03
実際のところ、姉貴の指摘はこの上なく的確で、刑事課内でも同じように――つまり、白川公平は大上貴紀に都合よく使われるためにバディを組まされたのだと、十人に九人は考えているようだ。まあ、残りの一人は俺なわけだけれども。
「ちょっと白川ちゃ~ん、今日も大上に置いてかれたの~?」
なぜかたまにオネエ口調になる刑事課課長に今日も朝からちょっかいを出されて(ちなみに見た目は厳格な官僚そのものなんだが)、俺はといえば、すっかり心までやさぐれていた。
「……知りませんよ。俺のせいじゃありませんから」
もう五日間も大上さんの姿を見ていない。誰一人としてその行方を知らない。
「ミーティングにも顔を出さないなんて、あの人今までどうやって働いてきたんですか」
可愛さあまって憎さ百倍、カッコよさあまって恨めしさ倍率ドン、といったところだ。
「まーねー、彼が優秀だから許されてるってのは事実だけど。そこは相棒の白川ちゃんがイイ感じに手綱引っ張ってくれないとー」
「犬ですか! 狼じゃなくて犬!」
課長相手に思わずツッコミも冴え渡る。
「どっちかといえば白川ちゃんの方が犬っぽいよね。忠犬っていうか」
「なんスかそれ」
「鼻を効かせろってことよ。御主人の行く場所に先回りするくらいの気持ちでいないと、大上の相棒は務まんないわよ~」
カチーンときた。そもそもこんな新米を相棒にしたの、アンタが大上さんの人選を承認したからだろ!! ……とは、さすがに口にはできない。腐ってもオネエ口調でも、相手は課長だ。
「……わかりました。鼻効かせます。嗅ぎ回ってやりますよ、大上さんの周辺」
刑事課全体がざわついたような気がしたが、俺は気づかないフリをした。
こうなりゃやってやる。
なにがなんでも相棒と認めさせて、一匹狼の看板を下ろさせてやろうじゃないか。
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