生体装甲『神白狼』 補足説明 魔法が科学となる条件

阿井上夫

その一

 まず最初にお断りしておく。


 以下の論考は「生体装甲『神白狼』」本編の進行とは全く関係がない。設定として無関係ではないが、読まなくても本編を理解する上で支障は出ない。単に本編中で長々とこの話をしてしまうと、物語の流れを阻害しかねない上に、関心のない読者から非常に嫌がられることになるから、別に切り分けただけのことである。タイトル通り、補足説明だと思って頂ければよい。

 また、何でこんなことをしているかというと、魔法が存在することを前提としたファンタジー風の世界観を使っているにもかかわらず、SFだと言い切ってしまった以上、魔法を科学的に取り扱っておく必要があるだろうと考えたからである。

 加えて、レヴューで大変光栄なことに「ハードSF」とまで言われてしまった。筆者はジェイムス・P・ホーガン『星を継ぐ者』レベルでないとハードSFとは言わない人間であるから、未熟ではあってもそれなりの話は準備してみようと考えた次第である。


 前置きは以上、それではこれより疑似科学の世界に突入する。


 *


 呼び方は魔法でも超能力でも構わない。


 物理法則が支配する世界で、手や足といった物理的な手段を用いずに他の物質に対して働きかけを行うためには、別な物理的手段が必要となる。魔法や超能力の実在を前提とした世界観を無条件に受け容れてしまえば、それはそれでよい。それを否定するつもりはない。しかしながら仮にもSFと言い切ってしまうと、物理法則からは逃れ切れなくなると、筆者は自分自身に制限を設けている。

 では、手や足を使わずに物理的な作用を及ぼすためにはどうすればよいのか。そんなものがあったら、誰かが先に思いついて使っていそうだが、筆者は寡聞にして知らない。なので、同じアイデアが他で披露されていたとしても、パクリではないのでご了承頂きたいと、ここで筆者は予防線を張ってみる。

 また、海を割るような大規模なものは筆者の手にあまるので、なんだか作用しそうだな、言われてみればそんな感じがするわ、というレベルでよいことにする。

 さらに、説明するにしても、難解な科学考証で煙にまくほどの知識は筆者にはないから、できれば高校の物理レベルでなんとかならないかな、と考える。それ以上は自分でも説明しきれなくなるからだ。

 最後に、人体以外の補助装置が介在すると魔法という意味がなくなるので、特殊な装置や補助的な器具は一切用いないことにする。

 何だか更にハードルが上がって逃げ道がなくなっているが、気にしない。無茶もここまでくると立派である。おもわず自画自賛したくなる。大丈夫か、自分?


 条件を整理する。

 ①手や足は使わない。

 ②物理的に作用する。 

 ③高校で勉強する範囲内である。

 ④特殊な装置を用いない。

 以上の四点を満たすものを考える。

 さて、そんな都合の良いものはあるか。


 それが、ある。

 

 ああ、言い切ってしまったよ。やべえよ。どうすんだよ。

 自分の中でいろいろな声がするが、それも気にしない。だって、あるもん。嘘じゃないもん。

 ここまで引っ張ると、なんとなく不快感を覚える読者がいるかもしれないが、こんな美味しい話は簡単には済ませたくないのが人情である。従って、さらに極道なことをする。


 次回に続きます。

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