スノウマン

 万聖節も聖誕祭もその前夜こそが盛り上がる。ハロウィン然り、クリスマスイヴ然り。要するに遠足の前の日症候群である。

 しかも今夜のようにプラス雪、ホワイトクリスマスイブともなれば、世間の盛り上がりは最高潮かつ絶好調で間違いはない。


 だがしかし。

 左様に盛り上がる日に俺が一体何をしているかというと、酒とツマミを抱えて友人宅に向かう真っ最中である。言っておくが友人は男だ。更に誤解のないよう言っておくが、俺にそのケはない。

 つまりはクリスマスを共に過ごす素敵な恋人のいない女々しい野郎どもの、うら寂しい残念会である。

 おまけに俺ときた日にゃあ、色とりどりのお菓子の詰まったクリスマスブーツまで買い込んでいやがったりするのである。

 こんなハッピーアイテムを男会に持ち込もうものならば、場のやるせなさがそりゃもう高まる事請け合いだ。ザマァ見やがれうはははは。


 などと陰の気に満ち満ちて歩いていると、向こうから妙なものが来た。

 ベビーカーを押すそれは、最初は着膨れた人間のように見えた。

 が、違う。

 膨れているのもむべなるかな。それはご立派なまでに丸い雪だるまであった。

 全力で目をこすったが、紛う事なくスノウマン。いやベビーカーの中にはミニ雪だるまが乗っている。するとスノウウーマンか。


 俺の当惑を他所に、雪だるまはするするとベビーカーを押しながら跳ねて来る。車道に寄って道を譲ると、ぺこりと会釈して通り過ぎていった。

 うーむ。

 しばらく考えてから、俺は雪の道を小走りして後を追った。


「こいつをどうぞ。しがないサンタからの、クリスマスプレゼントです」


 クリスマスブーツを雪だるま(小)に押し付け、(大)の反応は待たずに再度ダッシュ。

 それでも背中の方で、きゃっきゃと喜ぶ声がしたのがちゃんと聞こえた。


 まあクリスマスだし。それもホワイトクリスマスだし。

 こんな事があったって、いいだろうと思う。

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