てるてるぼうず

 元夫の訃報が漏れ聞こえても、特に何とも思いませんでした。どうして死んだのかなど、知りたいとも考えませんでした。

 生活力も自制心もない、子供のまま大きくなったような人でしたから、離婚をしたのも子供を渡さなかったのも正解だったと、今でも確信しています。

 だけどしばらくして、息子が言うのです。

「お父さんがまたうちの中でぶらぶらしてる」と。

 息子は父親の死を知らないはずです。また知っていたとしても、それで悪戯を仕掛けるような子ではありません。


「ぶらぶらしてるって、どういう事?」


 気になって問い質すと息子は天井の一点を指差して、


「お父さん、てるてる坊主みたい」



 後で詳しく尋ねたところ、元夫は縊死いししたのだとわかりました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る