第五話 インタビューその二

(中略)

  

(大学在籍中にプロからのお誘いがあったそうですね)

 はい。私が大学生の頃にちょうど総合格闘技ブームがありまして、大学の同好会レベルでも仮設リングで興行するとお客さんが結構呼べました。今やプロでも青色吐息ですが。(笑)

 男性の試合がメインで、女性は明らかに『客寄せ』でしたね。学内興行だと規制も厳しくてとてもやりにくかったんですが、試合をする機会が与えられただけでもラッキーでした。

 たまに同じようにストレス溜めている女の子とあたると、それはもう燃えましたね。後でしこたま主催者から怒られるんですが、無茶やっている時はとても楽しかった。

 そんな『燃える試合』の一つを、プロレス業界の関係者が偶然見ていたのがきっかけでした。

(プロになって最初のうちは、かなりやりにくかったのではありませんか)

 あはは。(爆笑)

 それはもう大変でした。下積みから叩き上げられてきた『お姉様』の中に、大学生のひよっ子が横から放り込まれたのですから、周囲は全て『敵』でしたね。

 誰も何も教えてくれないものだから、試合で自分のペースがなかなか作れませんでした。それに、試合よりもリング外の心理戦がきつくて泣けましたね。

(現在、二十連勝中ですが)

 本人もなんだか実感がありません。対戦相手はみんな強敵ばかりでしたし、楽な試合はなかったと思います。

(ファンとしては危なない試合ばかりでした)

 ありがとうございます。確かに最近になって、「今まで積み上げてきた成果がやっと実を結んだ」と実感する機会がありまして、それからは自分でも動けていると思います。

 いえいえ、悟りを開いたとか、そんな大層な話じゃないんですよ。まあ、「昔からの懸案事項が一つ片付きかけている」と言ったほうが近いかな。

(プロになってからの対戦成績を拝見しますと、先程のお話にもありましたが最初の頃にいくつか負け試合があるのと、伝説となった前女王アルテミス河合との『AA頂上決戦』での壮絶な引き分け以外は、圧倒的な勝利というイメージしかありません)

 そうかなあ。毎回大変でしたよ。

(『人類史上最強の女性』と言われておりますね)

 とんでもない。

 私、まったく相手にもされずに敗れたことがあるんです。


 月刊格闘技通信一月号「美しすぎる女性格闘家の素顔 アマゾネス斎藤インタビュー」より抜粋

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