ロールキャベツ君
左右田りおん
第1話 ロールキャベツ君、こっちにおいでよ!
「やだよー! 行きたくないよー!
びえーん、びえーん、びえーん!」
ここは、ことこと幼稚園の入口です。
ロールキャベツ君が、入り口の門の柱にしがみついて
泣いています。
今日で、三日目なのですよ。
どうして泣いているのかというと、ロールキャベツ君は、
幼稚園に行きたくないからなのです。
前の幼稚園さよならするときも、泣きました。
そして、新しい幼稚園に来てからも
こうして泣いているのです。
前の幼稚園の、仲良しのお友達のことが、忘れられないのです。
ママは困りはててしまいました。
「今日で三日目。毎日こんな調子で、
ママ、くたびれちゃったわ」
ママも、ロールキャベツ君といっしょに
泣きたくなってしまいました。
するとそこに、『だしまきたまこ先生』がやってきました。
「おはよー! ロールキャベツくーん!
こっち、こっち、こっちおいでよー!
みんな待ってるよー!」
と、大きなな声でさけんでいます。
ロールキャベツ君は、涙をふいて、
だしまきたまこ先生の方を見ました。
だしまきたまこ先生が、ロールキャベツ君の大好きな、
とてもきれいな黄色い色をしていたのを
思いだしたからです。
それも、ふんわりやさしい、黄色です。
「……きれいだなあ」
先生の方を見たロールキャベツ君は、
思わず、そうつぶやきました。
先生が来たあとからは、『ごぼう まきこちゃん』と、『のり まきすけ君』が、
手をつないで走ってきました。
「ロールキャベツくーん!
いっしょに教室行こうー! 」
二人とも、ロールキャベツ君のことを待っていたのです。
だって、同じ組に新しいお友達がふえたら、
嬉しいですものね!
「……みんな、ぼくみたいに、巻いてるお友達ばっかりだね」
ロールキャベツ君は、鼻をすすりながら言いました。
「そうよ、先生だって、巻いてるのよ」
と、先生はにっこり笑いました。
「ぼくも、巻いてるよ」
と、のり まきすけ君が言いました。
「私なんて、三重巻き!」
と、ごぼう まきこちゃんが言いました。
「先生なんて、八重巻き!」
と、だしまきたまこ先生は、
だんだん調子のに乗ってきました。
「ぼくは……。ぼくは……。みんなと巻き方がちがうから……。
何重巻きなのか、わかんない……。」
いったん笑顔がもどりかけたロールキャベツ君の顔が、
またくもってきました。
だしまきたまこ先生と、ごぼう まきこちゃんと、のり まきすけ君は
びっくりしました。
頭の回転の速い、のり まきすけ君が、あわてて、
「ロールキャベツ君は、スペシャル巻きだよー!」
と、言いました。
「……ぼくは、スペシャル巻き? 」
「そう、スペシャル巻き! 」
「だって、大きなキャベツの葉っぱをを、こんなに広げて、
プレゼントみたいに巻くんだもの。
スペシャル、スペシャル!」
ごぼう まきこちゃんがあとに続きます。
「スペシャル巻きのお友達は、まだ、まきまき組にはいなかったの。
嬉しいわ」
と、だしまきたまこ先生が言いました。
ロールキャベツ君が、ちょっぴり笑ったところで、
だしまきたまこ先生が、優しくロールキャベツ君の手をとりました。
「おかあさん、あとで迎えに来てくださいね」
ロールキャベツ君の後ろ姿を見送りながら、
今度はママが、鼻をすすっていましたよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます