第11話

 準決勝の闘いの終盤辺りから《デウス》が切れ始めて、怠さが俺を襲っていた。


 準決勝はなんとか勝ち、その後、足の傷の治療を済まし、俺は足早に控室へ行く。決勝戦はすぐに始まるので、このまま控室を使っていいとのことだった。


 ふらつく足で控室へ戻り、震える手で《デウス》を煙管パイプにセットする。


 火をつけて、パイプを口にくわえて、吸う。


 決勝を勝てば、俺は優勝し、優勝すれば、俺は最強に返り咲く。


 控室のモニターには俺の対戦相手を決める戦いが繰り広げられていた。


 近づく決勝。早鐘を打つ心臓。


 緊張して、緊張して。


 その緊張は《デウス》の摂取を進ませる。一回吸うだけでは物足りず、何度も何度も俺はパイプで《デウス》を吸う。


 《デウス》を一袋、空にしたころだった。


『準決勝が終了しました。決勝戦は戌井涼梧さんと武塔むとう李天りてんさんにより行われます。両者は速やかに準備してください。準備ができ次第、決勝戦を行います』 


 武塔李天。生徒会役員の高等部三年生。剣術科の人間で七尺ほどの大太刀を使うことで有名だ。生徒会の役員というのは原則、実力者でなくてはなれない決まりだ。俺も何度か役員にならないかという勧誘を受けたことがある。まあ、何が言いたいかというと、武塔李天は強いということだ。一学期末実技試験では、俺が二回戦で負けたにもかかわらず、こいつは三位という好成績を収めている。


 しかし!


 今の俺に勝てる者などいない。


《デウス》を吸って気分は爽快。


 神が如き俺の存在。神が如き強さを感じる。俺は神だ。神様だ。神が負ける道理なんてどこにもない。


「くくっ」


 楽勝が予想できて、笑いが出る。負ける未来はまったく見えない。見えるのは勝つ未来。表彰台の一番高い所で、やっぱり最強は最強だったと持て囃される未来。それしか見えない。


 さあ行こう。


 栄光への第一歩を踏み出そう!



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