4th Album Welcome to sekai NO 尾張
Track-1 あら、T-Mass全国ツアーですってよ!おくさん!
まじでヤバイ事になった。
ボクらがT-Massとして出場するロックフェスティバル向陽ライオットまであと12日。メンバーと約束したスーパー名曲も出来上がってないし、正直ギターの練習もあんまりしていない。
大見栄きって優勝候補の女の子バンドに宣戦布告したのはいいものの、頭の中には相変わらずエッチな妄想しか浮かばない。
ヤバイヤバイヤバイ。タイムリミットは着々と近づいて、時間は刻々と流れていく。
これはとりあえず落ち着いて考えなければならない。ボクの自分の部屋の真ん中で自慰を始めるためにズボンに手を伸ばした。するとドアがノックされた。
「洋一、いるかー?」
ボクは舌打ちをひとつしてドアを振り返った。「ああ!いるよ!」ボクがドアに声を張り上げると一昨日から隣の部屋に住み着き始めた親戚のあにきが顔を出した。
「なんだよ、なんかよう?」ボクはオナニーを邪魔されたのですこしムカついた声であにきに訊ねた。するとあにきはいきなり本題を切り出した。
「おまえ、本番まであと10日ちょっとだろ?新曲は出来上がったのか?」
「ああ...その話ならもうウンザリだよ...」
散々食卓で話題に上がっている悩みを掘り起こされたボクは机のパソコンに手を伸ばしてため息をついた。「なぁ、それで考えたんだが」
あにきがボクの横に並んで話を続けた。
「おまえら明後日から春休みだろ?向陽ライオット前にちょっと腕試しをしてみないか、って思ってさ」
嫌な予感がした。「ま、いちおう聞いてみるけど」ボクは椅子を回してあにきに向き直った。よどんだ目の奥を少しだけ輝かせながらあにきはボクに告げた。
「T-Mass全国ライブ!名古屋、京都、大阪の主要都市を含めた全7ヶ所のライブハウスを1週間でまわるんだ!
名づけてT-Massライブツアー『THE LAST SEVENTH DAY'S』!!学生時代のコネでT-Massを招待してくれる会場をブッキングしたんだ。
どうだ、洋一。決戦前の事前試合だと思って俺の誘いを受けてみないか?yes かハイで答えて見ろよ!ホラホラホラ!!」
話の途中であにきは机の上のボクのパソコンを叩き始めた。グーグル検索で日本地図を開くとあにきはそのライブツアーで周るであろう都市を拡大ズームさせた。
ボクは呆気にとられてあにきの話を他人事のように感じていた。こんなに行動力があるのにどうして未だにあにきが無職童貞なのか、わからなかった。
「明日、学校でメンバーに話してみろよ。車、借りてきてやるからよ」
「ちょ、ちょっと待ってよあにき」
「なんだ?」
「色々ツッコミ所があるけどひとつだけ聞くわ。あんたも一緒についてくるつもり?」
「当たり前だろ」机に手をかけてあにきは部屋に貼ってあるポスターに目を移した。
「全国ツアーをするならバンドワゴンのドライバーとマネージャーが必要だろ?俺がそれをやってやるよ」
「そ、そうなんだ」ボクは困惑して言葉を見つける事が出来なかった。
「じゃ、俺ツアー前に勉強まとめてやんなきゃいけないから。部屋に戻るわ」
「あにき」
ドアに手をかけたあにきをボクは呼び止めた。
「どうしてボクらの為にそこまでしてくれるの?」
ドアを開けて振り返るとあにきは何かを言いかけて止め、ボクに向かって黄ばんだ歯を突き出して笑った。そして振り返って廊下の先に消えていった。
ドアが閉まるとボクはまたため息をついた。いきなり嵐のように物事が動いてボクらが組んでいるロックバンド、T-Massが全国ツアーをすることになった。
ボクはとりあえず気持ちを沈めるため、ズボンを降ろし、陰茎をさすり始めた。Tーれっくす全国ツアー編、ここに始まりますっ♪ 応援ヨロシク!
どぴゅ
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