第2話  ロールキャベツ君のお弁当

ロールキャベツ君は、食いしん坊です。


朝ごはんをたくさん食べてきても、

11時ごろにはもう、お腹がすいてしまうのです。



ロールキャベツ君は、その日はとくに

お腹がぺこぺこでした。

それは、ロールキャベツ君が朝寝坊をして、

いつもみたいにたくさん朝ごはんを、

食べられなかったからです。


あーあ、お腹すいたなあ。


粘土でバナナを作っていたロールキャベツ君は、

うっかり粘土を食べそうになってしまいました。

「ロールキャベツ君、だめだめ、

粘土をお口に入れちゃだめよ!」

ちょうどよくロールキャベツ君の方をふり向いた、

だしまきたまこ先生が気がついてくれたおかげで、

ロールキャベツ君は、粘土を口に入れずにすみました。



やっと12時になりました。


「わーい、おべんとうだ!」


いつもはお友達とおしゃべりに夢中になって、

なかなか手を洗いに行かないロールキャベツ君ですが、

この日ばかりは一目散に、手を洗いに行きました。


日かげにあるお弁当置き場からお弁当をもってきて、

一番に席についたのは、もちろんロールキャベツ君です。

手をおひざにおいて、お口も結んでいます。


「いただきまーす!」

「いただきまーす!」


だしまきたまこ先生の声に合わせて、

みんな元気に『いただきます』を言いました。


にこにこしながらお弁当箱のふたをあけると、

あらあら、どうしたのでしょう。

ロールキャベツ君の顔が、みるみるくもってきましたよ。


お弁当を見つめたまま、なかなか食べはじめないのを見て、

ごぼう まきこちゃんが声をかけました。

「どうしたの、ロールキャベツ君?」

するとロールキャベツ君が、

「……ぼくの、……ぼくのお弁当が……少なくなっちゃってる……」

と、言いながら、

今にも泣きそうな顔になってしまいました。


「先生! ロールキャベツ君が、泣きそうです!」

と、ごぼう まきこちゃんが大きな声で言うと、

だしまきたまこ先生が、口の前までもっていったうずらの卵を、

お弁当箱の中において、

あわててやってきました。

「どうしたの、ロールキャベツ君?」

ロールキャベツ君は、もう、べそをかきはじめています。

だしまきたまこ先生が、ロールキャベツ君のお弁当箱の中を見ると、

お弁当は、ごはんも半分、おかずも半分しか入っていません。


「あらあら、お弁当がはしっこに寄っちゃったのね」



そうです。


ロールキャベツ君のお弁当は、

少なくなったわけではなかったのです。


きっと、幼稚園にもってくるまでのどこかで、

ロールキャベツ君が、お弁当箱をかたむけたまま

歩いてしまったのでしょう。


「ロールキャベツ君、お弁当は、少なくなったわけじゃないのよ。

ただちょっと、お弁当箱の壁さんと、仲良ししてただけなのよ」

「そうなの?」

「そうよ。

だからこんどは、ロールキャベツ君と、

仲良しさせてあげましょうね!」

「わかった、そうする!」

ロールキャベツ君は、泣きじゃくりながら、にっこりしました。

「仲良し、仲良し!」

ロールキャベツ君は、ごきげんにお弁当を食べはじめました。



「先生! 仲良しすると、お腹いっぱいになるんだね!」

ロールキャベツ君はお弁当を、

残さずきれいに食べましたよ!


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