本編の2
青年と少女は見上げていた。目の先には民家があった。誰も住んでいないことは明らかで、しかし廃屋というほどには朽ちていない。
青年は近くの門扉に目を落とし、そこが壊れていないことを確認すると、淡々とそれを開け、奥へと進んだ。少女は口をつぐんだまま、静かに彼に続いた。
手入れされた垣根は、つい最近まで住人が居たことを示している。そして葉を全て落としたままの落葉樹は、その住人はもう居ないことを示していた。
青年は玄関扉に手をかける。引くと、それは開いていた。わずかに開いたドアの先には、冷え切った玄関と薄暗い階段。左右には半開きのドアがあったが、中の様子を伺うことは出来なかった。
青年は迷った素振りを見せ、逡巡の後に、静かに扉を閉めた。
「いいの」
「うん」
「せっかく来たのに、いいの」
「いいんだ」
「わかった」
「ありがとう」
「いいよ」
「もう、行こうか」
突如風が吹く。枯葉が一枚舞い上がり、青年をかすめて隣家に消えた。
彼もいつか
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