第30話
私と
「葵くん、今日は来てくれてありがとう。私、すごく嬉しかったよ」
葵くんは照れた様子で反応した。
「ああ、俺も楽しかったよ、ありがとう」
「私、また葵くんと二人でこんな景色を見られたらいいなって思うよ。ううん、もっと他にもいろんなところに葵くんと行きたい!」
私の発言に、葵くんがどことなく身構えてしまっているのが伝わってきた。いよいよ、この一文を告げるときが来た。この瞬間のために、ここまでの全てがあったのだ。なんだか緊張してきた。
「葵くん、私は葵くんのことが恋愛感情として好きです。だから…私と真剣にお付き合いしてください!」
ああ、言っちゃった。もう元には戻れない。すごくドキドキしている。葵くんも顔が真っ赤に染まっている。私の想い、伝わったかな。
「
葵くんは静かに答えた。うなずく私を見ながら、葵くんは続けた。
「実梨ちゃんとこんな風にしていることは楽しいし、嬉しいよ。だけど、それは恋愛的なものとはまだ何か違う感情…な気がするんだ、俺の中では。それは、
葵くんの答えを聞き終えたときには、ゴンドラはもう頂上から下り始めていた。
「私は、いつでも待ってるよ。葵くんが私とその気になってくれる日が来ること。だから、急がなくてもいいから、ゆっくり答えを出してね。私の気持ちを受け止めてくれて、ありがとう」
葵くんにそう言い終えた私は、ショックというよりはむしろホッとした。ある種のモヤモヤから解放されたからだろうか。
それからの葵くんと私は、特に気まずい雰囲気になることもなく、ただとりとめのない話をしていたかと思えば突然静まり返ったり、またどちらからともなく話し始めたりという具合で地上に戻ってきた。そして、行って来た道を戻って、私は葵くんと別れた。楽しかったようで切なく、でもこれからまた葵くんの本命になれるように頑張ろう、という決意を、家路につきながら冬の夜空へ誓った。
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