51

『●●年八月二十日

 先生の甥っ子が館に来た。

 子供は嫌いだったが、先生の親類とあっては無粋にも出来ない。

 俺は外交用の笑顔を取り繕って対応した。

 内気な少年だった。少女だった方が個人的に嬉しかったが、仕方ない。

 少年は先生に似ていた。彼の子供ではないかと疑うほどだった。

 別に顔が、とか。

 行動が、とか。ではない。

 何となくオーラのようなものが似ていたのだ。

 オーラ。オカルトを忌み嫌う俺が使う単語としては可笑しいが、

 まあ、雰囲気のようなものだと理解してもらいたい。

 そのようなものが、どことなく先生に似ていたのだ。

 俺は、少年に外交用の顔を作って裏側では可愛そうと、同情していた。』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る