23痛目 ギフトなんてろくなもんじゃねぇって話だな!いいから俺と誰か代わってくれ!


 本当に死ぬかと思った。

 本当に死ぬかと思った。

 

 誤字じゃない。重要だから二回言った。

 もうこれでもないってぐらいの激痛と発熱にもだえ苦しんだ。

 全身の骨をバキバキに木っ端微塵にして、筋肉を全部、筋繊維になるまで千切られる痛み。

 聞いただけで凄いだろ?

 漏らすかと思った。漏らす小便は出ないけど、それぐらいだった。脱糞でも言い。

 痛みに苦しんで、それから二日間寝込んだ。

 気絶するように二日寝込んで、今は見知らぬ天井。

 いや、もだえている間ずっと見てたから見知らないわけではない。 

 あの激痛は気を失わせてくれない。ずっと責め立てられる。

 

 本当に死ぬかと思ったわ。

 ここはドラゴンに襲われた村長の家のベッド。

 ドラゴンの被害から免れた貴重な場所をアーリアが傲慢にも俺のために取ってくれたのだ。一応、礼をいうが、全部アイツのでせいだがな!

 なーしてんだろ?

 なーして俺はこんな苦労を・・・でも逃げ出す気に全くならないのが凄いわ。


「目覚めたか、ユウヤ」

 首を動かすと横にアーリアが座っていた。

「動かずとも良い、寝ておれ」

 気を使って言ってくれるが、俺は全く動く気は無い。

 心配そうに見ながら甲斐甲斐しく俺のシーツを整えるが・・・。

 なんだろう、全然嬉しくない。

 なんつーか、俺が見ていたドラマの一場面に見える。

 こいつ楽しんでやがるな。ぜったい。

「さて、ユウヤ。私は一つお主に聞いておくことがある」

「・・・」

 目線を動かして、返事をする。

「お主・・・私から一体どんなスキルを得たのだ?」

「すげー迷惑なスキルだ。固有ギフト『苦痛は神の栄光なりグローリー・オブ・ザ・ペイン』とか言うな」

 俺が短く返事すると、珍しくアーリアが驚いて目を見開いていた。

「まさか・・・。それは本当か・・・?」

「嘘ついてどーすんだよ・・・これのせいだぞ、俺が寝込んだのは」

「なるほどな。そういえば、ちょっと待っておれ。『ステータスオープン』」

 

 え? ステータスあるの?

 どうやるの? え? ちょっと、アーリアさん?


 アーリアは虚空を見つめながらコクコクと頷いた。

「ふむふむ・・・。本当じゃな。しかもお主、スキル鑑定があるではないか。ああ、そうかスキル鑑定レベル1だから正しく自分のスキルを理解できなかったのか」

 え? 嘘? そんなのあるの?

 俺が教えて光線を撃ち込んでいるのにアーリアは全く気づかずにスキルを説明しだした。


「固有ギフトというのは特別な力だ。本来なら人の身で一つ。神の奇跡と等しい能力のことだ。そして、お前のスキルは『苦痛は神の栄光なりグローリー・オブ・ザ・ペイン』。これは希有すぎるスキル。成長しない吸血鬼の身体を成長させる神の力だ。本来は私のスキルであったが、吸血した際にお前に移譲されたのだな。運がいい奴め」


 はぁ? 運がいいだと?

 こんな迷惑なスキルいるかよ!


「私のスキルとは語弊があるが・・・まあいい。ならばユウヤ、お主は力をつける必要がある。もう魔力は人の身を超えて保有しているはずだ。下級とは言え、魔力量だけで見れば魔法使い二十人分はある。すべてを受け継げなかったとしてもお前のステータスでは人間の魔法使い十人分ぐらいはあるぞ」


 へー俺の魔力は魔法使い十人分か。

 でもどうやって使うの?

 呪文でも唱えればいいのか?

 それともこう魔法のイメージ、分子レベルの原理を使って無双するんだよな?


「まあ、普通は魔法使えなかった者がいくら頑張ったところで使いこなすのは無理だがな。少なくとも二十年ぐらいはかかるだろう」


 え?

 なにそれ?

 二十年!? それまで魔法おわずけ!? そんな話あるかよ! おれ痛みを乗り越えたんだぞ!? あの激痛を!


「そう悲観するな。普通はな。だが、私に任せろ。すぐに魔法を使えるようにしてやろう」


 おーすごい。

 ご大層に魔術とは何かをご高説していただいただけある。

 ん?

 でも普通は無理なんだろ?

 ・・・だったら普通じゃない方法って何さ?

 もう、悪いイメージしか思いつかないんだけど?


「さて、お主のスキルも理解できた。ふむ、私は少し修行計画を練ってくるぞ。よーし、楽しみにしておれよ、ユウヤ!」

 

 惚れちまいそうになるほどのいい笑顔で、アーリアは元気よく立ち上がってどこかへと行ってしまった。


 でもさー、おれさー。

 アーリアが笑う度にすげー悲惨な目に遭ってる気がするんだよね。

 だからさー、たのむからさー、何もしないでおくれ?

 俺はいいよ、魔法使わなくて。

 せっかくもらったナックルあるからさ。殴ってればさ。

 肉体も吸血鬼だし、ちっとやそっとじゃ、壊れないし。

 てか、殴られる方がね。

 痛くないんだよ? 骨折れる方がね、痛くないんだ。

 もう慣れたんだよ。


「ちっ、この下郎。アーリア姫様のご寵愛を・・・。妾はお主が憎い。消し炭にしたいぐらいな」

 のそのそとベッドの下から這い出てきた蜥蜴が火を吹いてそう俺を脅す。


 気持ち悪いわ! 蜥蜴! そんなところで盗み聞きすんなよ!


「なら代わってやるよ。喜んで代わってやるよ!」


 全身がまだ痛む身体に鞭打って俺はそう叫んでいた。






 【ステータス】


 名前:ユウヤ

 職業 :吸血鬼の従者、魔法拳闘士

 年齢:29

 レベル:12

 体力 :2000 魔力量:1800 闘気量:50

 STR :82 VIT:130 DEX:25 AGI:84

 INT :50

 魔力適性:不明

【闘気スキル】

 俊足の理1 鋼の身体1 筋肉強化1 猛獣の心得1

【武闘スキル】

 拳闘術2

【魔法スキル】

 ※現在魔法を使用していないため未習得

【通常スキル】

 農作業セット1 ヴォーリア語2 家事作業セット3

【通常ギフト】

 吸血姫の従者1

【固有ギフト】

 苦痛は神の栄光なり1



 名前:アーリア・スフェルト・メガリストフ

 職業 :吸血鬼の姫ノーライフプリンセス

 年齢:20083歳

 レベル:20000(※リミットブレイク)

 体力 :20000 魔力量:143000

 STR :1350 VIT:2422 DEX:99 AGI:2789

 INT :4200


 魔力適性:五元素、物質創世、闇

 固有呪縛:魔法制限 ※全魔法が効果半減、魔力量半減、ギフトのほぼ全封印

【魔法スキル】

 全魔法習得セット10 魔法完全反射10 魔力探知10 全ステータス異常耐性10

【特攻スキル】

 全種族特攻10 エーテル体特攻10 アストラル体特攻10

【闘気スキル】

 俊足の理1 鋼の身体1 筋肉強化1 猛獣の心得1

【武闘スキル】

 拳闘術2

【通常スキル】

 農作業セット1 ヴォーリア語2 家事作業セット3

【通常ギフト】

 吸血姫10

【固有ギフト】

 カウント不能


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