第58話

 まもるくんの家に着いてインターホンを鳴らすと、すぐに開けてくれた。葵くんはすぐさま私の大荷物に視線をやるとギョッとしたような表情をしたあとにすぐ、バレたか、と言って笑った。

「やっぱり期待させちゃったみたいだね。まあとりあえず、どうぞ入ってよ」

 夜市で買ったものを二人で分け合って食べ、それらのゴミを片付けると、葵くんはフーっと息を吐いてから座卓の前に座っていた私の横に体育座りをした。

「改めまして実梨みのりちゃん、一日早いけど誕生日おめでとう。ささやかながら俺からのプレゼント、受け取ってくれるかな」

「嬉しい、ありがとう。何をくれるの?」

葵くんは立ち上がると三段カラーボックスの上段に掛けてあるカーテンを開け、奥から水色のラッピング袋を取り出して閉めた。

「はい、おめでとう」と私の前に差し出されたそれを立ち上がって受け取ると、私はリボンをほどいて開封した。

「ま、葵くん、これは…?」

私は予想外のプレゼントに目を丸くしてしまった。

「うん、そういうことだよ。さあ、早くそれに着替えてきてよ」

私は受け取ったばかりのそれとともに脱衣所にこもった。改めて眺めてみると、それはラベンダー色の生地に白いレースがあしらわれてフロントで蝶結びになっている、下着セットだった。これを選んだ葵くんの意図はすぐに分かったけれど、だけど、男性の葵くんがどこでどうやってこれを購入したのだろう?

 戸惑いながらもそれを身に着けて葵くんの前に出てくるとき、私は恥じらいで全身が真っ赤に火照ったような感覚だった。私が着替えている間に、葵くんはベッドの上にバスタオルを2枚広げていた。

「うん、思った通りだよ。似合っているよ、実梨ちゃん。さあ、こっちへおいで」

「って葵くん、これどうやって買ったの?」

「それは…実はこっそり、かなちゃんにお店のウェブストアのアカウントを作ってもらって、そこで買ったんだ。そのとき、先月の買い物で実梨ちゃんが買っていたサイズを奏ちゃんから教えてもらって選んだよ」

その事実を葵くんから聞いたとき、私は驚きを隠せなかった。まさか、奏ちゃんがこんな裏で葵くんのお願いに協力していたとは。そうしているうちに、葵くんも一枚、また一枚と衣服を脱ぎ始めた。ほぼ何も身に着けていない姿になった葵くんは私の手を引っ張って、ベッドに腰掛けさせられた。

「かくいう俺も遼弥りょうやと一緒にマツキヨで道具を選びに行って、最初は普通サイズを買っていたんだけど着けてみたらきつかったんだ。まさかの俺、大きいサイズが必要だったみたいで。だからお互い、はじめて、同士なんだし、そういうことだから痛いかもしれないけど、そんな俺で良かったら…どうかな?」

「うん、こちらこそ私で葵くんを満足させてあげられるかどうか自信ないけど、いいよ。葵くんのためなら私、何でもするわ」

 そうして葵くんは、じゃあ、と言って手を私の下半身にやって着けているものを脱がせはじめた。メガネをはずした葵くんの顔は今まで私に見せたことのないような表情をしていた。それから私を押し倒しながら耳元でささやいた。


「実梨ちゃん…いや、実梨…大丈夫だから、ね」

「うん…うっ、痛いっ!でも、葵のためなら、私も大丈夫だから…」

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