第32話
「きゃー、
奏ちゃんがパチパチ、と私に拍手してくれた。
「奏ちゃん、ありがとう。私、頑張るから!」
しかしここで私は気が付いた。そうこうしているうちに奏ちゃんのブラウニーも焼き上がって、冷めるのを待っていたのだけど、奏ちゃんもナッツを多めに散らしている部分があった。
「奏ちゃん、もしかして、それは
私の指摘に奏ちゃんは、急に赤面してしおらしくなった。
「いや、まだ好きとかじゃないけど、遼弥くんが喜んでくれたら私も嬉しいなって思って…」
そういう奏ちゃんは、全身から乙女オーラを出しまくっていた。
「奏ちゃん…それはもう十分、遼弥くんに恋してるじゃん!」
私に言われて、奏ちゃんは余計に赤面してしまった。
「え…でも、遼弥くんを好きとか意識したことないし…」
「遼弥くんにドキドキしたことある、奏ちゃん?」
私はなんだか奏ちゃんに尋問するような口調になってしまった。奏ちゃんはぼそっと言った。
「…ある、しかも何度も…」
今度は奏ちゃんのブラウニーが冷めながら私のほうも熱くなってしまった。
「ほらほら、それは遼弥くんへの恋心っていうんだよ、奏ちゃん!好きって感情だけが恋じゃないと私は思うよ。奏ちゃんが遼弥くんに対してドキドキしてるとか喜んでほしいとか、それも恋だって!」
「そうか、私、今まで好きってことが恋として重要だってこだわってたのかも…」
奏ちゃんはハッとすると、大きいハート型でブラウニーを抜いた。そして、大事そうにラッピングする奏ちゃんを、私は微笑ましく見ていた。
このあと、奏ちゃんと私はもう一つブラウニーを焼いて、小さいハート型で抜いたのを一つ一つラッピングした。それから、「明日はお互いに頑張ろうね」と奏ちゃんと激励しあって、私は奏ちゃんのマンションを後にした。しかし、とふと考えた。奏ちゃんと遼弥くんは両想いなのが確実だから、上手くいかないはずがない。でも、私は?きっと
まだ寒くても春めいてきた太陽の下を自転車で走りながら、私は自分に言い聞かせた。
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