第7話

 部屋に戻って、シャワーを浴びて、さっぱりしたところで俺は先ほど五十海から貰ったお香《デウス》を試してみることにする。


 適当な小皿を持ってきて、そこへひとつまみの葉片を盛る。マッチを擦って火を出して、その火を葉片につける。


 たちまち煙がもくりと上がる。


 手で煽って、その煙を吸い込むようにして香りを味わってみる。


 おばあちゃんちの匂い。香りとしてはそんな感じだ。


 ただ、確かに五十海の言うように気分が落ち着く。


 煙が鼻腔を通して体内に入ると、突然に頭の中がスッキリして、身体が浮くような感覚に陥る。


 幸せを実感する。幸せすぎて、幸せすぎる。底のない幸福感。天井のない幸福感。


 頭の中から何かが分泌されていると俺は実感する。得体の知れない力が全身を駆け巡り、内から秘めたる力が飛び出して、神様にでもなった感覚になる。いや、俺は神だ。


 これなら、サマーコンペティション、俺は優勝間違いない。


《デウス》なんておかしな名前だと思ったが、いいや、名に恥じぬ効き目。


 素晴らしい!


「くはっ」


 ベッドの上で大の字になって、俺は笑う。


 幸せすぎて、神すぎて、素晴らしくて最高で。笑っちまうぜ、まったく。


 耽っていく。溺れていく。


 耽溺する。


 幸福の、渦の中に飲み込まれていく。


 ああ、ほんと。


 幸せすぎてサイコーです。

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