第五話 「決して押さないこと、です」
翌日の火曜日。
仙台駅東口からよろよろとまろび出た私は、学校に向かう途中で前方をふらふらと歩いていた加奈ちゃんに遭遇した。
「おはよう、加奈ちゃん……」
「あ、美代ちゃん、おはよ……」
二人とも足取りが重かった。学校までの通学路の長さが苦行に思える。夏休みで手荷物が軽かったのが、せめてもの救いだった。
「美代ちゃんも、きたの?」
「うん。加奈ちゃんもそうかあ。ということは、全員そうなのかなあ」
顔を見合わせて私たちは溜息をついた。
きた、といっても生理ではない。あれはまとめて来るものではない。私と加奈ちゃんは筋肉痛なのだ。
「うっ、きっついわぁ」
と言いながら、加奈ちゃんは眉をよせて、はあはあと息を吐きながら歩いていた。
あらぬ誤解を生みそうだから、それは電車の中ではやめたほうがいいと思う。それに、本当はそこまで大変じゃないよね。
そう思いはするものの、私も余裕はないのでツッコミは入れない。むしろ、付き合いの良いほうなので真似をしてみた。
女子高生が二人で「きつい、きつい」と悲鳴をあげながら、息を荒げて眉を寄せている。
おお、素晴らしい。
文字で想像するとなかなか淫靡な光景だ。文字フェチなら、これで軽くご飯が三杯食べられる。
実はそんなことでもやって気を紛らわせていないと、歩く気力が萎えるほどに辛いのだ。二人でとぼとぼ、はあはあとやっていると、今日も後方から声がやってきた。
「――ぉぉつ先にぃぃ――」
ドップラー理穂ちゃんだ。私たちの横を元気に自転車で駆け抜けていく。
どこまでも質実剛健な娘だと思う。
*
さて、話を昨日の続きに戻す。
(もしかしてこれ、美尻になるのかも――)
本筋から全然関係のない方向で私たちの心は沸き立っていたが、三笠先生はそんなこととは露知らずに話を続けた。
「西條さんは特に普段と違いはないように見えたけれども」
「はい。このぐらいであれば、家の中とさほど変わらないものですから」
時と場所を選ばないと間違いなく炎上する発言だったが、西條先輩では仕方ない。
「あら、そう。じゃあ、あまり体重をかけずに歩く癖がついているのね。ただ、行射の場合はそれだけでは十分ではありません。弓道では足腰は見過ごされがちですが、土台がしっかりしていない砲台は真っ直ぐ飛ばないものです」
三笠先生はにっこり笑って言った。
そこに加奈ちゃんが、右手を上げながら質問した。
「はい、はい、先生質問。内側にきゅっと伸ばすと言われても、いまいち実感がわきません」
「まあ、そうですね。じゃあ篠島さん、ちょっと前に出てちょうだい。そして皆さんに背中を向けて立ち、胴造りをしてもらえますか」
「えっ、私がですか」
「そうです」
発言した手前、嫌とは言えない加奈ちゃんはしぶしぶ前に出て、足を開いて立った。ハーフサイズのジャスがギリギリ膝上だったので、足の様子がよく分かる。
「よく見て頂きたいのですが、膝の裏側には窪んだところがあります。これを『ひかがみ』と呼びますが――篠島さん、ここを伸ばすような気持ちで立って頂けますか」
「うひょう――はいっ」
奇声は、先生の指が加奈ちゃんのひかがみを撫でたからだ。
加奈ちゃんが膝の裏を意識して伸ばすと、そのひかがみの筋肉がきゅっと引き締まる様子が分かった。
「このように意識していれば、おのずと足は射場の床を内側に引き付けることになります。皆さんも試してみてください」
先生の指示に従って、各々ひかがみの部分を意識して伸ばしてみた。
なるほど。確かにここを伸ばすと、足は内側に引っ張られる感じになる。
いや。それよりもなによりも、太ももとお尻がいい具合に緊張している。
うわ、これか!
つまりこれは、弓道をすると同時にヒップアップの鍛錬をしていることになりはすまいか。
そんなことを考えていると、左隣のほうから
「ふっふっふ――」
という怪しげな声が聞こえてきた。そっちに顔を向けると、早苗ちゃんがほくそ笑んでいる。
早苗ちゃんは絶対なんか企んでる。
多分、商売のネタになりそうだ、とかそんな感じのことを。
その後の練習中、私たちはひかがみを伸ばすことに意識を置いた。置きすぎて、的中のほうが散々な結果に終わった。
そして、さらに頑張りすぎたツケを翌日の朝に味わうことになったのだ。
*
弓道場に着いてみると、既に三笠先生が姿を見せていた。
三笠先生は、先日の大掃除で呪いの貼紙が見つかった『開けずの備品倉庫』から竹弓を三本(正しくは「
それを理穂ちゃんと早苗ちゃんが、興味津々、前のめりの姿勢で眺めていた。
「あの――」
加奈ちゃんが声をかけようとすると、理穂ちゃんが口に右手の人差し指をあてて制した。邪魔をするなということらしい。控室に手荷物を放り込むと、私たちも様子を見ることにした。
三笠先生はさっき取り出した竹弓を持ち上げると、末はずを弓張り板に押し当てた。弦を張るのだ。その場の全員が注視する中、先生はおかしなやり方を始めた。
弦の下側の輪を口に咥えると、左足のかかとより少し上のところに竹弓の下部分を引っ掛けた。そして、弓の握る部分からすこし上を左手で、握りの下のところを右手で抑えて、そのまま両腕で弓をゆっくりと押した。左足が固定されるので上体もかなり窮屈に曲がっているが、そのままの体勢を維持して口に咥えた弦を本はずにはめる。そして、右手をまた元の位置に戻して握ると、静かに弓を弓張り板から外した。そして、そのまま両手で静かに弓立に置く。
三笠先生は同じ動作を二回繰り返し、三本とも弦を張る。いずれもよく見ると、弓の上の部分が切れた弦で結ばれていた。
見慣れない光景に全員が呼吸を詰めていたようで、作業が終わると全員の口から息が漏れる。
「あ、ごめんなさい。集中していたので皆さんのこと失念していました」
三笠先生はにっこり笑う。そこに理穂ちゃんが代表して、全員の想いを代弁した。
「あの、先生。今の動作はなんでしょうか。私たちのやり方とはずいぶん違いましたが」
「そうね。じゃあ、できれば全員が揃ったところで説明しましょうか」
西條先輩とかおりちゃんはさほど間を置かずにやってきた。二人とも弓立に並んだ竹弓を見て驚く。
「これ、どうしたの」
西條先輩に質問されて、私が答えた。
「先生が倉庫から出されて、張られたんです」
「上が弦で縛ってあるけど」
「全員揃ったら説明して下さるっておっしゃってました」
「ふうん。なんか竹弓って風格あるよね」
西條先輩の言う通りだ。三本の竹弓は古ぼけて見えるけれど、なんだか『村の古老』といった雰囲気がある。それに比べると、私たちのグラスファイバー弓は『コンビニ前に屯するヤンキー』並に風格がない。なんだか並べるのも気が引けるので、みんな少し離れたところに自分の弓を置いていた。
「いやいや、そこまですごい弓ではないけれど――」
三笠先生は神棚に上げられたような扱いをされている竹弓を見て、苦笑しながら言った。
「まあ、なんとか形は保っているようだから、丁寧に作られたものではあるようね」
「どのぐらい前のものなのですか」
と西條先輩が質問する。
「そうねえ、製作年度はどこにも書かれていないけど、私が卒業した時にはなかったものだし、当時の師範がなくなったら竹弓は使われなくなったと聞いているから、二十五年ぐらい前かしら」
「えっ、そんな古いのに使えるんですか」
「無理でしょうね。弓の耐用年数は十年程度だと言われているし、それも丁寧に手入れをして使い込んだものであれば、という条件付きだから」
そう言いながら三笠先生はなんだか優しい目で弓を見つめた。
「どこまで最後のお勤めを果たせるのかしらね――」
全員が揃い、最初の挨拶が終わると、三笠先生は先ほどの約束通り、今日の動作についての説明を始めた。
「ここにある三張の弓は、かなり古いものです。おそらく最近は使われることすらなかったでしょうから、弦を張る時には慎重にしなければいけません。古い弓を急に張ったり、手荒い取り扱いをしたりすると、弦を張る動作だけで弓が壊れてしまう可能性があります」
全員が息を飲む。グラス弓しか使ったことがないし、それが壊れるところも見たことがない。結構丈夫に作られているものと思っていた。
「もちろん、皆さんの弓はそんなことはありません」
それを聞いて安堵の息が漏れる。
「しかし、グラス弓といえどもやってはいけない弓の張り方というものがあります」
また全員の背筋が伸びた。なんだか今日は忙しい。
「弓は丈夫そうに見えて、繊細なバランスで成り立っているものです。弓を張る時にいつも同じところを、何度も強く押し続けると狂いが生じてきます。特に、握り皮の部分を持って弓を張っていると、弓本体のバランスが崩れて使えなくなることもあります」
私は息を飲んだ。そんなことは聞いたこともなかったので、握りの部分を押すこともあったからだ。
「グラス弓を張る場合に気を付けてほしいのは、決して握りの部分を押さないこと、そして――」
三笠先生は一旦話を区切ると、近くにあった私のグラス弓を手に取った。
「決して押さないこと、です」
全員の頭の上に「?」マークが点滅した。
「はい、はい、先生。押さないと弓が張れないのでは」
加奈ちゃんが即座に反応した。右手を高々とあげて、軽く飛び跳ねるように質問する。先生はそれを視線で制すると、
「弓はその形を修正したい場合など、目的がはっきりしている時以外は押してはいけません。弓を張る時にはできる限り短い時間で、引く動作だけに留めるのが望ましいのです」
先生は弓張り台に私の弓をはめると、軽やかな動きで弦を外した。
「これはどなたのでしょうか」
「はい。私のです」
「では阿部さん、ちょっと弓を張って頂けますか」
「あ――はい」
私は緊張した。さっき『やってはいけないこと』に気が付いたばかりである。先生から弓を引き渡された途端、どうしていいのか分からなくなった。
「先生、あの――」
「分かっています。怒りませんからいつもの通りにやってみて下さい」
先生に優しく促されて、私は腹を括った。ただ、
「足が滑るので、なんだかやりにくいのですが――」
「あ、そうだったわね。じゃあ、私がちょっと抑えましょう」
三笠先生は私の右足の外側に自分の右足の内側をあてて、滑り止めとしてくれた。確かにこれなら安心だ。私は弓の握りの部分を左手で持つと、そこに体重をかけて押し込み、弓の下の部分を太ももの上に引っ掛けると、右手で弦をはめた。言われて気が付いたことだけれど、弓が必要以上に曲がっているような気がした。
「有り難う。これだと弓が可哀想だと自分でも分かりますね」
「はい。今、そう思っていました」
私は素直に答えた。
「では、押さないためにはどうするか。よく見ていて下さい」
三笠先生は再度私の弓の弦を軽やかに外すと、弦を右手に持って、左手で握りよりも少し下の部分を握った。そして、背中を丸めて姿勢を低くする。弓を抑えた左手が、私が弓を押し始めた時の左手よりも、かなり低い位置にあることが分かった。三笠先生はその姿勢から、今度は本はずに右手を添えると――その右手を上に引き上げるようにして、弦輪をかけた。
(なるほど! 引けばいいのか)
全員が動作とその意味を理解した。
「これだけのことですが、弓をベストコンディションに保つためには重要なことなのです」
「はい、先生」
「どうかしましたか、藤波さん」
早苗ちゃんが一歩だけ前に出て質問した。
「さきほど先生が竹弓を張った時に、両手で押しているように見えたのですが」
三笠先生は嬉しそうに笑った。
「よくご覧になっていましたね。その通りです。それでは、先程の竹弓の張り方を説明しましょう。あれは『
リアルタイムで見られなかった西條先輩とかおりちゃんのために、三笠先生は私の弓を使って動作を再現することにした。
「弦を張っていない状態では、弓は逆側に反りかえっている――この点は理解できますね」
全員が頷いた。
当たり前のことだ。そうでなければ、弦を張っても矢を飛ばすだけの力は生まれない。
「しばらく張っていなかった竹弓の場合には、この反り返りが普段よりも強くなります。これを『
三笠先生は、私の弓の本はずを左足のかかとより少し上のところに引っ掛けて、握りのすこし上を左手で、握りのすこし下を右手で抑え、そのまま両腕で弓をゆっくりと押した。
「こうすると弓のバランスを保ったままで、押しながら弦を張ることができますが、かなり苦しい体勢を取ることになるので、慣れない方にはおすすめできません。それにグラス弓やカーボン弓では、そもそも裏反りの問題は生じませんから、弓師張りの必要がないのです」
「上を弦で縛ってあることには、なにか理由があるのですか」
西條先輩が控え目に手を挙げて質問した。
「これは、弓の反りが強すぎて弦を張った後でひっくり返るのを防止するためです。弦を張った直後は弓が安定していないので、さらに両手の間に弦を挟んだままの状態を維持する必要もあります」
これも全員が理解した。実際に弓に触れたことがないと分かりにくいのだけれど、弓も台風の日の傘のように、ふとした拍子で反対側に弦がひっくり返ることがあるのだ。
「今回は高校生の弓なので、私だけでも弓師張りで対応できましたが、これが非常に強い弓になると簡単にはいきません。
これには歴史好きな理穂ちゃんが反応した。
「平安時代の武将で、『保元物語』に名前が出てくる弓の名手です」
「その通りです。よく勉強していますね。この源為朝は強い弓を引いていたことでも知られていますが、それが『五人張り』と言われています」
三笠先生は、そこで全員が意味を理解できるように、少しだけ間を空けた。
「つまり、一張の弓を張るために、五人が力を併せなければいけなかった、という意味です。実際にどれだけ重かったのかは分かりませんが、『三人張り』であれば一説には六十キロ近かったのではないかと言われています」
六十キロ――全員が遠い目をした。
この時の『キロ』は、弓を引いた時にかかる力を指している。私たちが使っている弓は、弱いもので十キロ、強いもので十五キロぐらいだ。六十キロというのは、一番重い弓を同時に四本引くことを意味している。
ありえない。事実だとすればゴリラと素手で勝負できそうだ。
それにしても、ただ弓を張るだけのことなのに、こんなに知らないことが多いなんて――今まで深く考えずにやってきたことの中に、どれだけ明らかな間違いが含まれていたのだろう。
三年生の先輩から「こうするんだよ」と教えられて、そのまま素直に続けていることの中にも、おかしなところがあるかもしれない。改めて考えてみると「どうしてそうしなければならないのか」という根拠まで説明を受けたことはなかったような気がする。もしかしたら、教えてくれた先輩自身、その先輩からやり方だけを教わったのかもしれない。
そして、誰からも教えてもらわずに自分が勝手に判断して習慣化してしまったもの、例えば「弓の握りを持って弓を張る」という習慣は、今朝の今朝までまったくおかしいと思っていなかった。
部員おのおのがそんなことを考えていたのだろう。
質問が続かなくなったので、三笠先生は西條先輩のほうをちらりと見た。アイコンタクトを受けた先輩は、心得たとばかりに練習開始を宣言する。
さて、人間の適応能力には驚くべきものがある。
筋肉痛で動きがぎこちなかったが、行射中の安定感は昨日と比べると違いがはっきり分かった。まだまだ滑りはするものの、昨日のような覚束なさは消え、おかしな言い方だが「想定の範囲内の不安定さ」に収まっている。
人間は「寝ている間に起きている時の出来事を脳内で整理する」と聞いたことがあるけれど、これもその一つなのだろうか。
それにしても――
私には疑問に思うことがあった。
昨日の後遺症は西條先輩、早苗ちゃん、加奈ちゃん、私の四人に残っている。理穂ちゃんが平気なのは不思議じゃないのだけれど、かおりちゃんが普段通りだったのは意外だった。的前練習が同じ組になったので特によく分かった。かおりちゃんは筋肉痛ではない。
そこで、的前練習時の巻藁パート中に素直に聞いてみた。
「かおりちゃん、足痛くないの?」
「足ー? あ、そうかー。みんなの動きが変だなって思ってたんだけど、筋肉痛かあー」
かおりちゃんは合点がいったとばかりに頷いた。
「私はねー、家では正座をすることが多いからー、足は丈夫なんだよー」
そういえば彼女の家は呉服屋さんだった。ならば正座も多いのは当然かなと了解した。
「でもねー、正座ってねー、やりすぎるとねー」
かおりちゃんはそこまでで言葉を切ると、その先を私の耳元で小声になって言った。
『足が太くなるんだよねー』
うわ、驚愕の新事実。これは道場で大きな声では言えないわ。
三笠先生は最初の「弓張りに関する講義」以降は、特に指導することなく、今日も練習風景を黙って眺めていた。
私は「弓張りの一件」があったので、なんだか落ち着かなかった。
自分が何気なくとった行動が、実は間違ってるとか。どうしよう。
そんな風に思考も乱れて、なんだかうまく進まない。まあ、思考がまとまらないのはいつものことでもある。
弓道を始めた、と親戚や中学時代の友達に話すと、
「弓道って、集中力が必要なんでしょう?」とか、
「集中力の鍛錬になるんじゃないの?」とか、
若干の羨望を込めて言われることがある。例えば、私の母も過大な期待を抱いているようで、
「これであなたが落ち着いた淑女になってくれたら、お母さんどんなに嬉しいか。よよよ――」
と小芝居をよくやっている。しかし、まだ始めて四ヶ月にもならない私が言うのもなんだが、実際にやってみるとそれほど集中していない、集中できていないことが多い。
さすがに的を狙っている時ぐらいは集中すべきではないか、と思うものの、
手の内が潰れそう、やばい――とか、
狙いが後ろ過ぎた、うわあ――とか、
なんだかいろいろと考えてしまう。
だから的に中らないんじゃないの、と言われたらそれまでだけれど、高校生が無念無想で的に集中できたら、むしろ驚異的ではないだろうか。
そんなことを射込みの最中につらつらと考えていたので、すっかり背後が疎かになっていた。
「――阿部さん」
「はいっ!」
突然、三笠先生に後ろから声をかけられて仰天する。
「そんなに驚かなくても――」
「すいません、すいません、ちょっと考え事してて」
「まあまあ、落ち着きなさいな」
と言いながら三笠先生は私の左肩に右掌を当てた。
「ところで、練習終了後にちょっと時間を貰えるかしら」
「はい、大丈夫ですが――」
「ちょっと試したいことがあるの。宜しくね」
心なしか、三笠先生の目が怪しく煌めいたような気がするが、気のせいだろうか。
先生が肩から手を放して神棚の下まで戻って行くのを見送っていると、今度は早苗ちゃんが寄ってきた。
「これはまさかの百合展開」
早苗ちゃんはそう小声でつぶやく。途端に射場内の全部員の耳が巨大化したのを感じた。
「ちょ、ちょ、ちょっと早苗ちゃん。そんなことないって」
「どうかなあ、美代ちゃん背が高いから、くすぐるところあるし。やっぱり美代ちゃんが『受け』で、先生が『攻め』だね」
「いや、その、そういうことは――」
「楽しみだわ、うふふ」
ほくそ笑みながら背中を向ける早苗ちゃん。
他のみんなの背中も微かに揺れていた。
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