その二

 前回、かなり引っ張ってしまったので、今回はいきなり手の内を明かす。


 物理法則に「右ねじの法則」というのがある。


 以下、ウィキペディア風に解説する。

 導電体(電線と考えて下さい)の中を電流が流れる時、その導電体がねじのように回転した形状になっていると、右ねじの回転方向に磁場が生じる。

 まだ分かりにくい人は、右手を準備して頂きたい。

 右の掌を下にむけて手を軽く握り、親指だけ左方向に伸ばす。電流が右手の人差し指の付け根から指先の方向に回転しながら流れると、親指の付け根から指先の方向に磁場が発生する。これを「右ねじの法則」という。「右手の法則」とも呼ばれる。

 この状態で、逆に電流が右手の人差し指の指先から付け根の方向に回転しながら流れると、今度は親指の指先から付け根の方向に磁場が発生する。(向きが逆になる)


 さて、この時点で「だからどうした。それって電気の話だよね。魔法と違うよね」となっている方もいるはずだと思う。なので、更に話は飛躍する。


 人体内部には微弱な電流が流れている。神経細胞や筋繊維では、それが伝達に使われている。これならば、ぎりぎり高校の生物で習う知識だ。

 察しの良い方は「ははああん」と思ったであろうが、要するにこの微弱電流が流れる方向が、前述の右ねじ方向であれば、磁場が外向きに発生することになる。例えば脳内のシナプス伝達が、頭蓋骨内で後方から前方に向かう右ねじの形状になっていれば、額あたりから磁場が前方に向かって放射されることになる。

 従って、影響力はともかく、手や足を使わない状態でも磁場が物理的な作用を及ぼす可能性はあるわけだ。


 は?

 シナプス伝達は神経伝達物質の分泌によるものだから、いったんそこで切れるじゃないか、ですか?


 そのぐらい見越しておかないと、こんなことは言えない。

 シナプスにおける神経伝達物質の分泌による伝達方法は「化学シナプス」と呼ばれており、確かに受容体への伝達はカルシウムイオンを介在させたものになる。そこで別種の流れに切り替わることは仰る通りである。

 しかし、伝達方法には他に「電気シナプス」というものがあり、細胞同士を電流が直接結びつけている。人体内部でも網膜や筋繊維で見られ、化学シナプスよりも高速で伝達可能だ。特に無脊椎動物では一般的な伝達方法であるから、個蟲(ゾイド)であればそちらが最適化されている可能性がある。


 は?

 地球の、しかも人類じゃ駄目だろ、ですか?


 確かに脊椎動物の神経伝達は化学シナプスしかないのではないかと思われていたが、海馬あるいは大脳皮質の一部で重要な伝達手段として使われていることが分かっている。従って、まったく可能性がないわけではない。脳内がだめならば筋繊維を使えば良い。伝達経路をコイル状にしてしまえばよいわけであるから、ヨガかなんかでこう身体を捻り――


 は?

 だから、一般人じゃ駄目だろ、ですか?


 そのくらいは修行でなんとかして頂きたい。天元突破グレンラガンで螺旋がどうのこうの言っているし、夢枕獏もキマイラシリーズで、チャクラを回すと言っているではないか。だから無理ではないと――


 は?

 フィクションを例に出すな、ですか?


 なかなかしつこいな。分かったよ、それならば。


 次回に続きます。

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