第3話「僕の名前って......」
「......えっ?」
今なんて言いました?「僕だけ」って「僕だけ」って......。僕だけ的な展開は街にいないパターンだけでお腹いっぱいですよ、ええ。それに僕だけっていうこの特別な感じこそ主人公の醍醐味なんじゃ......。そんなもの僕には荷が重いというかなんというか、はっきり言ってむしろ要らないです。それに「僕だけ」ということは、だ。つまりそれは......
「僕以外......つまり実質的に主人公はこの世界から出られる、と、そういうことですか?」
「出られるわけではありません、出られる可能性がある、そう言っているのです」
「可能性というのはそれはあれですか?主人公が作った誰かを倒せばみんな助かるよーというそういうことですか?」
「この世界がそんなに甘いものだとお考えになっているなら考え直した方がいいと思いますよ。確かに倒せば助かります、しかしそれは倒した 、つまりはトドメをさした本人のみとなっています」
「じゃあそれ以外の主人公はどうなるんですか?」
「消えます、跡形もなく。ただ、何もなく普通に消えます」
「残酷すぎる......」
「まぁ、そういう意味ではモブキャラでよかったというべきなのかも知れないですね」
「でもモブキャラには出る可能性すらないし......複雑だね」
実際難しいは難しい。自分が異世界に行くと考えて普通はモブキャラなんかではなく主人公であるように考えるだろう。おそらくそれは小説の読みすぎかアニメの見過ぎというわけでもなく、ただ普通の人でもそう考えると思う。それにこんなに異世界が残酷というのもなかなかない。某太鼓ゲームの鬼ぐらい厳しい。これが例えばゲームの世界で......っていうならこの厳しさはわかるというか有名作品とほぼ同じ状態になる。一つ違うとすればゲーム名がわからないのとそもそもゲームを作った人がわからないというところか。それにあの世界は誰もが主人公だった、そういう意味で何もかもが違うとも言える。結論だけ言おう。今からでも主人公になりたい。
「そういえば申し遅れていました、私は魔法使いのタイルと申します。一応貴方がモブキャラでモブキャラでモブキャラでも名乗るのが礼儀でした。本当にすみません」
「うん、謝る気がないのはわかったよ。表にでろやあああ」
「貴方じゃ私に一生勝てないですよ?」
「わからないじゃないか!」
「だって私、結構前の主人公ですし」
「......前なんてあったの?」
「ありましたね。ただ私もニートというか人にあまり大っぴらに言えるような存在ではなかったので自業自得です」
「ちなみに今回は......」
「第十三回です」
「じゃあ僕らっていうのはつまり....その....なんだ.....アレなんですか?」
「大半が「社会不適合者」ですよ」
「言わないでえええええええ過酷な現実見せつけないでくださいお願いします!ニートはおおかたガラスのハートを持っているので!言葉に気をつけて下さい!!!!!!」
「いや、わかってて言いました」
「......くっ、何も言い返せない」
「それで、貴方の名前は?」
「.......うん?」
名前.......名前.......ん......名前なんだっけ?頭を打ったとかそんなこともないと思うしなんで思い出せないんだろう。何か名前の部分だけ意図的に消されているような違和感というか今になってみるととても不思議な部分が多くある。アニメや小説の知識はある、ただどこで何を見た、何をしたという、そう......大体1年ほどの記憶がない。それに異世界に来たというのは普通は受け入れられないものだ。なのに僕は、いや、ほぼ全員か、はあまり驚いたような 、パニックを起こすようなことは無かった。例えば、「自分からこの世界を望んだ」みたいに。この違和感は何なのだろう。
「......名前はわからないです」
「でしょうね」
「えっ?」
「私もわからないですし」
「え、あっ、でもそうか」
「タイル、なんて日本人はいないでしょう?」
「まぁ、そう言われればそうだけど」
実際女神だと思ってたんだしね。
「じゃあその髪と目って」
「これは....女神の証です」
「でも前回の主人公って......」
「この世界は終わらないんです、例えば、仮に神様を倒したとして私達に向こうの世界になんか居場所はないんですよ」
「でも出れる可能性があるって」
「実際出れるけれど出ることを主人公が望まなければこの世界が終わることは無い、そうやって今までずっと終わらなかったんです」
「じゃあそれ以外の主人公の人はどうなったの?」
「どうもなっていません、ただ普通にこの世界で暮らしていますよ、職業が変わった状態で。それに本当に作った誰かを殺した本人以外が消える、というのは実は初めてなのですよ」
「昔はそんなにきつくなかったと?」
「そういうことです」
「なんで今回から......」
「ここからは私の憶測を出ませんが、13という回数だからじゃないでしょうか」
「神様の安定を崩したとかなんとかあんまり知らないけど聞いたことはあるよ」
「まぁ、大まかにいえばそうです。だからこそ今回決着をつけようとしたのではないでしょうか」
「迷惑なシステムだ......」
「そういえば貴方はまだ主人公になりたい、と思いますか?」
「まぁ、出来るならなりたいけど」
「なれますよ、貴方も」
「というと?」
「それ相応のリスクのある魔法なのですが、貴方の五感のうち一つが媒介になって発動します」
「うん、わかった、大丈夫もういいです」
そこまでして主人公になって跡形もなく消えたら流石に酷すぎるというものだ。
「他にも言いたいことは色々ありますが、この世界のルールはこの紙に書いてあるのでよく読んで下さい。説明は以上になります、これからも頑張ってくださいね、モブキャラさん」
「あっ......はい」
まぁ、つまりはこういうところで一緒に行きましょうとならないところがモブキャラの良さでもあり悪さなのだ。ともあれ結局のところ一人でやっていくしかないのだから仕方が無い。ここは異世界で何が起こるかわからない。この前提条件を忘れないように何が必要なのか考えるとしよう。まず何が必要かと言われれば二つの答えが出る。お金と武器。単純にいうとお金になるものでもいいし、なんならお金があれば武器もいらないかもしれない。お金を稼ごうにもなかなか思いつくような商売もないしなかなか難しい。
「どこへ行こうかなっと」
僕は別れ際、旅にいるかもしれないからジャンケンで勝ったらあげます、と言われ見事勝って手に入れたこの世界の地図とルールブック(仮)を手にしどこへ行こうか考えていた。とりあえず行くにしてもいきなり難易度高そうなところはやめよう。お金ないし何があるかわからないし。となると近いところで晴れの街、曇りの街、雨の街、朝の街、昼の街ぐらいだろうか。他にも雪、吹雪、ヒョウ、夜の街などもあったが夜の街なんていかにも危険そうである。ちなみにこの世界のいうなれば創造者に会うためには全ての街でカギを手に入れなくてはいけないそうだけど、関係ないから聞いてもいない。.....
「そういえば名前どうしよ........」
とりあえず適当にでもいいから決めちゃおう。こんな決め方は本当は良くないのだろうけど仕方ない。うーん......。いざ考えてみるとなかなか思いつかない。無難に季節とかでいいのかなぁ。主人公って季節の名前多いし。ハルとかナツとか。ただあんまり聞かないのがフユという主人公。なぜ聞かないのかと聞かれてもキャラクターがいないからとしか答えられないのだからどうしようもない。おそらくフユは何となくアユに似てて綺麗じゃないとかそういう事情があるのかもしれない。......じゃああえてフユにしよう。主人公にいない名前っていうのがモブキャラとしての名前の付けられる範囲としての最低条件だと思うし、もちろん勝手な考えだけど。それにモブキャラなのに見栄張って主人公っぽい名前にする方が逆に恥ずかしいというのもある。むしろこっちの方が比率高い。名前が決まったのはいい、ただ結局のところ......
「何するか決めれてないんだよねぇ......」
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