つけられる

 早朝、ゴミを出しに出たら、少し先の道端にごろりと寝そべる猫がいた。

 俺はこれから仕事だってのにと思ったら、その呑気な様がやけに癇に障った。腹立ちに任せて足元の小石を猫へと蹴飛ばす。

 少し驚かせるだけのつもりだったのに、石は奇妙にコントロールよく飛んで、猫の顔面を一撃した。

 猫は大仰な叫びでバネ仕掛けのように跳ね上がると走って逃げた。


 それから数日。

 ゴミ出しから戻ってドアを開けたところに、


「覚えたぞ」


 頭上から声がした。

 振り仰げばうちの屋根に猫がいた。片目の潰れた、無残な形相だった。何故だかこの間の猫だと直感できた。

 唖然とする俺を見下ろしぱたりと一度尾を振ると、猫は屋根の向こうに姿を消す。

 俺の家まで、後をつけてきたのだ。

 そう理解したら、全身に冷水を浴びせられたような心地になった。

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