ルナティック・ブレイン 【ー特殊殺人対策捜査班ー】

橋依 直宏

Consider1 開幕のフラワーシャワー

見つからない凶器と腐乱死体

File:0 

蕗二ふきじ!」

 鼓膜を強く揺らしたのは、聞いたこともない父の張り上げられた声だった。

 赤く濡れた刃を遮り、視界を覆う大きな背。

 救ってくれた背。

 憧れていた背。

 だがそれは今、蕗二の目の前で血の海に沈んでいた。

 目に染みる鮮やかな赤が広がるほど、すがりついた体はみるみる冷えていく。

 全てを否定するように、蕗二は感覚を捨てようとした。

 しかし突然湧いた笑い声に引き戻される。

 錆切さびきったようにきしむ首を無理やり上げると、笑う男の姿が見えた。

 泣け。

 叫べ。

 絶望しろ。

 高らかでイカレた笑い声が、現実を突きつける。

 その耳元。小さく、だがはっきりとした青い光が、蕗二の網膜に焼きついた。

 ≪ブルーマーク……!≫

 食いしばった歯の間をこじ開け、蕗二の喉を咆哮ほうこうが突き抜けた。





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