第4話 日常;相乗:急騰
「なに言ってるんだきょうた、僕は今だって大真面目で言ってるんだよ。例えばあの、ガラクタの山の隙間から見える黒い脚。普段だったら白いソックスを履いているのに、今日のあれは一体なんだ?」
ぴくっ。アカリの身体が一度脈打つ。とても、とても嫌な予感がじんわりとした寒気となって俺の背中を
「そこに気付くとは、流石はトモノリね。」
―しまった、遅かった。
「これはニーハイよ。」
「ごくり…ニー…ハイ?」
「そうニーハイ。またの名を黒ニーソ。本当は長さによって細かく正式名称があるみたいだけど大事なのはそこじゃない。注目すべきはこの、圧倒的に足が細く見える収縮色である黒色ソックスを太ももまで上げると、その頂上がほんの少し食い込むことで僅かに生まれる曲線、そしてその上に覗く絶対領域の肌色とのコントラスト!」
「コントラスト…!」
また始まってしまった。アカリの『500年前の言葉講座』。
アカリはいつのまにか枯れ葉の中から抜け出し、器用に山の上に座ってバランスを取りながら、その中三にしては
嫌でも目が釘付けになる。
「更に今日私が身に着けているこのミニスカなら、もうひとつ説明しなければならないことがあるわね。」
「それは一体、なんなんだ?」
こうなってしまったふたりには、もう手が付けられない。
「こうして体育座りをっと、きゃっ!」
危ない!――機械の山が部分的に崩れ、その上に乗るアカリも転げ落ちそうになるが、
なんとか手足を引っ掛けて持ちこたえたらしい。
冷やっとさせるなよ、まったく。
「ふぅ…。すると、さあ、今あなたたちがいる場所からは、一体何が見えるのかしら?」
「ギリギリ見える…。ミニスカの…中が…!」
「そう、それで?」
「
…うむ、確かにスカートの中、下着の部分が絶妙に影で暗くてよく見えない。
「それが『はいてない』よ!!」」
「ホントに
「そんなことは知らないわ」
「!?一体全体どういう…」
「
「まるで量子だ」
「そう、この状態は―」
そう、倉城明香里、こいつは俺が500年前のファンタジーにのめりこむのを見て、負けじとその世界に飛び込んでいった。ただし、例のごとく異世界への
それら覚えたての言葉を使用方法が正しいんだか間違ってるんだかも俺ごときには判断することあたわないが、隙あらば会話の中にぶち込むものだから
最悪、そのワードがトモのセンサーにも引っかかる類のものだった場合、あとは言わずもがなだ。
俺は優しい微笑みを
――
「おーい、異世界オタクー起きろー」
「置いてけぼりにしてごめんよ、起きてきょーた」
左右から身体を揺すぶられて ―恐らく揺すり方の雑な左がアカリで、右がトモだと予想し― 俺は目を覚まし、よし、正解だ
「オタクじゃない、マニアだ。…俺はどのくらい寝て」
「そういえばアカリ、そのカーディガンこの間言っていた
「大正解よ。流石はトモ!」
もう一度眠ることにした―
「ああ!待ってごめん!冗談だよ、真面目な話があるから起きてくれよ」
「そうよ、だいたい昼寝する時間があるなら課題進めなさい」
「あいよ、起きますよ。」
外はまだ明るいから、長い時間寝ていたわけではなさそうだ。
「それで、大事な話ってなんだ?」
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