第2話
ギール街道には多くの店が立ち並んでいる。
殆どが服などを扱う店なので、一風変わった見た目の店が多い。
だがその中で、目立たず、ひっそりと佇んでいるレモーニという呉服店がある。
俺はそこの二階に部屋を借りて、ピアノ教室を開いている。
俺は呉服屋レモーニの扉を開けた。
店内には服を着たマネキン並んでる、壁には布地のロールが置かれている。
だがその置かれた商品を選んでいる客はいない。
木琴の様なベルが閑古鳥の店内に鳴り響いた。
「いらっしゃーい」
ゴトゴトと音がして、店主のドワーフが慌てて奥から出てきた。
ドワーフの格好は乱れていた。緑色の上着はヨレヨレになり、下はパンツが見えている。客がいないから寝ていたんだろう。
ドワーフはこちらを見て残念そうな顔をした。
「何だあんたかよ。久しぶりの客だと思ったのによう。紛らわしいなあ」
「ごめんねお客じゃなくて。でもそんな格好じゃ客も帰るんじゃない?」
「けっ、格好なんて人間が気にする事だよ。魔界じゃそんなの気にしねーの」
「あら私は気にするわよ?今時格好に気を使わない魔族なんていないわよ」
後ろにいたサキュバスさんが店に入りそう言うと、ドワーフは舌打ちをした。
「あーもう分かった。さっさと行け」
ドワーフはパンツの中から金の鍵を取り出し、嫌がらせの様にこちらに投げた。
「相変わらずそんな所から鍵出すのやめろよ」
俺はため息を吐き生温かい鍵をキャッチした。
サキュバスさんが小さく「キモい」と言ったのを聞き逃さなかった。
「大事な物は一番安全な場所に置くんだよ。さあお前らはもう行け。お客が来るから」
シッシッと追い払う様な仕草をするドワーフ。
サキュバスさんはそれを無視する様に「行きましょう」と言って、二階へ続く階段を登った。
ドワーフがお前も早く行けといった顔でこちらを見ている。
俺は小さく「分かった」と言って階段を登った。
登っている途中、店のベルが聞こえた気がした。
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