第2話「モブキャラなんて呼んでない!」

「僕はモブキャラですよ」


この人は何を言ってるんだろう。私は純粋にそう思った。私は確かにあの場所に「主人公」を集めたはずだし、呼んだのが私なのだから間違いだということもない......と思う。だからといってこの人が嘘をついている様子もないし嘘ということもないのでしょう。しかし、しかし、です。私が魔法を失敗?ありえないです!この世界で極少数の人しか使えない転送魔法を使える私が失敗するなんて。それに何ですか?「モブキャラ」って。仮に間違えたとしてももっと強そうな.......例えば「傭兵」とか「軍人」とか.....ってそんなに変わらないか。とにかく私の魔法でこんなひょろひょろな女の子みたいな人が来てしまうなんて。想定外を通り越して論外です。それに「主人公」の人達に私を見つけてもらってから説明をしようと思っていたのに探さずに旅に出てしまいました。そういえばサプライズというものが総じてあまりうまくいかないものだと聞いたことはありました。ただ、こういう失敗の仕方というのは何か違うのではないだろうか。サプライズが計画中にバレる、というのはよくある話で、サプライズに気づかれない、というのはそもそもそれはサプライズと呼んでいいのかも怪しいのである。確かに、ダンボールに入ってて出れなくなったのは私の失態ですよ、ええ、でもですよ?扉があれば開けるじゃないですか普通!それが例えニートだとしてもですよ!なのになんで1人しか開けてくれない上によりにもよってモブキャラなんですか?うまくいかないにも程があるっていうものです。ともかくこんなところで考え込んでいても仕方ないので、モブキャラの方に一応話を聞いておきましょう。


「あのーもしかしてあれですか?文字が読めないーとか実は主人公だったー的な」


「あると思いますか?」


.....控えめに言ってもないだろう。それが私の感想なのである。ゲームとかラノベでもこういう女の人に近い見た目の男の役割というのは基本は主人公補佐なのだ。だからこそこのモブキャラ(仮)が「僕はモブキャラだ」と言ってたきにあまりショックを......ごめんなさいすごく受けました。魔法失敗なんて何年ぶりでしょうか本当に。


「そのゲームのHPバーのようなモノの横にかいてあるのが職業なのですが......」


「あー、はい、何回見直してもモブキャラですね」


「そうですか......」


さて、どうしたものか。このままこのモブキャラさんが餓死しようがケルベロスさんに食べられようが刀で斬られようが「主人公」ではないので私の管轄外なのである。とはいえ、だ。とはいえ、私たちの事情で呼び出しておいて、「さー勝手にやってください」というのは流石に酷だと自分でも思う。なのでこの世界でのルールぐらいは教えてあげよう、それでこの件は終わり。


「では、この先あなたが困らないようにモブキャラさんと主人公の違いの説明をしてあげます」


「口調が変わったのも気になりますけど、それは聞きたいかな」


「そもそもこの世界にはなぜ、主人公とモブキャラというものがあるのかわかりますか?」


「わかりますか?と言われても正直来たばかりで戸惑ってるところなので.....」


「それもそうかもしれませんね。おおかた、

貴方の考えなんて「異世界ktkr」→「モブキャラ」.....ちっ、というところでしょう」


「う、うん 、当たってるけどなんか僕のイメージ必要以上に悪くない?大丈夫?」


「主人公ではない上によりにもよってモブキャラ、それに男という時点で貴方には何も感じていないです」


「あっ、そうですか、わかりました続けて下さい」


「では続けます。なぜ、主人公とモブキャラがあるのかという理由ですが、これは簡単です。作った誰かがいるからです」


「作った誰かという言い方をするということは......」


「ええ、お察しの通り、誰かはわかりません」


「その誰かというのは僕達を呼んで何をしようと?」


「モブキャラには必要ない情報です」


「急に冷た!」


「で、続いてモブキャラについての説明、聞きますか?」


「はぁ......聞きますよ、ええ」


「先にモブキャラの良いところを言っておきます」


「ほう」


「良いところはいくつかあります、一つは感情の抑制が主人公であるものより大幅にできるということです」


「でもそれって人によって違うんじゃ」


「そういうわけでもありません、というかこれは主人公の存在としての設定です。何故かというとそれはつまりラノベやゲームなどでいう「覚醒」というものを促すためのものです。感情を蛇口に例えるとわざとゆるく締めてある状態ですね」


「主人公といえば、そうだなぁ......覚醒は燃える展開だよねー」


「そういうことです。おそらく作った誰かも貴方と同じように覚醒するところが好きだった、ということですよ、きっと。さて、話を戻して、その次のできることの説明です、二つ目は生き返りが出来ます」


「おーやっとなんか凄そうなのきた!それはつまりあれだね、一日何回までなら大丈夫とか、死んでもニューゲーム出来るとかそういうのですね!?」


「一日何回でも逝けますよ」


「おおおおおおお」


「ただ、一つ欠点があります」


「というのは?」


「生きていた時の記憶は無くなります」


「......それは......」


「そう、これは人のリサイクr「言わせないよ!?」」


「そもそもそれは僕じゃないでしょ」


「きっと作った誰かは死んだモブキャラですら使い回そうとする、地球に優しい人なのでしょう」


「いや、その理論はおかしい。仮に地球に優しくても心に優しくない」


「......別にモブキャラだしどうでもいいとか言えない」


「言えてるね!!どうでもいいとかモブキャラさん達に謝れ!!」


「とはいってもです、貴方のような自律型モブキャラはなかなかいません」


「それが何か?」


「つまり実質的的に死体リサ〇クル、バイオハ〇ードするのは貴方だけなんですよ」


「えっ、ちょっと待ってやっぱり僕だけなのモブキャラって」


「いえ、一応貴方と同じような方は多くいますけど.......」


「けど?」


「一々モブキャラなんか覚えてないです」


「気持ちがわかるけど気持ちオブラートに包もうね!?」


「......モブキャラのくせに」


「一応言わせてもらいますけど陰口って聞こえないようにいうから陰口というのであって聞こえたら意味無いですから」


「いえ、悪口なので大丈夫です」


「悪口だから大丈夫とかないからね!?」


「それで最後のモブキャラの良いところを言いますね」


「見事にスルーしましたね今」


「それは「以上の点以外に制約がない」というところです」


「不明瞭過ぎてよくわからないよ」


「作った誰かは主人公には主人公としての役割である、「作った誰かを探す」ということがすべての事柄よりも最優先になるように主人公の思考を創造しました」


「それに対してモブキャラは?」


「何も無いです、よく悪くも放任されていますね」


「複雑な気分だね......」


「次ににモブキャラの貴方ができないことを説明していきます」


「はい」


「まず一つ物語への干渉」


「そういわれてもイマイチわからないかな」


「それもそうですね。そもそもこの物語っていうものの最終目標というものは......ってわかるわけないですよね。簡単にいうと先ほど申し上げた「作った誰か」を倒せばいいのです」


「ふむふむ、それで?」


「貴方はその誰かに会うことも出来なければ主人公に過度に接触することもできません」


「わかりました、つまりボッチでいろと」


「まぁ、モブキャラ同士なら一向に構いませんが簡単にいうとそうですね」


「他にはありますか?」


「こちらの方が大きな問題なのですが......」


「ここまで言っておいて、今更言い淀まないで下さい」


「では言いますね......貴方だけはこの世界から出られません」




「.......えっ?」

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