第4話
河原?と大きな木の下を往復をして約一週間。
なんと脱皮したんですよ。あの脱皮を!
なんかこう、ある日全身がムズムズかゆくなってきたんでいい加減ゴロゴロ転がってみようかと考えてたら突然バキッと腕から音がしたんですよ。
うわぁあぁああ!とか思ってるあいだにいつのまにか全身に亀裂がはいってそりゃもうビビりまくったよ。
しかし同時に気付いたわけだ。ひびの下から幾分か色の薄くなった自分の外殻があったのを。
これが噂の脱皮かあ、と感慨深くなりながら背中のヤドを残してキャストオフしたのであった。意外とすんなり。
脱ぎ終わったので後ろをみると、なんかちょっと怖い抜け殻が残ってた。そしてヤドはもちろん回収。なんか狭くなったな。
これ( 抜け殻 )どうすっかな…てかこれって食えるん?人間の基準で考えたらエビフライの尻尾と変わらんだろうが今は甲殻類である。共食いに入るんじゃ…いや、入らんよなこりゃ。だって自分のものだし。
というわけで食ってみた。
あぁ…なんか海老煎餅がすっげぇ懐かしく感じる。6倍ぐらい不味いくけど。たしかに風味はエビっぽいんだけど湿り気はあるわ硬いわよくわからん苦味やエグ味があるんだもん。よし、次からは食わん。
しかし海老煎餅か。3桁までいきそうな爺ちゃんが好物だったんだよな。俺が大食いなのも、平気で特盛牛丼を平らげるような爺ちゃんを見てきたのが一因だった。
人間だった頃を思い出すと、いまだにガラにもなくブルーになる。コミュニケーションにもだんだん飢えてきたし、新しい目標は会話できる相手を探すことにするか。
やっぱりひとりっきりは辛いわ。最初はだいじょぶだったけど俺は前衛系思考なので自分のメンタルポイントをそれほど過信していないからな。
それと飯の方も生きるためには多分不足はしなくなってきたことだし、出来ればもっと美味いもの見つけて食べていきたい。舌が満足すればメンタルにもいいだろうし。
というわけで探索範囲を広げたいわけだが、俺はまだまだ弱い。
各種水鉄砲は練習の甲斐あって、水面わ泳ぐ魚は一撃で倒せるようになったが、破壊力のはなしとなると岩に傷つけのがやっとだ。
鋏そのものの威力はそれより上ではあるが、やはり過信はできない。
あと遠出をするにあたり、いざとなったときになんでも胃袋に収められるように毒耐性を上げようとしてみた。最初は1upキノコを痺れながらも食ってたが、最近になってようやく3個までなら一気食いしても平気になった。
他にも適当に別のなんだかヤバそうなキノコをひたすら食ってみたら、目眩キノコと涙目キノコと激辛キノコに当たった( 直喩 )のでこいつらも今現在体に慣れさせようと頑張ってる。
ていうか脱皮してデカくなったから新しいヤドも探さなあかんな。
あと抜け殻見て気が付いたけど、俺ってばオウム貝みたいに生まれつき殻を背負って誕生したのだろうか?そしてなんか見た目がアレに似てた。某狩ゲーの全自動ミソ生成機に。
………だれかの頭蓋骨を背負うのは抵抗あるなぁ。しかもミソ持ちなら人間様も襲ってくるよね?うーん…会話相手は前世以上に慎重にするしかないね。仕方ないね…。
さて、そろそろ外殻も馴染んできたし外に行こう。まだまだクソザコだが今のところ修練を積めば強くなれると俺の肉体は示してくれるから、前向きに頑張ろう。
あとヤドになりそうやつと新しい食物を探す。会話相手?多分今あったら食われると思うんですけど( 名推理 )
あーあ、美味いもんだけくっちゃ寝するだけでお金くれる国ねーかなー。
〓〓〓
更に一ヶ月後。何回か脱皮を繰り返していたら木の下さんがパンパンになってしまった。某可能性の獣さんの格闘よろしく「ここから、出ていけぇ!」という想いを感じ取り始めたのでいい加減に出て行こうとおもう。
けっ!テメェの股なんか所詮は遊びで使ってやったんだよ!これで清々したぜ!もう誰かにオマタを軽々しく開くなよじゃあな!!
まあこんな具合の脳内になるぐらいのメンタルになってるがまだ大丈夫だと思いたい。思わせてくれよ…。
新しい住所は決めてある。水場が近くてちょっとだけで高所で石造りの家賃100%OFFな物件だ。
ていうか俺が半分作ったようなものだしな。適当な水場に近い岩場で食用鉱石を求めて掘ってたら、偶然ちょうど良さそうなスペースが埋まってたのだ。先住民( 甲殻類 )がいたのかね?
鋏とかで新しい住処を整えたり更に掘り進んだら食用の黒い石もゲットできた。やったぜ。
鋏を使い続けてたらほんの少しずつだけど丈夫になってるし、鉱石の摂取量が増えたおかげで俺のガワはちょっと硬くなった気がする。
黒い石をそれなりにに食べていたからか、脱皮したときの外殻がだんだんと黒さが増していた。
以上のことから多分だが、俺の強度は鉱石に依存するのだろう。目標の新しい項目に「すごい鉱石を食べりゅ!」を追加せねばいかんな。
ヤドについてだが、これが意外となんとかなった。
若干の遠出をするというリスクを冒して2回の空襲と1回の強襲( 謎爬虫類 )があって肝を冷やしたが、これは結局徒労に終わった。
なんとヤドも成長するのだ。脱皮を何度かやっている内に気付いたんだけどね。
しかも外殻と同様に鉱石に依存するらしく、だんだん黒色が増えてきているのだ。はぇ〜俺ってファンタジィ……
あと、完全な襲われ損というわけでもなかった。どうやら俺を襲ってくるやつは甲殻類が反撃するのに慣れていないっぽかったのだ。これなら最初のやつで生き残れたのもある程度納得できた。
しかしまあ、あいつら複数でやって来るみたいだからひたすら逃げるか隠れるか威嚇するか耐えるかしたほうが楽なのだ。
タイマンなら多分勝てるぐらいにはなってはいる。鋏、水鉄砲、毒霧、防御力などは以前よりも格段に性能が良くなっているものの、やはり2体以上を相手取るとなるとスキを晒すことが多くなってしまうのだ。
死にたくないからな。
毒キノコ由来の毒霧を当てれば楽勝ではあるが、弾数が少ないのでできれば撃ちたくない。
あのキノコは俺の体に慣れてきたと言えども、どうしてもドカ食いして体に溜め込むのはまだ危険なのだ。
だからいざという時の為の防御手段として温存したい。精神衛生的にもな。
俺の保身は完璧だ!
とにかくある程度の自衛力は得られた。というわけでもっと探索範囲を広げていきたいと思う。
さてボチボチいきましょうか。次の主目標は自己強化になるかな。
未だ自分の命は簡単に吹き飛ばされる質量なわけで。まあ当然美味いもんはできれば食いますよ?積極的にな。会話相手?いやぁ〜まだキツイっす( 切実 )
早く楽に生きていきたいもんだが、なかなかうまくいかないもんだ。ここは人間と同じだろうけど。
それにしても人間様に戻るのは夢のまた夢だねぇ…。そもそも叶う目が欠片もないんだけどね。
まだまだ自分のことだけでもいっぱいいっぱいですわ。
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