不要であろう。信者長も平の信者のリーダーという、「偉いんだか偉くないんだか」、というところを除けば、分かりやすい役職である。聴者というのは、「教祖の声を聞き、信者の声を聞く」という意味である。「じゃあ、ききっぱなしかいっ?」というツッコみは無しで、間に立って声を伝えるということらしい。

 天は天性の強烈な雨男で、日照りで困っている土地を、雨乞いで潤すことが唯一の能力である。

 地は教団の科学省で、住まいのあれこれやズボンのかぎ裂きから自動車まで何でも修理できるし、アナログ、ディジタル、メカニックと発明もできる。(実用性は、どの程度かは知らないが)

 人は教団の大蔵省というか経理担当。3人の中で、1番現実を見ていて、しっかりしているので、この役を担っている。


 さて、鋼鉄の迷惑を見た3人の感想はというと、

天の場合、

「あれこそが、わが教団の神に違いない。わが教団にお連れして、奉らねば」

地の場合、

「いかにしてお迎えしようか。こちらの願いを聞き届けていただけるだろうか」

人の場合、

「あれをご神体にすれば、良い見世物になって信者も集まるぞ」


 人が真っ先に口を開いた。

「あれを、ご神体に祀り上げましょう」

「『あれ』とは何だ。無礼な。我々のご神体に向かって」

地がたしなめた。しかし、ご神体は確定なようだ。

「とにかく、丁重にお連れしないとな」

天もその気だ。

「そのためには、まず情報を集めましょう」

人は言った。そうしないと、天も地も、いますぐ突撃しかねないからだ。

「今日のところは、気付かれないように後をつけるんです」

天も地も、こういうときは素直に人の言うことを聞くのだった。そして、3人は、こそこそと颯太と鋼鉄の迷惑の後をつけて行った。

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