第28話

 女子会といっても、行先は本町通り沿いにある消防署の隣のファミリーレストランだった。私とかなちゃん、真織まおりちゃんと穂香ほのかちゃんが隣になるように着席すると、すぐにメニューを全員が決め終わって注文した。通路側にいた奏ちゃんと穂香ちゃんがお冷を取りに行ってくれて、戻ってくると私は尋ねた。

「それで、クリスマスの作戦会議って、具体的に何を考えるの?」

すると、真織ちゃんが答えてくれた。

「もう、実梨みのりちゃんったら、当事者の割にはうかうかしてるなあ。まず、実梨ちゃんがまもるくんを好きっていうのは、私や穂香でもすでに分かってるよ。だけど、華英はなえちゃんも葵くんのことが好きなんだよね?つまり、実梨ちゃんには恋のライバルがいるから、葵くんとのクリスマスを奪い合うことになる。そこで、私たちが実梨ちゃんにどう協力してあげるかって話よ!」

「わあ、私の恋のためにみんながそこまでしてくれるなんて…」

私は嬉しいような恥ずかしいような気持ちになった。そこに、穂香ちゃんがこう話した。

「さっき、遼弥りょうやくんが慶太けいたくんをめっちゃ後押ししてたよね?あれ、慶太くんが華英ちゃんと成就したら実梨ちゃんの恋にとって有利になるってことで、遼弥くんは慶太くんを積極的に応援しているんだって。同時に実梨ちゃんも応援しつつ、ね」

そういうことだったのか、と私はうなずいた。

「あと、もう私から葵くんに直々にリサーチしてあるんだけど、25日のクリスマス当日は講義のない曜日だから、もう葵くんは昼過ぎには実家に帰省するんだって。でも24日はまだ葵くんには何も予定がないらしいから、チャンスは24日のイブだけよ、実梨ちゃん!」

「さすが奏ちゃん、よく分かってるなあ」と私が褒めると、奏ちゃんは優しくニヤッとして続けた。

 私の前に目玉焼きハンバーグが運ばれてきた。みんなの料理も揃って、いただきます、と言って食べ始めてから一息つくと突然、穂香ちゃんが何か閃いたような表情をした。

「穂香、どうしたの?」と真織ちゃんに聞かれた穂香ちゃんは口を開いた。

「いいこと、思いついたの!」

「何、何!?」と奏ちゃんと真織ちゃんが食いついた。

「先に華英ちゃんのほうにも予定を入れちゃいましょう!ということで、24日は慶太くんに華英ちゃんを強制連行してもらうわ。私と遼弥くんから、早く華英ちゃんとクリスマスの約束するように慶太くんの背中を強力に押しておくから!」

「ナイスアイデア、穂香!」と真織ちゃんに言われて、穂香ちゃんはちょっぴり威張った。

「ということで、実梨ちゃん、さっさと葵くんにラインで聞いてみて。24日は暇?って」

穂香ちゃんの勢いに奏ちゃんと真織ちゃんも加勢したのが私を押してきた。私はスマホを取り出し、LINEを開いて葵くんに24日の予定はどうか尋ねる文面を入力すると、送信した。

「今、私は慶太くんに、24日に華英ちゃんと約束できたかラインで聞いてるの。その返事も重要ね」

穂香ちゃんは言うと、ミートドリアを口に運んだ。するとすぐに、穂香ちゃんのスマホに通知が届いた。

「お、慶太くんだ。どれどれ…えー!?」と、穂香ちゃんが落胆してしまった。「何、穂香!?」と真織ちゃんに尋ねられて、穂香ちゃんは答えた。

「華英ちゃんにはもう予定があるから、24日は無理だったって。これってまさか、葵くんとデートの約束じゃないよね?」

「違うといいね、実梨ちゃん」と奏ちゃんが私を見つめてきた。そうしているうちに、今度は私のスマホが鳴った。私は恐る恐る、LINEを開いた。

<ごめん、先約があるんだ(汗)>

葵くんにも先約があった。ということは…。

「おーい、実梨ちゃん、どうしたの?」

奏ちゃんに肩を突かれた私は、先ほど葵くんからのLINEに書かれていたことをそのまま告げた。

「ああ、遅かったか…。今回は華英ちゃんに軍配が上がっちゃったね」

うなだれた真織ちゃんのメガネが顔からずれた。すると真織ちゃんは不意にシャキッとメガネを直すと、私にこう言った。

「ということは、実梨ちゃん!できるだけ早く、でも頃合いをちゃんと見計らって、葵くんに告白したほうがいいよ!」

「えー!?真織ちゃん、唐突だなあ」と驚く私に、真織ちゃんは続けて言った。

「だって考えてみてよ、葵くんと華英ちゃんが二人っきりで過ごすんだよ。それって告白するチャンスだらけじゃん!なら、告白は実梨ちゃんが先手を打っといたほうがいいって!」

「そ、そうか。私、このままじゃバレンタインまで告白しないところだったわ。うかうかしてる場合じゃないね。分かった、私、頑張ってみる!」

はっきりと私は宣言した。奏ちゃんが私の肩を叩いて激励してくれた。

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