プロローグ

第1話 表通り

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 表通り。

 私がビルから見た円環状の高速道路は――ここでは、表通りと呼ばれている。

 比較的安全な場所。目につきやすいから、襲われにくい。襲おうとしても、襲った奴が何を手に入れたかも目につきやすいので、結局襲った方も襲われやすくなる。そのため、暗黙の了解で戦うべからざるの掟がある。(といっても、スリや尾行など隠れて何か企む者はいるが)

 私達は人がわんさかいる表通りを歩いていた。

 私達の小さな姿は一瞬にして混ざる。大勢の人々は多種多様で、私達のようにパーカーの者もいれば、白いローブを着て『ここは楽園である』と狂言を言ってたり、ガスマスクを被った緑色のコートの者だったり、たまに黄色い布を巻いた者だったり色々。

「依頼がなきゃ今日はヒマになるかな」

「寝床は?」

 私は聞いた。

「そんなのアタシ達が選べば、どこだって寝床になるよ」

 無茶言うな。

 人が襲いにくい、安全なとこって少ないんだぞ。

「にゃー」だが、ノヴァはおかまいなしにそんなことを言う。あと、何だ、にゃーって。

 荒れ果てた地下都市。

 もはや人類史のように治安や安全など言葉だけの形でしかなく、弱い者は喰われ、馬鹿な者は騙されの慈悲も人情もない世界である。

 そんな場所で、私達は情報屋なんてものをやっている。

 情報屋。

 この地下都市は文明が滅び、国家や民族で統一されなくなった。そのため、通貨もなくなり、原始時代のような有様だ。一応、通貨代わりにあの缶詰があるけど。ようするにそれって、物々交換。あの缶詰の食料がメジャーで、マイナーに機械の部品や武器、道具、などがある。

 そして、貴重品ではあるが最も扱いが難しい物々交換のものがある。

 それは動物の肉よりも腐りやすく、かつ昔の美術品のように真贋見も必要だ。だが、元では〇からでも始められる代物。

 情報。

 情報を、私達は物々交換の対象にしている。

 いや、正確には依頼された仕事を解決して情報を得るのだが――普通の情報屋とは違う。普通の情報屋は足で情報を獲得し、それを売るのだが。

「……おっ、ケータイ鳴ってるよ?」

 地下都市にはケータイがある。

 何故か、まだ使える。

 彼女が持っていたのは、小さな折りたたみ式のケータイ。出る。

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