第11話

いやー不味かったマズかった。

俺さ、わかったことがあるんだよ。


ダメだわ、この島のトカゲども。

何一ついいとこないわ。

異様にマズいし、群れて襲ってくるし、交尾見せつけてくるしで邪魔以外の何物でもないぜ。


というわけで俺の安寧のために、出来るだけアンブッシュでお掃除していく所存であります。

慈悲はない。


あの後、戦利品と化したアベックどもを撒き餌として再利用しようかと考えたが、あんなのを餌にするぐらい強い連中が来るかノーセンキューユーマストダァイなので即ボツ。

そんなことよりおうどんたべたいよ。


というわけで、戦いの疲労とかも考慮して海辺の拠点まで直帰したのである。

ていうかあれだよね。

あのトカゲどもってなんかゲームで出てくる、やたらと旨味が無いのに厄介な敵にスッゲェ当てはまるんだよね。


しかしまあ、そんな厄介なのを曲がりなりにも倒せるようになった訳で。

これで火山に向かう時は、ある程度ではあるが大手を振って歩けるわけだ。

ある程度だよ。多少はだよ。殴るぞ。


一応、余裕しゃくしゃくで勝った訳ではないのは事実である。

うまく奇襲が成功したあれでも、水圧カッターを撃ったらヘロヘロになってしまう。

そうなったらもう、あとは撤退、転身なんでもいいから三十六計よ。

いざとなったら、逃げに徹っせにゃいかんのは今まで通りなんだよなちくしょー。


つーわけで、強化習慣はこれからも続けたいわけでして。

その一つとして火山の鉱石を食いたいのだ。

黒い石を食べたら殻がパワーアップしたっぽいから、今の俺の体にとって鉱石の摂取は想像以上に重要なんだと思う。

すごいぞ謎の甲殻類。


いやむしろこれもうモンスターだろ。

肉でホイホイ人間様について行きそうな存在と同類だぜきっと。


…それを差し引いても俺の食い意地は否定できんがな。


なんか最近、鉱石を定期的に食べないと落ち着かないっていうか。

あれだ、無性にチョコやらポテチ食いたくなるのに近いかもしれない。

なんというか俺のDNAが満足しないのだよ。うん。


そういやしばらく耐熱訓練サボッてたからちょっと不安があるんだよな。

前に来た時よりも暑さは感じなかった気がするけど、あの火山の熱気にはそうそう慣れない自信がある。

取り敢えず暑さに関しては、じっくりと身体を慣らしていくしかないだろう。


あと、海辺もあることだし水鉄砲の訓練がてらどこまで泳いだり潜れるかもやれるだけやってみたいな。

やることは色々増えたが、ひとつひとつこなしていけばいいだろう。

しかし、今日はもう寝よう。

結構暗くなってしまったし、いい加減眠気に抗えそうにもない。

明日からまた頑張っていこう。

というわけで寝る。

おやすみー。





〓〓〓





うむ。苦しゅうないぞ俺。

あれからどれぐらいたったかな?

流石に1年は経っとらんだろうけど。

近頃日にちを数えるのが億劫になってしまってのう…。

まあ以外と順調に過ごせてるんで問題無いですがねフハハハ!


お目当ての鉱石はいい感じにゲットし続けてる。

火山のやつにはたまーに赤い何か混ざってるんだけど、あれ混じってるのを食べると滋養強壮の力を感じる。

なんだか力がほんのちょっとだけ湧いてくるのだ。

あのトカゲどもの火を吐いたりするバイタルの強さは、こういう物が周りにあるせいなのかもな。

味はなんか、香ばしくなくなったせんべいに塩かけた感じだったけど。


一時期、目に見える範囲で回収できる鉱石が少なくなってしまったことに不安を覚えた俺は、敢えて採掘という手段に出た。


硬いのを掘れば鋏が多分、鍛えられるし、それでもダメなら水圧カッターも辞さなかった。

そのおかげか、鋏の方は多少頑丈になった気がするし、回数を重ねることで水の出力調整みたいのがちょっとできるようになった。

反動も前よりもほんの少しだけマシにはなって、すんごい調子が良い時なら2回は撃てるようになった。

そのあと前後不覚になるからやらんけど。


岩蛇や赤黒トカゲ以外にも変な奴らを見つけたりもした。

俺と同じぐらいでかいダンゴムシやら、鈍色のでかいカナブンみたいな奴とか、クチバシのついたコウモリとか、リアルで火のネズミとか。

ちなみにネズミのは…ハハッ!( 高音 )


取り敢えず命に関わるぐらい厄介な連中ではないので今んところは無視してるけどね。

どうでもいいけどあいつら何食って生きんてんだろうな。

鉱石なんぞ食らいまくってる甲殻類にこんなこと思う資格がないのは分かってるけどさ。


そして相変わらず好戦的な爬虫類どもだが、岩蛇はもうあんまり怖くない。

噛み付かれてももはや無傷。

そのまま鋏で捉えてゲロ掛けで命がフィニッシュ。

あれから火山の鉱石を食い続けたお陰で 、防御力が上がったのを実感した瞬間である。


赤黒トカゲ?あいつら最近俺を見かけると火の玉吐く回数増えてきたよ。

おかしーなー。ただ俺は、はぐれて一人ぼっちになったやつをこっそり『清掃』してるだけなんだけどなー。

いやね、まとめて一気に会いに来られるのって苦手だから必要なことだったんすよー。

決して訓練がてら、安全確保を兼ねて間引いてた訳じゃないんすよー。

だから、このつぶらで美しく澄んだ瞳の持ち主を目の敵にしない頂けませんかファッキントカゲさん達?


こういったちょっかいを自分から出していけるぐらいに、赤黒トカゲをあしらえるようになったのはなんだか感慨深いな。

少し前まで尻まくって逃げるしかなかったのにな。


あと、ちょろちょろ脱皮してたんだけど、甲殻の一部分だけ赤味が増えてきましたよ。

これが順調に火山で馴染んで生きてるって証拠だよ!


そういえば以前試せなかったバーベキューだが、機会が再び巡ってきたので再チャレンジしたんだけど、無事大失敗でした。

火加減の難しさやら変な匂いやらがついてダメ、みたいですね( 食い気味 )。

熱けりゃいいってもんじゃないってことなんすねぇ〜…。



というわけで食事事情はもっぱらキノコやら鉱石、謎の野菜やら新発見の黒豆やらに頼りきりである。

黒豆は見た目と違って酸味と辛味がいい感じに効いており、前世なら酒のつまみに良かったんじゃないかと思えるぐらいにはうまい。

火山で発見した新しい主食といっても過言ではないだろう。


酒、酒か……。

飲みたいけどいつになるかなぁ。

絶対文明圏にしかないよなアレ。

この姿じゃ美味しく文明人に頂かれたりする未来しか見えない。

手に入れるには相当な運か、荷物でも襲わなきゃ手に入らんだろう。

しかし襲うとなると人間であろうがなかろうが目をつけられて、とても愉快のなことにること請け合いだろう。


まあファンタジーな世界みたいだし、アルコールの入った食物とか自生してそうの気もするけど。

取り敢えず今悲観しても意味のない事だから、このことはあんまり考え過ぎないようにするのがベターだな。

ああ、それにしても、早く人間の食物が食いたいぜ!

料理が恋しい今日この頃。



さて、今日も今日とて日課の鉱石漁りをせんとお外にお出掛けである。

楽に島を渡れるぐらいに早く強くなりたいもんだなぁ。


おりょ?なんか海に向かってダイブするやつがいるな。

しかも、火山のネズミくんではないか。

彼らも海水浴するもんだなぁ。

まあ確かにあそこ暑いもんな。

そういう気分になっても仕方ないね。



一方俺は日課に向かった。

俺は火山に行かねばならぬ。

俺はただの甲殻類である。

訓練がてら、鉱石を掘って生きてきた。

けれども食欲に対しては人一倍敏感なのだ。

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