episode.7「友達の友達は友達と言うじゃないか」
「まだいくらか、魔力が使える。専門外だがやらないよりましだろう」
「……お礼なんて、言わないからね」
「言うまでもない。礼ならお前のボスに払わせる」
憎まれ口と
茉奈と、気絶したままの
「俺は疲れたから軽いほうを運ぶ。そっちの重いのはお前が引きずっていけ」
命じられた
「……ああッ、乱暴な人たちにしこたま
わざとらしく倒れ込み、口をぱくぱくさせて
「も、もうしわけありません……今の僕には、51.5キロもある工藤君を運ぶことなど……どうか、これで助けを……」
ポケットから取り出した携帯電話を、震える手で公に手渡す。
……というか、なんでコイツは
殺意を
「ああ。重傷一名、気絶一名、死んだふり一名で救助隊は全滅した。もう少しマシなのを代わりに
それから、ほんの十分弱。
〈
――しかも、〈
「やあ、戦友。久しぶりだな。面倒をかけてすまなかった」
公を見るなり呼びかけたのは、緋色の瞳と長い髪を持つ、茉奈と同じ制服の少女だった。
身長は茉奈より少し低く、その分だけ体格も
やたらと
「ああ、こうして顔を合わせるのは三年前のあのとき以来か」
「まあ、な。貴様も
「そう言うお前は変わらないな。もう少し大きくなってると思ったが」
「口の
ひとしきり親しげな軽口を
壁に
「茉奈、よく無事でいてくれた。奴に感謝せんとな」
「……享」
ぽつり、と一言。
まずはできるだけ
自称・神よりも偉大な〈緋星會〉の総帥を、茉奈は
「あんたねぇ……アイツといい魔人といい、こういうヤバくて危ないことに軽々しく人を巻き込むんじゃないわよ。あんなのに感謝するヒマがあったら、まずわたしに謝れっての」
「まぁそう怒るな。奴も、あれでいい男だぞ? 友達の友達は友達と言うじゃないか」
「…………」
…………友達、なのか?
無条件には受け入れ難い表現ながら、この少女と茉奈が幼稚園から高一の今までずっと同じクラスであり続けているのは事実だった。もちろん、ただの偶然などではない。それを
「茉奈――」
享は表情を改めて、ふてくされた茉奈の肩に軽く手をかけてくる。
「お前は
お前のような『力ある者』が
「……はぁ。わたしが何言ってもあんたは聞かない、ってことはよーくわかってるわよ」
「そう言って私に付き合ってくれるのはお前だけだよ、茉奈」
溜め息に、享は満足げに微笑んだ。
受けた傷を
「
背後に従えた取り巻きの二人へ、総帥は声だけで指示を下した。
オールバックに黒スーツの伊達男と、冗談みたいなピンク色の髪を腰近くまで伸ばした女子高生。
一見妙な取り合わせだが、二人とも茉奈や涼真より遥かに
「では、参りましょう閣下。僕も苦労した
いつの間にやらちゃっかり復活した木沢も、享の隣にぴたりと寄り
……何か、猛烈に
ともかくこうして、一同は地上への帰還を開始した。
◇◇◇◆
享の登場で、茉奈と涼真はお役御免となった。
二人とも念のために病院へ運ばれたが、特に大事はなかったらしい。
いくつかの事務的な手続きを経た後、再会を祝う旧友たちの夕べはささやかな
全てがお開きとなった午後十時過ぎ――
見知らぬ
「……こちらは、『フォース』だ」
右腕。
通信モードにしたPMDに向け、
「予期せぬ事態に見舞われたものの、無事〈緋星會〉への
『了解しました、フォース』
イヤホンに、若い女性の声。
次元を
『くれぐれも緋咲に行動を怪しまれたり、おかしな考えを起こしたりすることのないように。裏切り者のあなたに〈
「お前に言われるまでもない」
吐き捨てるように通信を打ち切ると、ちょうど背後から人の気配が近づいてきた。
「こちらにおいででしたか、お客人」
と、木沢の呼びかけ。
「閣下は既にお帰りですので、
「……ああ、よろしく頼む」
振り返った黒ずくめの客に、案内役のメガネは
「いいえ、こちらこそ。
改めてよろしくお願い致します。ミスター・レベル
そして作戦は、密やかに開始された。
PART.1 END
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