雪の名残

 猫が死んだのは、雪が降った夜の事だった。


 雪みたいに真っ白な毛並みをした猫だった。

 野良から懐いて家族になった猫だった。

 やがて体を悪くして、最近は窓から庭を見ながら、さみしく家に居るばかりになっていた。


 その日は朝からずっと具合が悪そうで、嫌な予感はあったのだ。

 普段は甘えたりしないのにいつまでも私に寄り添ってきて、ふっと一瞬、膝の上の体が重くなったと思ったら、もう息が絶えていた。

 少しずつ失われていく温度が、一層に悲しさを掻き立てた。



 翌朝。

 雨戸を開けると、庭一面が雪景色だった。浅く積もったその雪の上にてんてんと、家から出ていく猫の足跡あしあとがあった。

 寒さも忘れて飛び出し、それを追った。

 けれど足跡そくせきは家を離れるほどに薄くなり、庭を抜けて門を出る辺りで、とうとう消えてなくなっていた。

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