第九話 インタビューその三

(公式戦では、一方的な敗北の記録はありません)

 それはそうです。

 ただのプライベートな喧嘩ですから。

(相手は人間ですか?)

 普通の人間です。(笑)

(彼との痴話喧嘩とか?)

 ぜひ完敗したいものです。(笑)

 相手は別世界の魔物でもなければ、素敵な男性でもありません。

 普通の女の子でした。

 それなのに、私がどんな攻撃をしてもすべて弾き返されるのです。まったく話にもなりませんでした。

 最後には私だけが力尽きて、その場に這いつくばってしまいました。

(これ、記事にしても宜しいのですか)

 ああ、もちろんです。

 実は、彼女に完敗したことがとても爽快でした。

 プロレスの世界での不完全燃焼に悩んで、もやもやとしていた頭の中の霧が一気に吹き飛びました。

 こんな化け物は他にはいませんから、もう誰がきても最初から覚悟は決まっていました。

 まあ、アルテミス河合さんは似たようなものでしたけど。(笑)

(その方は今、何をされているのですか)

 田舎で、『公務員』と言っていいのかな、まあ、そんなことをやっていますよ。

 とても彼女らしい生き方ですが、ただ私も負けたままにしておくのは悔しいので、いつかは再試合しようと狙っています。

 しかし、プロレスラーと公務員がガチで勝負するのもねぇ。

 私もなんだか顔が知られてきましたし。

(正式に試合をされてはいかがですか)

 私のほうはそれでも支障がないのですが、相手は一般人ですから。

 その普通の生活を守ってあげないといけません。

 お嫁にいけなくなっても、私じゃあ責任が取れませんし。(苦笑)

 大学の同好会レベルのイベントならば、都合がよいのですけどね。(笑)


(後略)


 月刊格闘技通信一月号「美しすぎる女性格闘家の素顔 アマゾネス斎藤インタビュー」より抜粋

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