白い迷惑!!
朝、登校して教室に向かう桜花だが、凄い人集りで自分のクラスに進めず、立ち往生していた。
(なんだこの男子の群れはよ?珊瑚や紅葉のクラスじゃねーし…)
珊瑚や紅葉ならばこの光景は珍しくは無い。まあ、一応奴等も仲間だ。アホな男子にワーキャー騒がれるのは許そう。
だが奴等以外なら許さん。どうせ程々の奴が メイクが決まって調子に乗っているだけだろうし。このアホ男全員自分の元に引っ越して貰うとしよう。
桜花はわざとらしく男子にぶつかり、弾き飛ばされる。
「きゃっ!!」
「あ、神宮寺さん!だ、大丈夫?」
慌てて桜花の周りに集まる男子生徒。
「だ、大丈夫…っ!」
桜花は全くダメージを受けていない足首を押さえた。
「保健室行った方がいいよ!!」
更にどよめく男子生徒。自分達が桜花の通行の邪魔をして、彼女に怪我を負わせたとして物凄い慌てているのだ。
(馬鹿な野郎共が!この私の前で群がっていた事を悔やむがいいぜ!!)
桜花は平気平気、と言いながらも立ち上がろうとはしなかった。結果その場にいた男子全員が桜花に視線を注ぐ。アホ男全員桜花の元に引越し完了した訳だ。有言実行の女、神宮寺 桜花であった。
その時、男子生徒が群がっていた教室から一人の美少女が現れる。
チラッと横目で見た桜花は驚いた。
ショートボブの髪、痩せ過ぎの感がある身体だが、それでいて大きい胸。
そしてその美少女は青白い顔で儚く笑う。
「保健室に行くのですか?私も一緒に連れて行って貰えませんか?これから頻繁に利用する事になりそうなので…あら?」
美少女も桜花を見て驚いた。
二人は初対面ではなかった。
先日行った温泉宿で、少しお話をした事があったのだ。
天乃橋 白雪……
白雪は幌幌高校に転校してきたのだ!!
「天乃橋…白雪さん?この学校に転校して来たの?」
「確か…神宮寺 桜花さん…はい。その節はお世話になりました」
白雪は桜花に深々と頭を下げて、右手を差し出した。
桜花はその右手を掴んだ。そして起き上がった桜花。そのまま白雪は桜花に肩を貸した。
「それでは保健室へ参りましょう…」
「あ、う、うん…」
身体が弱いであろう白雪の肩を借りるのは良心が咎めるが、他の生徒の手間、断る事は出来ない。断ればちょっと可愛いからって鼻に掛けやがって!とか影口を叩かれる恐れがあるからだ。尤も、肩を借りても、あんな儚げな転校生を顎で使いやがって!とか陰口を叩かれるかもしれないが。
「ご案内お願いします…」
「う、うん…じゃ、まず一階に降りて」
桜花と白雪は保健室へ向かった。
その後ろ姿を見ながらポワンとする男子生徒達。
「神宮寺さんと転校生の天乃橋さんの2ショット…メチャクチャ絵になるなぁ」
「神宮寺さんは非の打ちどころがない完璧な子だけど…天乃橋さんは儚げで守ってあげたくなるよなぁ…」
男子の評判は上々だった。少なくとも男子の中では陰口は聞かれなかった。
保健室に到着した二人。白雪は直ぐに保健室の中を見渡した。
「保健の先生はいないのですね」
「うん。校医はほとんど保健室に来ないの。近くで診療所やっているおじいちゃん先生よ。用事がある時に先生方に頼んで連絡して貰うのよ。軽い切り傷や捻挫とかなら保健委員の人がやってくれるんだけど、今は誰もいないから自分達でするしかないわね」
「そう…なんですか…」
ピクリとした桜花。
儚げな笑顔をした白雪だったが、ほんの一瞬…
顔の筋肉が柔らかくなった。言うなれば本物の笑顔だ。
ならば、今までの儚げな笑顔は演技と言う事になる。
(他の連中なら騙せても、私は無理だぞ天乃橋 白雪…オメー何者なんだ?)
しかし、何故偽っているのか、まだ解らない。尻尾を掴んで、後々追い込むか…
そう思った桜花は、とりあえず痛いフリをしていた足首に自分で湿布を貼った。
「あ、包帯を…」
白雪は自分のポーチから包帯を取り出し、桜花にテーピングのように施す。
(うめーなコイツ…毎日自分で包帯巻いてるような…)
感心した桜花。ますます白雪の素性が知りたくなってくる。
他人に興味を覚える事など無い桜花だが、何故か白雪には自分と同じ匂いを感じたのだ。
「天乃橋 白雪が転校してきたんだがよー。あいつホントはか弱く無いんじゃねーか?」
放課後、紅葉専用部室で一服をしていた桜花は、珊瑚と紅葉に白雪に対する不信感を話した。
「…ブツブツ…でも、白雪さんはあの時本当に倒れていたわ…ブツブツ…」
「ほら、やっぱり私達とかち合ったのら」
尤も、珊瑚と紅葉も白雪の素性など知った事ではない。桜花の疑念など、二人には関係ないのだ。逆に何をそこまで気にするのか解らない。何時もの桜花は気にしている振りをしていながら全く気にしないじゃないか。
「んー…何か…引っ掛かるんだよなあ…」
「どうでもいいけど、私は今日は本気で忙しいのら。出展する絵を描きあげなきゃならないのら。締切が近いのら」
「…ブツブツ…私も…ブツブツ…試合近いから練習しなきゃ…ブツブツ…私なんて練習しても勝てないクズだけど…ブツブツ…」
二人共用事がある様子。それも結構重要な用事が。
「そっか。じゃあ帰宅部の私はのんびり帰るとするか」
桜花は二人と別れて帰路についた。部活の邪魔はできない。こいつ等には珍しく好きで活動しているし。
そしてそれから一時間後の事……
グラアグアシャアアアアン!!!
一階事務室付近から、破壊音が聞こえた。
「…ブツブツ…桜花が帰った後だって言うのに…ブツブツ…私に死ねと言ってるんだわ…ブツブツ…」
「こっちの都合はお構い無しなのら!!メッタメタに壊して後悔させてやるのら!!」
珊瑚が体育館から駆け付け紅葉が美術倉庫から駆け付ける。
そして現場に駆け付けた二人は機害獣の頭部に乗っている敵を見て驚いた。
「あ、あれは…」
「温泉で逃げたアイツなのら!」
機害獣オスインの頭部に乗っているのは、温泉で一度対峙したカンキョハカーイ館館町支部長、スイギンだった。
そして、それだけではなかった。
事務室の近くにある保健室から、逃げ出して来た一人の美少女……
「天乃橋…白雪さん…?」
「まだ避難していない生徒がいたのら!」
二人はラフレシアンに変身し、白雪の前に立ち、スイギンを牽制する。
「…ブツブツ…このお坊さん、私を殺して供養するつもりなのかしら…ブツブツ…」
「坊主!今度は逃がさないのら!!クスクスクス…」
「ほう?お主等は…ピンクのラフレシアンの姿が見えぬな?死んだのかね?」
スイギンは怪しく笑う。これから起こるであろう出来事を想像して楽しんでいるのだ!!
突如現れたラフレシアンに驚く白雪。
「ラ、ラフレシアン…?」
「早くどっか行くのら。足手纏いなのら。」
派手に壊したい紅葉は、巻き添えを考えて避難を促した。
座ったまま、考えていた白雪…やがて、徐に立ち上がり、ポケットから変身携帯を取り出した。
「…え…?」
「ま、マジで?」
驚く二人に構わず変身携帯を頭上に掲げる。
「チェンジ!!ラフレシアン…!!」
眩い光が白雪を包み込む!!
光が晴れると、そこには温泉で出会った白いラフレシアンの姿が!!
「舞い散る雪…手のひら触れると溶けて無くなり儚くて…だけど!!寒いと垂れる鼻水が不快っ…!!美少女戦士!ラフレシアン ホワイトスノーブリザード!!」
投げキッスのポーズを作る白雪!これがホワイトスノーブリザードのキメポーズだ!!
「白いラフレシアン…」
「お前がホワイトスノーブリザードなのら?」
白雪は軽く頷き、スイギンを見据えた。
その横顔は仲間を得た心強さに満ち溢れ、自信が漲っていた。
「スイギン!今日こそ決着をつけるですの!!」
ピシッとオスインの頭部に乗っているスイギンに指差す白雪。
「身体…弱かったんじゃ…?」
「そ、そんな事より、白いラフレシアンなのら!!唯一正義で動いている白いラフレシアンなのら!!」
突然の仲間の出現で若干テンションが上がっている紅葉。自分達と全く違う志を持つ者に若干のリスペクトすらしていた。
「ホワイトスノーブリザードを仲間とするのかね?己の身が危うくなると言うのに、何て奇特な」
オスインは配管に手足をくっ付けたような形をしていた。
その配管から有毒な汚水を吐き出す。
それを避けるラフレシアン。ホワイトスノーブリザードも難なく躱した。
「…身体能力は私達と同じくらい…か…ブツブツ…これじゃ私は必要ないわね…ブツブツ…チェリーブロッサムやレッドリーブスも私なんかより新しいラフレシアンを仲間にした方がいいに決まっているものね…ブツブツ…」
相変わらず絶好調の珊瑚を余所に、白雪は従者を呼んだ。
「来るんですの!
保健室からノソノソと出て来るカエル…その大きさは、高さ20センチのワンホールケーキと同じ位だった。
棘紅郎と黒乃守は目を細めた。懐かしい仲間と再会して感慨深かったのだ。
「あれは不動王と言って、一年の9割は寝てるカエルだ。カアッ」
「ラフレシアンを見つけていたのか。久しぶりだな不動王」
2匹が不動王に近付く。そんな二匹を面倒くさそうに一瞥する不動王。
「……はぁあぁあ~…ああ~歩くの面倒い…館館町なら黙って門柱に乗っかって寝てれば良かったのに…ゲロゲロ」
相変わらずだな、と苦笑する二匹。しかし良かった。この調子だと自分達のように理不尽な目に遭っていないようだ。
そして珊瑚と紅葉は思い出す。温泉宿から帰路に付く時にペタペタ触ったカエルの置物…
あれがホワイトスノーブリザードの従者だったのだ!
「ラフレシアン!01!!」
変身携帯に数字を入力する白雪。不動王は口を大きく開けながらトランスフォームする。それはバズーカのような形となる。
「これがホワイトスノーブリザードの必殺技、ビームキャノンですの!!」
ホワイトスノーブリザードの必殺技は広範囲にダメージを与える飛び道具だったのだ!!
「凄い武器…ブツブツ…私のモーニングスターなんて、あれに比べたらウンコね…いえ、ウンコに申し訳がないわ…ブツブツ…」
棘紅郎がモーニングスターにトランスフォームする。
「正義の為に戦ってるラフレシアンと共闘なんて、なかなか面白そうなのら~クスクスクス…」
黒乃守はクロスボウにトランスフォームする。
「いくですの!!」
「……ええ……」
「メッタメタに壊してやるのら~…クスクスクス…」
珊瑚が突っ込んで行き、紅葉は援護。そして白雪はその圧倒的な火力で後方支援のために控える。
完璧なフォーメーションだった。これで負ける筈が無い。
だが、そんな数の上でも不利な状況でも、スイギンは不敵に笑った!!
「ったく一回帰ったっつーのに…面倒くせーなぁ…まあ金の為だしな…」
桜花は既に自宅でまったりモードだったが仕方なしに再び学校に戻った。
珊瑚と紅葉が学校に残っている事から自分の出番は無いとは思ったが、出勤しないとお金が貰えないのでは?と思い至った為である。
そして校舎にたどり着いた桜花はカンキョハカーイが壊したであろう個所を探す。壊されているのは、一階事務室だった。簡単に見つかった。
その惨状を遠巻きに生徒が見ている。
「ここじゃ変身は無理だな…コソコソ校内に入って…お!」
裏側の焼却炉には誰も居ない筈な事に気がついた桜花。コソコソと焼却炉に回る。
「思った通りだぜ」
桜花はコソコソと校内に侵入し、破壊された一階事務室に向かった。
「事務室だけじゃねー。トイレやら靴箱やらぶっ壊されてやがるな」
外からは解らなかったが、校内は何か大きな火薬で破壊されたように、アチコチに大きな穴が開いている。
「ん?珊瑚!紅葉!」
床に目を向けた桜が驚愕した。
グレートバリアリーフとレッドリーブスが床に伏して、気を失っていたのだ!!
「マジかよ!?」
駆け寄る桜花!!まさか二人がやられるとは夢にも思わなかったのだ!!
「珊瑚!紅葉!やられちまったのか!?」
揺さぶると、二人共目を覚ました。しかし痛みからか、顔をしかめている。
「…ブツブツ…また死ねなかった…ブツブツ…」
「あのヤロー…ふざけるななのら~…」
上体を起こした二人を見て安堵した桜花。その時、事務室から声が聞こえた。
桜花は瓦礫越しに事務室を見た。
そこには温泉宿で出くわしたカンキョハカーイのハゲが白雪の胸ぐらを掴み、嫌らしく笑っている姿があった。
「何だアイツ?一般人を巻き添えにしても構わないクチか?」
まあ、それは桜花もだが、一応そこには気を遣っている。下手に巻き込んで死んでしまったら流石に目覚めが悪いだろうと思うからだ。
「フハハ!やはり貴様は疫病神よの!自責の念に駆られて変身を解いてしまったか!!」
「くっ…くくっ…」
建物が崩れる音でよく聞こえないが、白雪が泣いているのは確認できた。
「ち…!!面倒くせーな!!」
ハゲが少女をいじめている画はどう見てもいい気分じゃない。自分がいじめるのは構わないけど。
「だあらっしゃああああああああああ!!」
桜花は突っ込んで行き、スイギンに延髄切りを喰らわす。
「うごおっ!?」
完全に虚を突かれて白雪を離した。
そして桜花は白雪の前に飛び込んだ。
「神宮寺……さん?」
白雪は目に涙を溜めて、微かに震えていた。よほど怖かったのだろうと桜花は思った。
なあんか…こういうのムカつくなあ…
自然に奥歯をギリリと噛み締めながら、桜花は白雪を鋭い眼光で睨み付けた。
「テメー今から見る事は絶対誰にも言うなよ!!」
「え…?ど、どういう事……?というか、テメーって言った今?」
キョどる白雪を無視して桜花が吼える!!
「久しぶりだなハゲ!!ここからはテメェの地獄の一本道だぜクズ!!」
ポケットから変身携帯を取り、目の前に掲げ、構えた。
「チェインジイィ!!ラフレシアンンン!!」
桜花に眩い光が降り注ぐ!それを茫然と眺めていた白雪。やがて声にならない声を出す。
「神宮寺さん…あなた…ラフレシアンなの!?」
ピンクの魔法少女のコスを身に纏った桜花。白雪の問いに答える。
「その通りだ!私は…咲き誇る桜…目にも艶やか心も豊か…だけど!!湧いて出て来る毛虫が不快ぃ…!!美少女戦士!ラフレシアン チェリーブロッサムだ!!」
例のキメポーズを白雪に見せつける!!後で思い返したら恥ずかしくて死んじゃいたくなるだろうが。
「ほぉ?ピンクのラフレシアン…お主、なかなかの強者のようじゃなぁ…」
スイギンはオスインの頭部に飛び乗った。
「小手調べじゃ!噴射せぇオスイン!」
――オスイィィィン~!
配管から有害汚水を噴射するオスイン。
「んなモン喰らうかハゲ!」
桜花はオスインの顎に当たる部分に膝をかち上げた。
――オスインンンン!?
オスインはひっくり返ってしまった。それに追撃する桜花。ボッコボコに拳を振るう様は、さながら修羅のようだった。
結構ぶん殴って少しは満足したのか、桜花は後方に飛び跳ねて白雪の前に守るように立った。
「す、凄い…わ…私ももう一度…」
一度折れた心が桜花の活躍とその背中を目の当たりにして甦る!白雪は再び変身携帯を掲げ、変身した!!
「舞い散る雪…手のひら触れると溶けて無くなり儚くて……だけど!!寒いと垂れる鼻水が不快っ…!! 美少女戦士!ラフレシアン ホワイトスノーブリザード!!」
「なに!?オメーラフレシアンだったの!?」
面食らう桜花。だが、やっぱりな、と何となく思った。白雪はゆっくり頷き、力強く言い切る。
「一人より二人…!!共に行くですのチェリーブロッサム!!」
先ほど使用した不動王のトランスフォームしたビームキャノンを構える白雪。
「へっ!なかなかのモン持ってんじゃねぇかよ!ツチノコ、01だ!!」
雷太夫は硬鞭にトランスフォームし、桜花はそれを構えた。
「い、いけないチェリーブロッサム……」
「そ、そいつはヤバいのら…」
ボロボロになった珊瑚と紅葉が、事務室にヨロヨロと駆け付けた。
「お前等大丈夫か?ヤバいってもたかがハゲ。すぐ終わるぜ!」
桜花はオスインに向かって突っ込んだ。
「違うチェリーブロッサム…そうじゃない…」
「ヤバいのはホワイトスノーブリザードなのら!」
「は?どうゆう…!」
桜花はギョッとした!!
白雪の発射したビームキャノンが桜花に向かって放射されたのだ!!
「うわあああああああああああ!?」
間一髪!ギリギリ躱す!!
「チェリーブロッサム!私が援護するですの!!」
白雪はビームキャノンを乱射した。
その全てが桜花に向かっていた!!
「のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
桜花は辛うじて全て躱した。桜花の反射神経でなければ直撃していたビームもあった。実際掠って少し焦げている個所が数か所ある。
「テメー!アブネーじゃねえかコラぁ!!」
白雪に向かっていきり立つ桜花。無理も無い。直撃したら冗談抜きで死んじゃうのだ。このイタコスと悪臭を身に纏ったまま。
「ホワイトスノーブリザードは…私達と違い、純粋に正義で動いているけど…」
「迷惑な程ドジっコなのら!!」
迷惑な程ドジっコ?
桜花が呆けていると、「きゃん!」と、何も無いところで転び、その反動でビームキャノンのトリガーを引く。
当然乱射されるビーム!!
「うわあああああああああああ!?バカかテメー!!」
桜花がビームを躱すも、ビームは校内に被弾し、校内を破壊する!!
「解ったかラフレシアン。ホワイトスノーブリザードを味方にすると後悔すると言った意味を!!」
声高らかに笑うスイギン。桜花はげんなりしながら答える。
「身に染みたぜオイ…」
このままじゃ二対一で戦っているようなものだ。
ハゲと機害獣程度ならともかく、悪気が無い足手纏いな味方がこれ程厄介だったとは…
桜花は珊瑚と紅葉を見る。
「グレートバリアリーフ!レッドリーブス!ホワイトスノーブリザードを羽交い締めにしてくれ!」
「…成程…一人の方がいいのね…」
「大人しくするのら!!」
「何をなさるんですの!?離しなさいですの!!」
羽交い締めにされ、暴れる白雪。
ちゃんと拘束されている。桜花は心から安堵した。そしてオスインの方を向く。
「うらああああああああああああああああ!!」
硬鞭をオスインに叩き込む!オスインは叩かれたところから内側に捲れた。
――オスインンンンン……!!
ドガアアアアアアアアン!!
オスインはいとも簡単に破壊された。
「何と!?聞きしに勝る破壊力よな…だが今日は様子見よ。また会おうチェリーブロッサム…!!」
スイギンはテレポートし、撤退した。
「ハゲこら逃げるな!!」
いきり立つ桜花!
「そうですの!!神妙になさいですの!!」
いきり立つ白雪!
桜花達は、白雪を白い目で見る。何言ってんだコイツ?とばかりに。
変身を解き、学校から速やかに撤収し、近くの廃墟で白雪を囲む桜花達。
さて、質問タイムだ。
「オメー身体弱いんじゃねーのか?」
「特に弱く有りませんわ」
「…ブツブツ…顔色が悪いのは…ブツブツ…」
「よく転んで怪我をするから、血を流して貧血気味ですの」
「何で転校してきたのら?」
「幌幌町におじさんが病院を開業してますの。怪我もすぐ診て貰えますの」
「何で大人しく振る舞ってんだよ?」
「私が動けば、何故か周りの方々が怪我をしますの。動かなければ誰も被害に遭わないですの」
「…ブツブツ…なぜ話し方を変えてるの?」
「普段のこの喋りだと、とても病気がちには見えませんからね」
「何故ラフレシアンをやっているのら?」
「勿論!カンキョハカーイを倒す為ですの!」
志は立派過ぎる程立派だが、迷惑な程ドジっコの白雪…しかも、悪気が全く無いのが、かなりキツい。
どうする?と顔を見合わせる桜花達の手をそっと握る白雪。そしてニコッと笑う。
「何にせよ、私達は秘密を共有している仲間ですの!一緒に悪を倒すために頑張りましょう!!」
桜花達は返事に困った。
こいつを仲間にしたら、いつか自分の命がヤバいのでは…不安しか感じなかったからだ。
城にテレポートして帰還したスイギン。早速総王ダイオキシンに謁見する。
【スイギンよ。貴様までラフレシアンに敗れたと言うのか?】
「先ずは小手調べにて候…これできゃつ等の力は把握致しました故…なかなか面白い小娘達で愉快愉快!ハァッハッハッハッ!!」
スイギンは高らかに笑う。余裕の高笑い。何せ向こうには疫病神が憑いているのだから。
「ダイオキシン様……お仕置きはありませんのん?」
一応逃げ帰った事実はある。なのでカドミウムはダイオキシンの耳元でコッソリと聞く。
【…館館町支部からかなりの活動資金を貰ったからなぁ…お仕置きなんか出来ぬわ……】
悪の総王、ダイオキシンは活動資金でお仕置きをやめる程切羽詰まった状況なのだ。
【…まぁ良い。この次は確実に仕留めよ!!】
ダイオキシンはこう言うのが精一杯なのだ。
金が無いと辛い。本当に辛い。ダイオキシンは内職でも始めようか、悩んでいた。
「ああ、ダイオキシン様。館館町支部は畳んでしまった故、ストックしている機害獣やその他諸々、全て幌幌町に寄贈致します故」
深々と頭を下げるスイギンに、自分が頭を下げたい気持ちでいっぱいになるダイオキシンであった……
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