食べられる
年末から風邪を引き込み、床に臥せっていた。
年明け、ようように熱が引いて外に出た。
年賀状も年賀メールも出していなかったので、一先ずはそれを返していこうと考えたのだ。
まだふらつく足でマンションのエントランス、郵便受けまで歩み出て、そこで思わぬものに出くわした。
山羊である。
大きく黒い山羊である。
どうやってここに入り込んだのかがまず謎だ。
入口はオートロックだし、山羊の体高は入口のドアを優に越えている。
更に謎な事に、山羊はその馬鹿でかい頭を郵便受けに突っ込んでいた。ぶっとい首の途中からがCGか何かのように細くなって、投函口の細い隙間に潜り込んでいる。
ぽかんとしてから、はっと気づいた。
山羊が文字通り首を突っ込んでいるのは、俺の郵便受けである。
病み上がりで思考力が落ちていたのもあるだろう。コノヤロウと後先考えずに山羊の脚を蹴った。
山羊はゆっくりした動作で首を引き抜き、高みから俺を見下ろした。
あ、ヤバイと思った。
あの角。あれは明らかに凶器だ。そして俺が蹴った足の蹄。その分厚くて無骨な事と来たら。
だが俺の警戒は不要に終わった。
山羊はゆっくり瞬くと、くるりと向きを変えて外に出ていった。驚いた事にその巨体は、霧でも突き抜けるかのようにマンションの壁を通り抜けていった。
黒い尻尾が消え失せるのを見届けてから、俺は郵便受けに駆け寄った。
受け取り側の鍵を開けて中を見る。
内側はべっとりと
がっくりするのと同時に。蹴飛ばしたのは、やはり間違いではなかったと思った。
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