第22話
雲一つない空には微かに冬の気配が漂っていて少し肌寒い中、私は待ち合わせ場所の正門に着いた。時間は9時52分、約束の10時には余裕だ。すると、ほどなくして
「
「そういう奏ちゃんもスペシャルじゃないの。その気になったの、奏ちゃん?」
私からの問いかけに、奏ちゃんは少し恥ずかしそうに答えてくれた。
「だって、ただ4人で一緒に回るんじゃなくて、実際の名目はダブルデートなんでしょ?」
分かっちゃったか、って表情に出した私を見て、奏ちゃんは続けた。
「分かるよ。だったら、私が気合入れてメイクしてたら
すると、
「い、いつの間に葵くんいたの!」
「奏ちゃんがダブルデート、って言ってたあたりから聞いてるよ。へえ、そういうことだったんだ」
心なしか、葵くんまで恥ずかしそうに見えた。
「あ、その、これはね、遼弥くんが奏ちゃんとデートするのに2人だと緊張するから、葵くんと私も一緒ならリラックスできるってことで…」
なぜか私はところどころ声をひっくり返しつつ、ダブルデートの口実を取り繕うとしてしまった。
「それもあるけど、実梨も葵とデートしたかったんだよな?」
最後にやって来た遼弥くんに、あっさり
「そんな…。
そう言うと、葵くんはまいったな、と笑った。思わず私は葵くんを持ち上げるように言った。
「いやいや、葵くんは十分に素敵ないい男だから。さあ、行こう?」
それから私たちはまず室内で開かれている各サークルの展示を見て回った。花道部の作品にうなり、動物をテーマにした美術部の作品に癒され、「仲間」がテーマの写真部の作品にほっこりした。そして文芸部の展示がされている教室に私たちは足を運んだ。無料で配布されていた部誌を受け取ったあと、私たちは一同して展示物を見るなり赤面した。部員たちが考えた、異性への「告白メール」の数々が展示されていて、中には返信がついている作品もあった。
「奏ちゃん、これ…可愛過ぎるね」と私が奏ちゃんに振ると、こう返してきた。
「うん、キュンキュンするけど、眩し過ぎて直視できないね…」
ふと葵くんを見ると、じっと作品たちを見ながら、だんだん顔が真っ赤になっていった。
「葵くん、なんか真剣に見てるけど、響くものがあったの?」
私が尋ねると、葵くんはハッとなって、視線をこっちに移した。
「ああ、上手く言えないけど、その…こういうの、青春って感じでいいなって」
「よし、俺も奏を今の数倍キュンキュンさせられるように頑張るぞ!」
遼弥くんが突然、意気込んで言ったので、奏ちゃんは両手で顔を覆ってしまった。
「もう、遼弥くんったらこんな公共の面前で…恥ずかしいよ…」
「ああ、ごめんごめん。でもまあ、今じゃないけどな。ここぞ!というときが来るのを楽しみにしてろよ。あ、でも実梨は急いだほうがいいぜ!なんてったって実梨には華英ちゃんという強力なライバルがいるんだからな!」
遼弥くんからの奏ちゃんへの語り掛けがいきなり私へのものになったので、私はドキッとした。顔を左上に向けると、同じくドキッとしてしまったらしい葵くんと視線が合った。恥ずかしくなって、互いにすぐに背けてしまった。
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