間話 異世界の料理
日の光が、辺りを眩しく照らす。
隊長との特訓初日。今日は雲一つない晴天だ。
絶好の運動日和だ……。どんな特訓をするのか楽しみだな……!
まずは素振りか? 特訓の最初に素振りをするってのは、漫画やゲームで結構見た事あるしな。いや、でも買い出しとかじゃないか? 一見関係なさそうなのに、実は凄い関係あったとかも結構あるからな。
「よし、では……そうだな」
俺は期待の眼差しを隊長に向ける。
「この精鋭兵軍基地を十周してもらおうか」
あ、本気なやつだ、これ。
真面目に肉体から完璧に仕上げていくやつだ。
その後、俺は死に物狂いで走り切った。我ながら、よくやったと思う。
走り切った後、昼飯をご馳走してもらうことになった。
この精鋭兵軍基地には食堂があり、様々な料理を扱っているそうだ。
その事を聞いた俺は、よだれが出てくるのを我慢しながら隊長に着いて行った。
思えば、この世界に来てから何も食べていなかった。驚いてばかりで気付かなかったが、凄く腹が減っている。
今なら何でも食べれそうだ。どんな料理があるか楽しみだな……!
「さあ、着いたぞ。ここが精鋭食堂だ」
そう言われ、覗いた先にあったのは、恐怖だった。
見た事のない料理達が、各テーブルへと運ばれている。その料理は独特で、動いてる物もあれば、色が凄い事になっている物もある。
それを見た俺は、少し後ずさる。
直感的に、ヤバい何かを感じ取ったからだ。
「た、隊長。他の店ってないんですか……?」
「ない事はないが、ここが一番美味いぞ?」
「あ……。そうですか。ならここでお願いします……」
とりあえず大丈夫そうな物を頼もう……。
適当な席に座り、店員と思われる人に手渡されたメニューを開く。
俺はさっき「何でも食べられそう」と言った。
あれは嘘だ。前言撤回しよう。
この世界には、俺が居た世界とは違う食材や、料理がたくさんある。
例えば、『オルブレムルの丸焼き』。
最初は豚の丸焼きみたいなものかと思っていたが、全然そんなのじゃなかった。
まず、オルブレムルとは何か? 簡単に説明すると、熊の魔物だ。
その魔物の頭が丸ごと焼かれて出てくる。頭だけで子供一人分くらいの大きさはあり、その頭には恐怖さえ感じる。
一体誰が食べるのか。これを食べる奴の顔が見てみたい。
「すまない。この『オルブレムルの丸焼き』を一つ」
どうしよう凄い近くにいた。
隊長はなんであんな物が食べられるのか。……もしかして美味しいのか?
さらにだ、『メローニム・パスタ』。
名前だけ聞くと、普通に食べられそうに思えるが、実物は見るだけでやばい。
パスタがうねうねしている。青いイカの足のような物がうねうねと。それだけならまだ食べれたかもしれない。だが、それだけで終わらないのが異世界。
そのパスタには無数の目が付いている。しかも、その目玉は動いている。
とても食べれる気がしない。
こんなの誰が食べるんだか……。
「すまない。この『メローニム・パスタ』を一つ」
……もしかしたら本当に美味いんじゃないだろうか?
「拓斗も何か頼め。別に遠慮はしなくていいぞ」
「じゃ、じゃあ俺も『メローニム・パスタ』を……」
俺は店員さんに注文をして、またメニューを眺め始める。
一体どれほど美味しいのか、俺が評価してやる……!
しばらくして、テーブルに『メローニム・パスタ』が置かれた。
後悔はしていない。ほら、よく見ると美味しそうじゃないか。
目玉と目が合うけど気にしない。
「い、いただきます……!」
俺はそいつを口一杯に頬張った。
○
「拓斗。大丈夫か?」
「だ、大丈夫、です。ご馳走様……でし、た」
アレを食べた後、俺は少し放心状態になっていた。
爽やかな磯の香が口一杯に広がり、何とも言えない感触が俺を襲った。食べられなくはないが、決して美味しくはなかった。
あれをもう一度食べろと言われたら迷わず身投げするレベルぐらいの美味しさだった。
「あ、明日もお願い……しま、す」
「あ、ああ。わかった」
どうやら、この世界の料理に慣れるのには少し時間が掛かりそうだ……。
それからは、昼飯の時に異世界の料理と闘う事が、俺の日課になった。
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