枯草婆

 駅から市の病院への経路には、フェンスで区切られた一画がある。

 不思議にも何の用地にされもせず、ただ雑草が生い茂り枯れ草が積み重なるままに放られているのだ。

 そのフェンスには、奇妙な看板がぶら下げられている。

 赤いペンキの拙い文字で「光栄なるあの女房」、「孤独のうちに家族」と記されている。誰にも意味はわからない。

 ただそれを読もうと足を止めると、がさがさ、がさがさと草をかき分ける音がする。

 それは次第に近づいてくるようで、殆ど者は薄気味悪くなってその場を離れる。

 だから、大抵は何も起こらない。

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