エピローグ
【ふはははははは!!どうだこの城は!!小娘共も圧倒されておるではないか!!大枚はたいてリフォームした甲斐があったな!!】
結界を破って侵入してきたラフレシアンの様子を城の最上部から見下ろして愉快に笑う。
尤も、ラフレシアン達は全く臆してはいないが、ダイオキシンにはそう見えるのだろう。変な方向にポジティブなのだ。
幌幌町に出現させた城はダイオキシンの数ある別荘の内の一つ。それを改築し、機害獣格納庫やら制御室やら戦闘員宿泊施設やらを追加させたのだ。
「これのおかげで我が国の財政が圧迫されているんですがね。せめて別荘を10程手放していただけませんかねえ?」
眼鏡をクイッと持ち上げてダイオキシンに苦言を呈しているのは、カンキョハカーイ財務大臣、カローシ。一見OL風の出で立ちだが、立派な戦闘要員だ。因みに趣味はデパ地下での試食巡りだ。
【しみったれた事を言うでないわ。威風堂々たる事が総王の使命……】
心なしか声が低い。お金の管理はカローシに任せっきりなので、少しばかり心苦しく思っているのだ。
「総王サマはそれでいいんでしょうがね…少しでも節約をと頑張っている財務省の苦労も知って欲しいですね。私なんかストッキングは二枚を履き回しですし、スーツだって知人のおさがりで我慢していますし、眼鏡だって度が合わなくなったのに交換していないし、美容院だって年一回をギリキープする程切り詰めているんですがね」
【ち、ちゃんと財務省にも給料は払っているのだろう?何故お前だけが切り詰める必要が……】
「アホですか総王サマ。お金が無いと国が機能しないんですよ。国民が貧乏で内乱が起きたら、アンタ治められますか?司法局のアスベスト教皇も地球の僻地に飛ばしましたし、国軍元帥のガイチューン将軍も別口で戦っているんですよ?アンタひとりで治められるんですか?人望が全く無いアンタひとりで?」
酷い言われようだが、反論は不可能だ。何故なら全くその通りだからだ。
しかしダイオキシンは納得しない。自分はそんなに無能ではない。ちゃんと部下にも慕われている筈だ。給料だって遅れて支払った事は六回しかないし。
【このダイオキシンに人望が無いだと?無礼にも程があるぞカローシよ!!】
ビリビリと空震が起こる。この怒気こそがダイオキシン!!力だけでカンキョハカーイを総べて来ただけはあった。つまり人望はやはり無いのだ。
「はあ…ホントに気付いていないんですね。絶望的ですね。何なら国民全員にアンケートでも取ったらどうですか?自分を慕っているか?って。結果を見れば流石の総王サマも納得するんじゃないですか?」
カローシにしてみればいつもの嫌味程度の事だった。だが、今回のダイオキシンは違った。何故なら自分を慕ってわざわざ副王が応援に駆け付けて来たのだから!!
【よかろう!!そこまで言うのならその国民アンケート、今から実地しようではないか!!】
何をアホな事を言っているのだ?とカローシは思った。地球のフラワーパーク代理戦士と今から決着を付けようとしているんじゃないのか?そんな結果が解っているアンケートの為に最終決戦を放棄しようと言うのか?いや、そもそもそこまでは考えていないだろう。ただの感情で動く事こそ、慕われない理由の一つだと言うのに。
「本気でアホですか総王サマ?今どんな状況かお解りでしょうに?」
【小娘共が最上階まで上がってくるとでも?それこそ有り得ぬ】
不敵な笑みを浮かべるダイオキシンだが、そりゃそうだとカローシも頷く。しかし、この重大な場面に指揮官不在はいただけない。副王は確かに総王よりも人望が厚いが、指揮官タイプではない。フォローの方が得意だし、そのために副王に抜擢されたのだ。
「副王シーペスト様はアンタの御遊びの為に参上した訳じゃないのはご存知ですよね?アンタのアホみたいな我儘の為に指揮を取れと仰る?面と向かって言えますか?」
言葉にも遠慮が見られなくなったカローシを忌々しそうに睨むが、反論は不可能だ。何故ならその通りだからだ。
だが、自分は無能ではない。何かの為に講じた対策を持っている。それを使う。使う時が来たのだ!!
【フッフッフッ…案ずるな。ちゃんと策は用意してある。出でよ我が影武者よ!!】
ウイ~ン、とエレベーターが上がってきて、最上階に止まる。その中から出て来たのはバーコードハゲのグルグル眼鏡のチョビ髭の少しメタボなオッサンだった。
「…誰ですか?アレは?」
【このダイオキシンの影武者だ。さっき言っただろうが?出でよ、我が影武者よ、と】
確かに聞いた。我が影武者よ、と。だが、現れたのはダイオキシンとは全く似ていない中年の親父……
「…誰ですか?アレは?」
念の為にもう一度聞き返した。聞き間違いを疑ったのだ。
【だから、余の影武者だ】
聞き間違いじゃないのは確定した。今度はこのアホが影武者の意味を知っているか否か。
「全然似ていませんが?影武者の意味は解っていますよね?」
【そっくりではないか。声が】
知っていなかった。この戦争はカンキョハカーイの敗北で終わる。そう確信した一言を総王から戴いた。これで迷いは無い。心残りは、このアホに付き従っているカンキョハカーイの民、部下のこれからの事。せめて自分の部下だけでもどうにかしよう。そう心に誓ったカローシだった。
【では参ろうかカンキョハカーイ本国へ!!この総王の好感度調査…国民総アンケート実地の為に!!】
声高々に笑いながら最上階から消えていくダイオキシンを見送りながら深い溜息を付く。早めに見切りを付けて地球に実験の為にと言う名目で飛び出したフロン博士が羨ましい。
カローシは影武者に目を向ける。ジト目だったが。
「……あなた…前職は?」
「あ、はい。自宅警備員を三十年ほど…」
そう。とカローシは頷く。最早何もかもどうでも良かった。どうせ戦争は負けるのだから、と……
不快美少女戦隊ラフレシアン しをおう @swoow
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