顕現 陸

 迷路のような土の壁の中を進む三人。先頭に雄飛、後方に咲。その間に凌子を配し隊列を組んでいる。咲は眼の周りに赤い涙の跡を残しているが、今はすっかり落ち着きを取り戻し、自身の妹を救出すべく意気込んでいる。

 雄飛と咲は頭上からひしひしと伝わって来る霊力に反応する。反応するというよりは、寧ろ無理矢理その力を見せつけられているような気分だった。

「この霊力・・・!?アイツまだこんな力を隠し持ってたの!?」

 咲は土しかない天井を見上げ、焦るように訴える。

「中々もって左梁禅譲も強いじゃないか」

 一方、雄飛には全く焦りの『あ』の字も感じられない。咲の妹である香を探すべく暗い穴の奥へと進もうとする。

「呆れた・・・貴方、この力を感知してるのに心配にならないの?」

「ならないよ」

 雄飛の回答はそれだけだった。それ以上は何も云わず黙々と先に進んでいく。咲は眉間に皺を寄せ訝し気に雄飛の背中を睨む。

「そんなに理事長って強いの?」

 凌子が振り返り、心配そうに眉尻を下げ問う。つい数分前の雄飛と翔真の通信を凌子が知らない筈もない。翔真が左梁と闘っている。それを考えるだけで胸が張り裂けそうになる。理事長室で見た《本当の》左梁竜介の姿。凌子にとっては人ではない別の者と対峙しているように思えた。

「こんな事云いたくないけど、アイツはかなりの実力者。私なんかじゃ歯が立たないくらい。全く自分が情けなくなる・・・」

 苦虫を噛み潰すように咲は吐き捨てる。憎くて堪らない敵の実力を認めざるを得ない自分の不甲斐無さが何よりも屈辱的だった。

「じゃあ、神楽坂くんも―――」

「それはないよ」

 凌子が云わんとしている事を雄飛は完全に否定した。

「どうしてそう云い切れるわけ?」

 咲の質問に雄飛は即答する。

「単純な理由だよ。左梁禅譲よりも翔真が強いからさ」

「それ答えになってないから」

 咲は頭上で闘う二人の霊力を比較していた。その霊力さは明白。翔真は一とするなら、左梁は五。単純に計算すれば敵う実力差とは到底思えない。

「霊力の差でものを語っているならそれはお門違いだ。―――そうだな。左梁が今八割で闘っているとすれば、翔真は凡そ二割程の力で闘っているんだよ」

「呆れた・・・手加減して闘っているって云うの?」

 自殺行為だと咲は云いた気だ。

「違うよ。翔真は霊力を節約しているだけ。最低限にね。翔真が力を解放したら左梁なんか《瞬殺》だよ」

「・・・それ本気で云ってる?」

「ああ」

 振り返った雄飛の瞳には一切の翳りもない。まるで真実の口に腕を持っていかれたような気分だった。嘘を付いて咎められた子供のように咲は口を噤んだ。

―――それ程の実力があるのにどうして早々に決着をつけないの?何か他に目的があるとしか思えない。一体それは何?

 咲の疑問に雄飛は明確な答えをしないだろう。質問する事自体が無意味だ。

「じゃあ、神楽坂くんは大丈夫なんだね?」

 凌子は少しだけ安心したように聞く。

「勿論。翔真は絶対に負けない」

「そっか」

 凌子は胸元に手を当てほっと胸を撫で下ろす。

「お話は此処までにしよう。どうやら目的地に着いたらしい」

 雄飛は曲がり角の先を見据え云った。

 土壁の中にある不自然な鉄製の扉。咲と凌子を閉じ込めていた牢屋にも似ている。それは左梁が態々術を使用し土に含まれる鉄分を利用し造り上げたものだろう。


「香!!」


 咲は真っ先に飛び出し扉へ向かい一直線に駆けて行こうとした。しかし、雄飛は彼女の肩を掴みそれを制止する。

「何するのよ!?直ぐ其処に香がいるのよ!」

「分かってる。でも、先ずは冷静に注意深くあの扉を観察してみろ」

 雄飛の必死な形相に咲は仕方無く焦る気持ちを抑え扉を見る。其処には咲を拘束していた呪符に類似したものが所狭しと貼られている。それを見た咲の表情は険しくなる。

「あれは《対人結界》だ。中は外界から一切遮断されている。此処からじゃ俺達の足音どころか、声さも聞こえないよ。―――それに君なら分かるだろう?」

 咲はその呪符に書かれている術に見覚えがある。

「・・・ええ。あれは私や妹のように炎を扱う術者を想定した術式ね。私達だけを狙い撃ちにしたような・・・私の術では無効化されるだけ。無理矢理壊そうとすれば、中にいる人間は容赦なく殺される仕組み・・・」

 悔しさを吐き出すように咲は云った。

 咲は扉の前で立ち尽くした。手を伸ばせば届く距離に最愛の妹がいるのにも関わらず、何もする事が出来ない。血が滲むくらいに掌を握り締める。

「そんなに悲観する事ないよ」

 雄飛は咲の肩に手を置く。

「炎術者以外も想定して多少結界に強化を施しているみたいだけど、俺からすればこんなのは自動ドアと一緒さ」

 雄飛は咲をエスコートするように後方に下がらせ扉の前に立った。

 両の掌を合わせ雄飛は告げる。

「破っ!」

 合わせた両手をそのまま圧し出すように扉へと叩き付ける。その瞬間に敵の侵入を阻むかのように五芒星が浮かび上がる。五行を司る星は光を帯び結界としての機能を発動した。

「止めなさい!貴方の腕が持たない!」

 雄飛の掌底と結界が反発し合い紫電が迸る。咲の焦りとは裏腹に雄飛はひどく冷静だった。自分を阻む結界など意味を成さないと云わんばかりに。

「問題ないよ。俺もそんなにヤワじゃないから」

 背後の二人に微笑む雄飛。その笑みには余裕しかない。

「信じよう、黒羽さん」

 咲の隣に凌子が並ぶ。

「雄飛くんが大丈夫って云ってるならきっと大丈夫だよ。だから、黒羽さんも雄飛くんの事を信じてあげて」

 信じるという事は難しい。しかし、凌子の言葉は平気でそんな壁を乗り越えて来る。凌子の無邪気な笑顔に咲はすっかり毒気を抜かれてしまった。

「・・・分かった」

「ううん」

 凌子は咲の手を握り雄飛の背中に視線を戻す。咲の手は少しだけ震えていた。しかし、その震えはやがて止まった。

 雄飛は二人の心を確認したかのように再び正面に向き直る。

―――五行の構造。木火土金水。五行相剋に則り術式を解明。水・・・火・・・金・・・木・・・土・・・

「解呪」

 それはいともあっさりと終わった。硝子が砕けるように松明に照らされた結界がひらひらと消えていく。

 雄飛は一息付く。両手には怪我どころか傷一つ付いていない。宣言通り、雄飛は何事も無く結界の解除を行ったのだ。

 咲はその実力に感嘆する、と同時に嫉妬した。

―――術式の解除をあんなにあっさりと・・・神楽坂翔真といい、佐渡雄飛といい、一体どんな事をしたらこれ程までの力を得られるっていうの・・・?

 年齢は殆ど変わらない。しかし、実力は天と地ほどの差がある。敵として闘えば咲は絶対に敵わない。味方であった事は幸運と云って良い。


「・・・誰・・・?」


 空気を震わせただけの音。しかし、それは誰かの声だった。扉の先から微かに聞こえたそれを咲は聞き逃さなかった。

「香!」

 咲は扉を開き部屋の中へと入って行く。咲に続くように雄飛と凌子も付いて行く。

 ひんやりとした部屋の中にはおよそ何も無かった。明かりさえもない。土で塗り固められた密閉空間。光さえも届かない其処に黒羽香は居た。

 咲は部屋の奥で倒れている香を見て絶句する。

「・・・酷い」

 凌子は香の姿を見て両手で口を覆う。

 香の姿はおよそ一五歳の少女ではなかった。全身からの血の気が失せ土気色になっている。頬は痩せこけ眼窩はへこみ骨の上に皮膚が張り付いているようだ。着ている服は服とは呼べない襤褸を着ているようだ。

 呼吸をする事が精一杯で、声を出す事さえ苦しそうだった。

「おね・・・ん、生きて・・・いたのね・・・?」

 咲は大粒の涙を流し膝を付く。

「当たり前じゃないっ・・・なに人の心配してるのよ。香の方がずっとずっと酷いじゃない。こんなになって・・・ほんと・・ひどいっ・・・」

 香を優しく抱き上げ咲は息を殺し泣く。咲の心の中には様々な感情が渦巻いているのだろう。香に再び会えた喜び、満身創痍となった香を嘆く悲しみ、香を此処まで追い詰めた左梁への怒り。それらが複雑に絡み合い心の整理が付かないのだ。

「感動の再会に水を差すようで悪いけど、此方も余り時間が無い」

 雄飛は後ろの腰辺りから一本の巻物を取り出した。

「俺達は黒羽咲、及び黒羽香の力が必要なんだ。だから、二人には助けた代わりではないが協力してもらう」

 淡々と告げる雄飛に咲は反論する。

「私なら喜んで強力する。でも、その前に香を何処か安全な場所に移動させて。こんな状態で左梁の手下に見つかったら」

「それは無理だ。黒羽香はこれから一緒に行動してもらう。云ったろ?《二人》の力が必要だって」

「だからそれは―――」

「俺が、翔真ではなくこの俺が、何故此処に来たと思っている?」

 雄飛の迫力に圧され咲は云い吃る。

「俺には黒羽香を《全快に出来る術》があるんだよ。だから今は黙って俺の指示に従ってくれ」

 雄飛は巻物を広げ部屋の中心部に置く。其処から部屋の角に歩いて行く。懐から札を取り出すと、順々に部屋の隅に貼付けていく。四隅に配置を終えると再び巻物を置いた中心部へと戻る。

「凌子さんは部屋の外へ出ていて。黒羽さん、貴女は彼女を此処に運んでくれ」

 凌子は黙って頷くと部屋の外に出る。

 咲は疑いながらも香を抱え中心部へとやって来る。

「彼女を巻物の横に寝かせて。それから君の血をこの巻物の中心部に垂らしてくれ。一滴か二滴で構わないから」

 巻物の中心には円が描かれており、その周囲には何かの術式らしい文字が書かれている。

「・・・本当に貴方に従えば香は回復するの?」

「何度も云わせないでくれ。―――全く。じゃあ、こう云ったらいいか?この期に及んで君に嘘を云って俺に何の得がある?俺が君の敵だったらあの時にとうに殺している」

 つい数十分前の出来事。咲は簡単に組み伏せられ命を奪われそうになった。確かに雄飛の云う通り、雄飛にとっては咲と香を殺す事など造作も無い。

「―――分かった。貴方の云う通りにする」

「助かる。では、さっき俺が云った手順通りに。その後は凌子さんと同じく部屋から出てくれ」

 咲はこくりと頷くと、巻物の隣に香を寝かせる。巻物の前に跪くと左の親指の皮膚を前歯で少し齧る。親指の腹から微かに血が滲み、咲はそれを巻物の中心に落とす。そして、名残惜しそうに部屋の外へと出る。

 凌子は再び隣にいる咲の手を握る。凌子は何も云わなかった。しかし、咲には伝わっていた。『大丈夫だよ』という優しい声が。

―――どうかお願い・・・香を助けて・・・!

 雄飛は二人が外に出たのを確認すると、香を抱き抱え巻物の上に移動させる。香は浅い呼吸を繰り返している。咲と再会した事で今まで張り詰めていた緊張の糸が切れたのだろう。早急に処置しなければ命が危ない。

「術式解放」

 雄飛の声と共に部屋の空気は一変する。

 四隅に貼られた札は淡い蒼を帯び始める。札は呼び合うように光線を引き繋がる。部屋を囲む光線は何重にも分かれていき部屋の隅から隅を覆い大きな正方形の結界と化す。それに呼応するように中心部に据えられた香に蒼い光がヴェールのように降り注ぐ。結界の中はまるで蒼海の底のようで、香は底で眠る人魚姫のようだった。香はふわりと浮かび上がり部屋の中心で浮遊する。

「・・・綺麗」

 状況だけを考えれば不謹慎な言葉なのだろう。しかし、凌子の口からは自然と声が漏れていた。自然の神秘を垣間見ているような気分だった。

 雄飛は結界が完全に空間内を満たしたと判断すると、両手を合掌させ唱える。


「眷属の名を以て奉る。我が掌中に在るは万物の灯火。右の光を彼の躯に。左の光を彼の心に。生々流転たる光の道標よ。我が血に依てその力を開眼せよ!」


 合掌していた両手を広げるように地面へと叩き付ける。両手を叩き付けた地面からは白い閃光が走るように現出する。その光が雄飛の両手を起点に中心部にいる巻物へと引き寄せられていく。

 香の身体は俎上の鯉のように一瞬びくりと跳ねる。

 白い光はやがて巻物の中心点に収束すると、マリンスノーのように結界の中に弾けて広がっていった。その一つ一つの小さな白雪が命の欠片であるかのように香の身体に吸い込まれていく。白雪が香に吸い込まれていく度、香の身体は目に見えて生気を取り戻していった。乾いた皮膚には血の気が戻り、枯木のように細くなっていた身体も女性らしい柔らかさに成っていく。

 その光景は数分間続いた。

 白雪が止む頃には香の身体は完全に元の状態へと快気していた。眠るように瞑っていた瞳は開き、自力で身体を起こす事も造作ない様子だ。

「気分はどう?」

 雄飛の問いに香は答える。

「・・・まるで、生まれ変わった気分です」

 香は自分の身体を見詰め云った。自分の心に素直な言葉だった。本人も自身の身体が戻った事を未だ信じられないようだ。

「良い感想だ。よし、術式解除」

 水面で水の雫が弾けるように、結界は弾けて瞬く間に消えてしまった。雄飛は一息付くと、その場に座り込んだ。

「もう入っていいよ」

 外に居る二人を雄飛は手招きする。咲と凌子も香と同様、目の前で起こった出来事が未だ信じられない様子だった。

 咲は香の横に立つと、

「本当にもう何ともないの?痛いところとかない?」

 膝を付き香の身体に触れて確認する。

「くすぐったいよ、お姉ちゃん」

「だって・・・」

「本当に大丈夫。今までにないくらい身体が充実してる感じがするもん」

 香はそう云って勢いよく立ち上がる。彼女が云う通り、香の身体は全快していた。香は座り込んでいる雄飛に向き直ると、

「本当にありがとうございました。このご恩は一生忘れません」

 深々と頭を下げた。溌剌とした声に雄飛は微笑む。

「どういたしまして。元気になって何よりだ」

 雄飛はほっと一息付いたという感じだった。

「雄飛くん何だか疲れてるみたいだけど大丈夫?」

 凌子が近付いて来て雄飛の顔色を窺う。

「少し疲れただけ。この術は霊力と体力結構使うから。やっぱり一日一回が限度だな。どんなに鍛えてもシンドイもんはシンドイ」

 疲れた身体を起こし立ち上がろうとすると、

「大丈夫ですか?」

 香は肩を貸そうと雄飛に近付いて来る。が、雄飛はそれを拒否した。

「君は自分の格好を自覚した方がいい」

「えっ・・?」と声を漏らし香は全身を確認する。部屋の中は薄暗く余り目立たないが、香は殆ど半裸状態だった。辛うじて襤褸を纏っているが、隙間から白い柔肌がちらりちらりと見える。香はそれを自覚すると貌を紅潮させ、

「ごめんなさい。はしたない真似を」

 身を屈めるように小さくなる。咲と凌子も暗くて余り目がいかなかったが、同じ女性として放っておける状態ではない。

「えっと、どうしよう!?」

 凌子は取り敢えずブレザーを脱いで貝のように小さくなっている香に羽織らせようとする。

「それは駄目」

 しかし、咲はその行為を止める。凌子は不思議そうに首を傾げる。

「貴方のブレザーには神楽坂翔真が施した術式が組み込んであるでしょ?他の人が着たらいざという時身を護れないわ。それはそのまま着ておきなさい」

「う、うん。分かった」

 咲の迫力に負け、凌子はブレザーを着直す。しかし、事態は一向に解決していない。凌子を止めた咲自身も代わりに出来るような服は持っていない。

「これを着るといい」

 香の目の前に投げられたのは雄飛と同様、黒をベースとした衣服だった。香はそれを広げてみる。少しだけ大きいようであるがそれは贅沢だろう。服は投げた雄飛は香に背を向けている。雄飛なりの気遣いだ。

「何から何まで・・・本当にありがとうございます」

「礼はいいから早く着てくれ。着てくれないと俺が困る」

「はい。ごめんなさい」

 香はそそくさと着替え始める。

「ねえ、雄飛くん?どうして洋服なんて持ってたの?」

 凌子は雄飛の隣に来ると貌を覗き込むように尋ねる。

「仕事で何日も帰れない事もあるから。色々と予備を用意してるんだよ」

 雄飛はそう云って手に持っている巻物を見せる。其処には、円形の中に『衣』、『食』、『薬』などと書かれている。

「これは口寄せといってね、別の場所から色々な物を呼び寄せる事が出来るんだ。因みに一度呼び出すと其処は空白になる」

 巻物の一部を雄飛は指差す。凌子が其処を見ると、他とは違い円形の中には何も字が書かれていない。

「へぇー、すごーい」

 凌子は関心したように声を上げる。普通であれば信じられないと疑う場面であるが、凌子もこのような感覚に慣れてきているようだった。

 一方、咲は着替える香にすっかり安堵している様子だった。

「お姉ちゃん、さっきから何でそんなに見てるの?・・・エッチ」

「何云うのよ、アンタは!?私はちゃんと一人で着替えられるから見守ってるだけよ」

 焦ったように答える咲に、香は梅雨の小雨のような視線を向ける。

「ふーん、そう。てっきり私の方がおっぱい大きいのを妬んでるのかと思った」

「何ですって!?人が気にしてることを!」

 着替え終わった香に咲は猫がじゃれつくように抱きつく。

「ちょっと痛いよ、お姉ちゃん」

 咲は半ば強引に香を自分の胸に引き寄せ抱き締める。咲の規則的な鼓動が香の耳に届く。その音は十五年間ずっと聞いて来た姉の心の音だ。

「本当に・・・無事で良かった、香・・・」

 頭にかかる姉の息遣いが懐かしくさえ感じる。香は心から思っていた。自分は本当に大切な人の元へ帰って来たのだと。

「泣き虫は未だ直ってないんだ」

「五月蝿い。女の涙は武器なんだから私はこれでいいの」

 いつものやり取り。いつもの温もり。いつもの日常。帰って来たものがこれほど自分の心を埋め尽くしていた事を咲は初めて知った。


「お取り込み中悪いんだけど、そろそろいいかな?」


 咲が香の頭を撫でていると、雄飛が頭を掻きながら近付いて来た。「分かってるわ」と少しだけ頬を赤らめ、咲は香を放す。香は髪を手櫛で整えながら咲の隣に立つ。

「じゃあ、改めて本題を話させてもらう。これから二人には協力してもらいたい。俺と翔真の《本命》の任務の為に」

 雄飛は二人を見据えると、淡々と今回の目的を話し始めた。

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