第11話

 光が庭に降りて来て言った。

光「朝倉さん、ここだったんですか。ボスがお会いになります。こちらへどうぞ」

洵「ボスの部屋?」

光「そうです」

洵「ボスかぁ~、楽しみだな」

光「会うのがですか?」

洵「ああ」

光「それはそれは、前向きになって下さって私も嬉しいですよ」


 洵は光に連れられ、ボス石廊崎悠吾いろうざきゆうごの部屋の前に着いた。光が重々しく見えるドアをノックした。

光「ボス、朝倉さんをお連れしました」

悠「入れ」

部屋の中から落ち着いた声が聞こえた。

洵は部屋に入って石廊崎悠吾の顔を見た。イメージしていたのとは全く違った。厳つい感じで成金の太った年配な人を想像していたが、石廊崎悠吾は彫刻のような端整な顔立ちでスラッとした体型には高級な趣味のいいスーツがよく似合っていた。どこから見ても品のある紳士にしか見えない。

洵(え…?)

光「どうしました?」

洵「あ、いや、ボスって言うからもっとイカツイ感じの人を想像してたから…」

光「想像と違いましたか?」

光はクスッと笑った。

洵「ああ、全然違った…こんなキレイな人だなんて…」

悠「それは嬉しいね。№1ギャンブラーの君に褒めて頂けるなんて光栄だよ」

悠吾は笑顔で答えた。

光「さぁ、朝食にしましょう。テラスに用意してあります」

悠「そうか、それじゃあ行こうか」

物腰柔らかく、とても自分の父親を、自分たち家族をあんな目に遭わせた張本人には見えなかった。

洵(本当にこの人が中国マフィアと仲が良いのか…?)

洵は1階のテラスに向かう廊下を歩きながら石廊崎悠吾の後ろ姿を見ていた。

 テラスに着いた。広い庭に面したデッキには日除けの大きなパラソルが置いてあり、まるでどこかのリゾートのようだ。テラスのテーブルには絹のテーブルクロスが掛けられ、ホテルの朝食かと思う程のメニューの多さの朝食がテーブルの上に所狭しと並んでいた。

悠「今日は天気も良いし、良い朝食日和だな。朝倉くん、本当に君にはずっと前から会いたかったんだよ。今日の日をどんなに待っていたことか」

キレイな彫刻のような顔立ちの笑顔で言われた。

洵「それは、こちらこそ光栄です」

少し声が震えた。

そこに何かを言いに部下の一人が石廊崎悠吾に近寄って来た。

悠「何?外の様子がおかしい?そんなものお前たちで何とかできるだろう、何の為にここにいるんだ?今、私たちは朝倉くんを招いて朝食を楽しもうとしているんだ。無粋だな。お前の目は節穴か。そんな目ならいらないだろう」

と悠吾はいきなり目の前のテーブルにあったナイフで部下の目を刺した。

部下「ギャアアアアアアア!!!!」

悠「早く連れて行け」

悠吾は何事もなかったかのように部下に言った。

目をやられた部下は他の部下二人がかりで運ばれて行った。

悠「朝倉くん、見苦しいところをお見せして申し訳なかった。さぁ続きを楽しもう」

またキレイな笑顔で言われた。

洵(前言撤回!やっぱり中国マフィアだ―――――!!!!親父、よく生きてたな…)

洵は急に怖くなってきた。

洵(春~、早く助けに来てよ~)

光「さぁ朝倉さん、遠慮せずに召し上がって下さい。飲み物は?コーヒー?紅茶?」

洵「あ~…えっと、それじゃコーヒーで…」

光「おい、コーヒーだ」

部下1「かしこまりました」

悠「どうした?朝倉くん、もしかしてさっきのが気になるのかな?」

洵「え!?あ、いや…」

光「無理もありませんよ、目の前で人が刺されるのを見るのは初めてなんですから」

光は笑顔で言った。

悠「ああ、そうか。ギャンブラーはギャンブルだけしてるものだからな」

ハハハハハと悠吾と光が笑い合っている。

洵(何これ、こんなのが日常なの!?あり得ないだろ!)

楽しそうな二人を横目に洵がハラハラしていると、庭の向こう側が少し騒がしい。

悠「何だ?なんだか騒がしいな。おい誰か見て来い」

部下2「はっ、只今」

しばらくして部下2が戻ってきた。

光「どうした?」

部下2「それが、ラジコンの飛行機を飛ばしていてここの庭に入ってしまったという者が来ているのですが…」

光「ラジコンの飛行機?」

部下2「探させてくれと言っています」

光「ボス、どうしましょう」

悠「ラジコンの飛行機くらい探させてやってもいいだろう。入れてやれ」

部下2「はっ」

悠「こんな日に限ってとんだ客だ。朝倉くん、申し訳ないね」

洵「いいえ、こんなこともあった方が楽しいですよ」

洵は顔だけ笑って言った。

悠「そうか?」

アハハハハハハハハ

また悠吾と光が笑いだした。

そこにラジコンの飛行機を探させてくれと言っている人物が部下たちに案内され庭の端から入ってきた。弓岡だ。

弓「すみません、あ、お食事中ですか!これは大変失礼しました。この辺りに落ちたはずなんですが…」

悠「おい、お前ら手伝ってやれ」

部下たち「はっ」

弓「本当に申し訳ありません、探してすぐにおいとましますので」

弓岡はニコニコ笑いながら言った。そして洵に目で合図した。洵は弓岡は初めて見る人間だが春樹の指示だとすぐにわかった。

洵「あ!あの、面白そうなんで俺も手伝っていいですか?」

悠「朝倉くんが?」

洵「はい、ダメでしょうか。ああ、食事中ですもんね、すみません」

悠「いや、朝倉くんが探したいのならどうぞ、一緒に探してやってくれ」

悠吾は機嫌良さそうに笑顔で言った。

洵「ありがとうございます、それじゃ一緒に探しましょう!」

弓岡と洵が庭の端の方へ行きかけたその時、屋敷の表と裏から春樹のSATチームが波が押し寄せるように入ってきた。

春「警察だ!石廊崎悠吾!室澤光!誘拐・傷害・脱税・詐欺の容疑で逮捕する!」

悠「何!?」

光「まさか!」

悠「つけられていたのか!?」

光「申し訳ありません!」

庭のあちこちで撃ち合いになっていたが、この時丸腰だった悠吾も光も春樹が指揮する日本の警察に捕えられた。

春「洵!」

洵「春~~~、怖かったよ~~~」

春「よく耐えたな」

洵「麗華は?」

春「さっきこっちが突入した時、向こうも一緒に突入して、無事保護した。洋一さんも無事だ」

洵「春…ありがとう…」

春「いや、礼を言わなきゃならないのは俺の方だ、ありがとう洵。お前のおかげで長年追ってた石廊崎を逮捕できた」

春樹はものすごく嬉しそうに言った。

洵「どういうこと?」

洵はキョトンとした表情で春樹を見た。



 緑川邸には全員が集まっていた。

麗華父「春樹くん!ありがとう!本当にありがとう!麗華が無事に帰って来られたのも君のおかげだよ」

春「いいえ、麗華の働きが素晴らしかったんですよ」

麗華父「麗華の働き?」

春「はい、表彰ものです」

春樹はニッコリ笑って麗華を見た。

麗「そうよ~、私がいなかったら洵も助かってなかったかもしれないわよ~」

麗華もニッコリ笑い返した。

 しかし、その後ろで洵が複雑な表情をしている。ポケットに手を突っ込んでふて腐れているようだ。

春「どうした洵。せっかく麗華も無事に戻って来られたのに、なんて顔してるんだ」

洵「春、麗華、ちょっといい?」

洵は2階を指差した。

洵と春樹の衣装部屋の真ん中にあるテーブルセットに3人で座った。

洵「さぁ春!石廊崎と俺とどう関係するのか話してもらおうかぁ!」

春「ん?」

洵「長年ってどういうことだよ?春の歳考えたってそんな長年とは思えないんだけど。だいたい春がインターポールって、もう何が何だか…」

春「実は、俺の父親は警視庁の警視総監なんだ」

洵「え」

麗「?」

春「俺は高校生の頃から親父を手伝っていて、学業と並行して警察で仕事してたんだ」

洵「…」

麗「?」

春「その頃世界を股に掛けた大悪党がいて、そいつは日本人だとICPOから連絡が入った」

洵「インターポールから…」

麗「?」

春「そしてそのまま俺は親父の命令でICPOに入ってその大悪党を追うことになった」

洵「その大悪党が石廊崎悠吾?」

春「そう。ヤツは金儲けの為なら手段を選ばない。勿論世界のカジノにも頻繁に出入りしていた」

洵「カジノ…」

春「そこで警察は考えた。日本にもカジノを造ればヤツは絶対に現れると。そこで極秘で『CLUB BLUE MOON』を造った」

洵「ええ!?あそこって非合法じゃなかったの!?」

春「まぁね。見て見ぬ振りの警察公認っていう、まぁちょっと複雑なとこだけど。あれを造るのにあたって協力してもらったのがコスモコーポレーションなんだ」

洵「高城さんだ…」

春「そこに腕の良いギャンブラーがいたら、ヤツは食いつくと警察は思った」

洵「もしかして俺の親父?」

春「そう。でもその前に支配人をおとりにしていた。支配人も元警察の人間なんだ」

洵「え?あれ、でも、支配人もあの世界で知らない者はいなかったっていう…」

春「そう、支配人のことは噂だけ流した。だから噂だけの腕の支配人じゃヤツは喰いつかなかった。そこにたまたま現れたのが洵のお父さん、洋一さんだ。それで洋一さんに事情を説明して協力してもらったんだ。まさか誘拐されるとは思ってなかった。洵の家族をあんな目に遭わせたのは警察の責任でもある。本当に申し訳ないことをしたと思ってるよ」

洵「…」

春「そんな時、偶然校内で出会ったのが学校の塀を乗り越えようとしてる洵だった。洵を調べて本当に驚いたよ、まさか洋一さんの息子が俺の目の前でこんなことしてるなんて、洵に会うまで洋一さんの家族のことは知らなかったんだ。俺達のせいだと思った…」

洵「…」

春「極秘で動いていたから真実は話せないし、なんとかして力になりたかった。それで洵をギャンブラーにするという案を思いついた」

洵「俺が使えないヤツだったらどうしたの?」

春「そこは何とでもなる。あそこは警察の店みたいなものだからね」

洵「はは…イカサマね…」

春「でもまた腕の良いギャンブラーが現れたとヤツ等に知られて誘拐されちゃこっちも堪らないからね、洵の安全を第一に考えて、麗華の家を使わせてもらうことになったんだ」

洵「麗華とはどうして出会ったの?」

麗「ペアじゃないと入れないパーティがあったんだけど、父が仕事で行けなくなって、父の代わりに父の親友の息子さんにエスコートしてもらうってことで紹介されたのよ」

春「それは表向き」

麗「え!?」

春「麗華のお父さんからは最初から麗華の護衛として雇われたんだ」

麗「どういうこと!?」

春「昨日使ったペンダント、お父さんから貰ったはずなのに俺が知ってたのはおかしいって麗華も言ってただろ?元々俺が発信機の付いたあのペンダントを会長に渡して麗華に肌身離さず持っててもらうようにお願いしたんだ」

洵「石廊崎を追いながら麗華の護衛してたの?」

春「緑川が捜査に協力するって条件で麗華の護衛を引き受けた。おかげで洵を守る場所ができた訳だけど」

洵「へぇぇ~…」

春「でも誤算だったのは洵が期待以上のギャンブラーだった。まさか№1になるなんて、正直思ってなかったんだ」

洵「はぁあ!?だってあの時俺のことすごい脅してたよな!?稼げ稼げって」

春「一般高校生を焚き付けなきゃならないんだ、あのくらい言わなきゃ本気にならないだろう」

洵「う…まぁ、そうだけど…」

春「でも昨日事件が発生した時、まさか石廊崎がらみだとは思ってなかったんだ」

洵「どうして?石廊崎を逮捕したくて『BLUE MOON』を造ったんでしょ?石廊崎が引っかかったって思っても…」

春「石廊崎は情報によると中国にいたはずなんだ」

洵「それが…」

春「日本にいた…。洵を手に入れたから急きょ帰って来たんだろう。実は洋一さんが失踪したのも石廊崎の犯行っていう確証がなくて、もしかしたら他のヤツが金儲けのためにさらったのか、又は本当に借金が返せなくて失踪したのか…警察でもずっと洋一さんの消息を追ってたんだ」

洵「…」

春「だから昨日あの屋敷に洋一さんがいると聞いて本当に驚いた」

洵「……………」

春「洵?」

洵「いや、あの…なんか、俺の想像を遥かに超えた話で…」

春「びっくりした?」

洵「びっくりしたどころじゃないよ!何だよ!春がなんだかすごい人だってことは分かったけど、何!?それじゃ俺は高校の時からずっと春に騙されてきたってこと!?」

春「ごめん。極秘事項だったんで言えなかった…」

洵「それで俺をギャンブラーにして、『BLUE MOON』に出入りさせて、石廊崎のエサにしたって!?」

春「それは違う!洵が5億の借金を返すには、俺にはこれしか方法が見つからなかったんだ」

洵「…」

春「警察で肩代わりするって言っても良かったんだ。警察のせいで洋一さんが誘拐されたんだから。でも警察が肩代わりすると言ったら事情も全て話さなきゃならなくなる。だから…」

洵「だからギャンブラーになって自分で稼げと…」

春「ああ」

洵「で?俺はあとどのくらい稼いだら完済できるの?」

春「もう終わってる」

洵「え?」

春「高利貸しだからな、逮捕した」

洵「じゃ、俺が今まで支配人に渡してきたのは…?」

春「洵の財産としてちゃんと残してあるよ」

洵「え?」

春「支配人が洵の名義で通帳を作ってる。今は支配人が持ってるよ」

洵「…………」

春「すごい金額の貯金になってるぞ」

洵「嘘…」

春「本当だ。もう学生とギャンブラーの二重生活もしなくていいんだ」

洵「…」

春「本当に今まで悪かった…」

洵「春…」

麗「何だかよく分かんないけど、良かったじゃない洵!今まで勝って来た分が全部自分のものになるんでしょ?これで親子3人暮らしていけるじゃない」

洵「え?」

麗「これからは普通の学生として真っ当な道を歩んでいけばいいんだもの。洵がギャンブラーになってなかったら私たち出会ってなかったのよ?私は洵に出会えて良かった。それに春樹に騙されてたのは洵だけじゃないわ、私もよ!」

麗華はニッコリ笑った。

洵「麗華…」

春「二人ともごめん。でも俺も、洵と友達になれて良かった」

洵「……あのさ、俺、ギャンブラーやめてもまたここに遊びに来てもいいのかな…」

麗「何言ってるの?ここは貴方の部屋じゃない。自分の部屋に来るのに誰の了承を得るっていうのよ」

洵「麗華」

春「俺もこれからも来るつもりだし」

洵「春は麗華の護衛なんだから出入りして当然でしょ」

春「そっか」

3人は笑い合った。

 洵が衣裳部屋に並んでいるスーツの列を眺めて言った。

洵「これ、こんなにあるのにもう使わないのかと思ったら、なんか淋しいな」

麗「あら、使えばいいじゃない」

洵「いつ?どこで?」

春「『BLUE MOON』で」

洵「はぁ!?だって今ギャンブルからは足洗えって…」

春「別に今までみたいに稼がなくていいんだから」

麗「そうよ、趣味でやればいいのよ」

洵「趣味!?」

春「『BLUE MOON』から№1が急にいなくなったら、それはそれで不自然だしな。やっぱり洵にはもう少しギャンブラーで頑張ってもらうしかないな」

洵「え…マジで?」

麗「何なら親子ギャンブラーでいくって手もあるわね」

春「それもいいな。あ、でも名前が違うからダメだ」

麗「それなら№1争いの伝説の二人っていうのはどう?」

春「それならいいね!あ、でもそれだとまた利河さんが俺も入れろとか言ってきそうだ」

麗「ああ~あり得るわね~、それでまた誠さんに色々言われるのは嫌だわ~」

洵「ねぇ、俺で遊んでる?」

麗「ええ、そうね」

春「皆『椿凌』のゲームが大好きだったんだ。いつも気持ち良く勝ってくれるからね」

洵「ねぇ、もしかして高城さんがゲームもしないのによくお店に顔出してたのって…」

春「そう、お前の勝ちっぷりを見に行くのが楽しかったから。俺たち、本当はみんな『椿凌』が好きだったんだ」

洵「マジですか…」

春「マジですよ」

洵「金持ちの娯楽って分かんない」

春「お前が必要以上に勝って№1になんかなるから悪いんだ」

洵「ああ!?何それ!?」

春樹と麗華が目の前で笑っている。

春「ギャンブル界のスターの宿命だと思え」

洵「分かった、もうしばらく『椿凌』でいることにするよ」


 青蘭学院大学構内。洵の姿を見つけ前方から桐野が全速力で走って来た。

桐「朝倉先輩~!あれからどうしたんですか!?大丈夫でしたか!?」

洵「ああ、この通りぴんぴんしてるよ。悪かったな心配掛けて」

桐「いいえ!だって、あんなヤツらに目の前で連れて行かれたんですよ!心配しない訳ないじゃないですか!良かった~、無事に帰って来れて~」

熱い桐野が目の前でわんわん泣きだした。

洵「ああ、ほら、もう、こうして元気に帰って来れたんだから泣くなよ」

桐「良かったです~、ほんとに良かったです~」

そこに貴士と七海が来た。

貴「どうしたんだ?」

七「何かあったの?」

洵「ああ、いや何でもないんだ、気にしないで」

洵は苦笑いで答えた。

貴「それよりさ、今朝ニュースでやってたけど、中国マフィアと絡んでた日本の悪~いヤツ、捕まったな!」

洵(ギクッ!)

七「そのニュース私も見たわ。住所わりと近かったわよね」

貴「そうそう。日本は安全だと思ってたけど気を付けないとダメだな」

七「ホント、こんな近くにそんな怖い人がいたなんて、日本も怖くなってきたわね~」

洵「…」

桐「もしかして!モゴモゴモゴ…」

桐野が言い掛けたところで洵に口を塞がれた。

貴・七「?」

洵「ハハ、何でもないんだ」

洵は笑って誤魔化した。

貴「そっか?」

洵が桐野に耳元でコソコソッと言った。

洵「おい、気を付けろよ」

桐「す、すいません…」


 コスモコーポレーション。社長室。

遥「ニュース見たよ」

ようはニコニコしている。

春「ありがとうございます。高城さんには本当にお世話になりました。高城さんのおかげでここまで来ることができました」

遥「いや、私は何もしてないよ。全部春樹と、洵の働きでしょう」

春「高城さん…」

遥「私は自分で楽しもうと思って『BLUE MOON』を造っただけ。別に春樹の為ではないからね」

遥はまたニコニコして言った。

春「高城さん、ありがとうございました」

春樹は頭を下げた。


夜、『CLUB BLUE MOON』。

桐「いらっしゃいませ椿様!」

凌「だから元気良すぎだろって…」

遥「やぁ椿さん、お久しぶりです」

凌「高城さん…、お久しぶりです」

遥「今夜も良いゲームを見せて下さいね」

凌「ええ」

凌はニッと笑った。

そこに利河瞬もやってきた。

瞬「椿凌!今夜こそ決着をつけようじゃないか」

凌「こんな処に来ていいんですか?」

瞬「ほら、あそこ」

瞬が指さした先に誠がいる。

凌「あれ?天宮さん?」

瞬「そう、今夜は公認なんだ」

瞬はすこぶる嬉しそうである。天宮の隣には少し落ち着かない様子の映美もいる。

凌は思わず苦笑してしまった。

春「おい、椿凌はそんな笑い方しないぞ、気を付けろ」

凌「分かってるよ」

今夜は珍しく春樹の隣に麗華もいる。

凌「今日は麗華も一緒なんだ?珍しいな」

麗「そう。椿凌が趣味で始めたゲームを見ようかな、と思って」

凌「趣味ね…」

凌はまた苦笑いした。

春「だからその顔やめろ」


今夜も椿凌のゲームが始まった。



~END~

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Double.F @CEPILLO

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ