29 雪山で一人になって全裸になる男

 服を洗濯機に掛ける。終わったものは乾燥機で乾かし、カゴに入れる。これを後で先生の部屋や、私の部屋に持って行く。

 まるで主婦のようだ。しかし、掃除までは私の手に負えない。この大きさは、私一人では到底太刀打ち出来ない。なので、週末に業者さんに来てもらっている。先生は月末でもいいと言っていたが、私の意志で週末にしてもらった。月末では、この館の清潔さを保てない。

 洋館は少しでもほうっておけば廃墟となり幽霊の住まうような館になる。怪談や、ゴシックホラーじゃあるまいし、私はそんなの望まない。望んでなかった。今あるこの時間を屍のようにしたくなかった。私は私と認めがたい私であるのを認めつつも、私を継続する。

 弟子というより、家政婦のようなことをしているが、小説の方の仕事も行う。

 私は純文学系の作品を得意としていて、今回も書いているのは純文学の短編だ。短編はありがたい。短編は難しいと人は言うけれど、私にとっては簡単だ。面白くするのは、中編や長編よりも簡単だ。

 確かに、短編の作品を執筆するのはそれなりに難しい。鳥籠の中で空を飛べと言うのだから、無理もないだろう。でも、何度も執筆して技術を上げれば面白い短編を書くのは簡単だ。本来、長編で書くようなことを超圧縮して短編で書けば、濃厚な短編と褒められる。技術さえ身につければいい。中編や長編は途中でダレることもあるが、短編は短いが故にそれがない。

 短編と言っても原稿用紙の枚数は千差万別で、三十枚程度の量から百枚程の量まで頼まれる。全て、短編として頼まれる。ここまで違うと短編の括りは「何?」と聞きたくなるが、きっとどうでもいい理由が邪魔してるのだろう。

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