実家に帰る

 大学進学を機に、上京して一人暮らしを始めた。

 殆どの家具は新しく買い揃えたが、具合が良くて愛用しているものだったので、上掛けの羽毛布団だけは実家から持ってきた。


 新生活開始から半年、恋人が出来た。

 男子高だったのもあって、そういった話にはとんと縁がなかったから舞い上がった。毎日が薔薇色だった。

 そうして浮かれていたら、妙な夢を見た。

 初めて会うのにどこか知っている感じの女性が、柳眉を逆立てて怒る夢だ。


「毎晩私と眠っていた癖に、今更浮気だなんて納得いきません。実家に帰らせていただきます!」


 宣言されたところで目が覚めた。

 きちんとくるまったはずの掛け布団はどこにもなくて、寒くてくしゃみが出た。



 翌日、実家から電話があった。


「お前の布団だけがいきなり玄関に置いてあったんだが、どういう事だ?」


 どういう事なのかは、こちらこそ知りたい。

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