リバーシブル
その日は、ひどく体調が悪かった。
どうも悪い風邪にやられたらしい。駅からマンションまで十数分。それだけの距離を歩くのに、幾度もの小休止が必要になるほどだった。
朦朧とした意識のままエレベーターを使い、どうにか自分の部屋に帰り着く。
肩ごとぶつかるようにしてドアに寄りかかり、鍵を回して押し開く。勢い余って倒れ込みそうになるのをどうにか堪え、上着とネクタイだけを脱ぎ捨る。
あとはそのまま万年床に潜り込み、そうして気絶するように眠った。
翌日。
自分にとっては念な事に、体調は大分良くなっていた。昨日のような具合だったら意地でも欠勤しよう思っていたのに、肩透かしの気分だ。
朝食を済ませ、風邪薬を服用して家を出る。
鍵をかけようとして、そこで「ん?」と首を傾げた。
この部屋の扉は、中からならば押して開けるタイプのものだ。
けれど昨日は確かに、外から押し開いた記憶がある。体当りのようにドアを抜け、それで転びかけたのは錯覚ではない。
どうにも腑に落ちなくて、昨夜と同じく外からぐいと押してみる。
当然のように、ドアはびくともしなかった。
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